第120話 剣術クラブ②

 フィーアから、クラスの外に友人がいるという話は聞いたことがある。

 他国からの留学生で、ちょっと不思議なところがある子だと。

 留学生、珍しい話ではない。

 魔術を学ぶため、他国から貴族が留学してくる。

 よくある話だ。


 俺達のクラスにも、確か一人留学生がいたはずだ。

 まぁ、名前は覚えていないし顔も一致しないのだが。

 だが、彼女は違った。

 俺は彼女を知っている。

 というか、見たことがある。

 もっと言えば、この学園で知らないものはいないだろう。


「貴方がフィーアの恋人デスね? はじめまして、アタシは――」


 透き通るような銀髪と、小麦色の肌。

 女子の中では若干小柄なフィーアよりも、更に小柄。

 特徴的なのは、花の冠のような独特な装飾の

 それと、力強さを感じさせる赤目だ。



「ソーディアル帝国第三皇女、カミア・ソーディアル……デス。以後、お見知りおきを」



 そう言って、他国からやってきたは優雅に礼をしてみせたのだ。


「――――」


 一瞬、圧倒されてしまった。

 ソーディアル帝国の第三皇女。

 この学園で知らぬものはいない、俺だって当然知っている。

 美貌に優れ、自国でも人気の高い――言う慣ればこの国で言うところのステラフィア王女。

 だが、圧倒されたのはそこではない。

 だ。

 彼女は、見た目だけはただの少女であるはずなのに、あまりにも圧倒的な気配を有している。

 これが、本物の皇女……


 その感覚は、以前俺が資料室で、ステラフィアモードでフィーアに出迎えられた時に似ていた。


「……失礼しました、皇女殿下。俺はハイム。一回の民草ではありますが、こうしてこの学園で特待生をさせていただいております」


 思わず、そんな反応をしてしまうくらいには。

 んで、横と前から、不満そうな視線を感じる。

 な、なんだ? とフィーアの方を見た。


「重っ苦しい!」

「堅苦しすぎデス! 全然似合ってマセン!」


 ええー……と、なる。

 いや、だってほら、本物の皇女様だぞ?


「フィーアの恋人なのデスから、もう少し自身を持ってくだサイ。アタシのことはそうですね……まぁ、皇女と呼んでくだサイ。殿下はいりまセン」

「は、はぁ……じゃあ、皇女。ハイムだ、よろしく頼む」


 それはそれとして、さすがにフィーア相手ほどは砕けることができない。

 最低限、声音に敬意が乗る感じで。

 若干距離を取っているとも言う。


「んー、及第点としマス。では二人共、今日は剣術クラブを見学されるのデスよね?」

「あー、そうなる。……皇女が案内してくださるのか?」

「デス! 何せアタシは、剣術クラブのデスから」


 ……ソーディアル帝国は、剣の国とも言われる。

 その皇女殿下たるカミア姫は、それはもう剣の天才だと学園では評判だった。

 そんなお姫様と知り合いだったのか……

 思わず、感心してフィーアを見ると。



「……私も、王女……なんですけど?」



 カミアに聞こえない程度の小声で、そう睨んできた。

 しまった、本物の皇女様とか考えたのがバレた!

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