第119話 剣術クラブ①

 剣術クラブ――というか、クラブ活動というのは魔導学園の名物みたいなものだ。

 貴族同士が、お互いの格を意識することなく、同じ趣味に打ち込む。

 という名目の課外活動。

 まぁ、さすがにそこまではっきりと垣根をなくせる訳では無いが。

 格に関係なく活動できるよう、いろいろな配慮がされていることは間違いない。


 剣術クラブは、その中でも特に人気の高いクラブだ。

 なにせ剣術は貴族の嗜みでありながら、学園の講義として学ぶのはあくまで一年の僅かな期間だけ。

 学園で剣術に打ち込むなら、クラブに入ることは必須と言っていい。

 他にも乗馬クラブや社交クラブと言ったクラブが人気だが、これまで俺はクラブ活動にはあまり興味がなかった。

 魔術を学ぶためのクラブ、みたいなのはなかったからな。

 上級生になると、学園に所属する教授の研究室に所属できるのだが、本命はそっちだ。


 そして、フィーアはといえば、


「まぁ、前にも勧誘は受けたことあるんだけどね」

「その時は断ったのか?」

「見学だけさせてもらったの、あの時は他にも学園でできることが色々選択肢にあったからなぁ」


 じゃあ、今はと言えば。

 割と結構な選択肢が潰れてしまっている。

 主にグオリエのせいで。

 クラスでの活動が、今はもう殆ど芽がなくなってしまっている。

 そうなると、午後は結構暇になってくるわけだ。


「一日はバイトで使うけど、もう一日くらいなら時間を捻出できそうなんだよね」

「そういえば、最近は週に二日くらい空いてる日があるな」


 先週はバイトの前にデートをしたし、今週はこうして剣術クラブを見学しにいく余裕がある。

 そう、俺達は教官の提案を受け入れて剣術クラブに脚を運んでいた。

 理由は、すでに述べた通り。


「さすがに毎日参加して、っていうのは無理だけど。週に一回……半月に二回くらい顔を出すくらいでいいなら、参加してみたいなって」

「それくらいなら、俺も剣に時間を割けるかな」


 毎日の鍛錬は欠かさずやっている。

 そのうえで、剣術を磨く時間を多少設ける。

 まぁ、なしではない。

 ここ最近、剣の話題をすることが多かったから、復習を兼ねて。


 とはいえ、フィーアとの付き合いで最近は魔術を学ぶ時間が少し減っている。

 これ以上減らすのはどうだろうか、というのも実際のところ。


「なんにせよ、まずは見学しないとな」

「そうだね。……あ、そうだ! 剣術クラブに行くなら、紹介したい人がいるの」

「っていうと?」


 ふと、話が逸れた。

 そんな時だった。



「あ、フィーア! 見つけマシタ!」



 少し、おぼつかない発音で。

 少女が声をかけてきたのだ。

 ……もしかして、留学生の友人?

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