第118話 剣の講義③
「――将姫アストラといえば、フィーアの母親だよな」
「うん、お母様。剣のさいのーは母譲りかもしれません」
えへん、と胸を張るフィーア。
今は講義が終わって、昼食を食べるため学食に向かっているところだ。
人気のない廊下で、人がいないことを確認してからぶっちゃけ話をしている。
フィーアには、剣の才能があった。
それは、単に要領がいいからというわけではない。
天賦の才、というやつだ。
「私、眼がいいんだって」
「剣士に必要な才能の一つだな。それと、あの膂力……」
「そっちは言わないでよ! いっぱい食べて、いっぱい剣を振ってたらいつの間にかそうなってたんだから!」
それもまた、強くなるための才能というやつだろう。
ともあれ、そんなフィーアの才能は母譲りのものらしい。
将姫アストラ。
平民でありながら、国を守る騎士団の長を務める女傑。
まぁ、その理由の半分はフィオルディア陛下の妾だからというところもあるのだが。
それはあくまで平民でありながら高い地位につくためのキッカケにすぎない。
この国の人間ならば、彼女の武勇を聞かないことはないだろう。
「これで、本人がマジックフォト嫌いで写真が残ってないのがねー。すごく美人なのに、勿体ない」
「美人だからじゃないか? とはいえ、絵画の一つも残ってないのは徹底的だが」
おかげで、将姫殿の顔を見たことがないんだよな。
一体どんな顔をしているやら。
「むぅ、お母様じゃなくて私の顔をもっと見て欲しい」
「フィーアの顔は……どう考えても陛下似だろう」
「そうですけどーっ!」
マジックフォトを並べると、誰がどう見ても親子だと解るくらい似ているからな。
「それにしても、ハイムくんも結構剣使えるじゃん!」
「いやいや、凡人の剣だよアレは」
「だからだよ! 凡人の剣は、練磨の剣。長い修練の末でないと身につかない剣だってお兄様が言ってた」
お兄様……赤獅子こと王太子殿下。
「フィーアの剣は、王太子殿下から?」
「うん、お母様は忙しいから。あ、それと黒鷹殿からも」
「この国の剣術使い3トップだな……壮観だ」
そりゃあ伸びるというものである。
俺なんか、たまに団へやってきた師匠から定期的に扱かれるくらいだっていうのに。
なんて話をしていると――
「おーい、フィーア! ハイム!」
――剣の講義をしてくれた教官が、大急ぎで走ってきた。
うおっ、と二人してびっくりする。
この通路には殆ど人が来ない。
だから、陛下とか王太子殿下の話を構わずにしていたというのに。
「きょ、教官? どうしたんですか?」
「ああいや、二人は今日の午後、暇かと思ってな」
「午後? えーと、私は大丈夫です」
「俺も、問題ないです」
じゃあ、と教官は口を開き、
「――剣術クラブに、顔を出してみないか?」
そんな誘いを、してくるのだった。
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