第117話 剣の講義②
「よーーーーーっし! いっくよーーーーーっ!」
フィーアがとてもテンション高い。
なんかめっちゃブンブン木剣を振っている。
楽しそうだなぁ、と思っているがそれはそれとして。
今からアレの相手をするのか――
「フィーア……お前、結構できるな?」
「あ、わっかる!? えっへへー、では得とご覧にいれよー」
呑気な声で、笑うフィーア。
すでにいつでも模擬試合は初めても大丈夫だ。
あちこちで、そもそも剣を振ったこともないクラスメイトや、ちょっと基礎が解るくらいのクラスメイトたちが各々思い思いに剣を振っている。
どうやら、近い実力の相手をきちんと見分けているようだ。
俺とフィーアは、それなりに戦いが成立すると思われているらしい。
そういえば。
そうなるとどうなんだろう。
ぶっちゃけグオリエは、それなりに剣もできる方だったはずだ。
だが、このクラスで俺達とグオリエと同じくらい剣術を学んでいる奴はいない。
一人余るのだ。
一番妥当なのは、グオリエは教師と模擬戦をすることだな。
本人はそれはもう烈火のごとく起こりそうだが。
話が逸れた。
ニッコニコで剣を振っているフィーア。
周囲からは視線が向けられている。
彼らは剣の素人だから、フィーアがアレでめちゃくちゃ技術的に”巧い”ことは理解できないだろう。
しかし俺には解る。
多分フィーアは――
「いざ! てやー!」
「……くっ!」
――グオリエより強い!
一瞬にして距離を詰めてきたフィーアを、なんとか剣で受け流す。
腕がしびれる感覚、どんだけパワーあるんだよ!
その後も殆ど防戦一方で、俺は押されていった。
身体強化魔術を使えばともかく、素の剣術で、しっかり剣を学んだ相手に勝てるわけがない。
気がつけば、俺の剣は思い切りよく吹っ飛んでいた。
「うおっと危ない」
「あ、ごめん!」
模擬試合をしているクラスメイト――つまり、こっちを見ていない――に当たりそうだったので、風魔術で回収する。
いくら気まずい相手でも、何の悪いことしてないのに、痛い目をみるのは違うだろう。
とか思っていると、なんかやたら視線を感じた。
「――見ての通り、これが強者の剣ってやつだ。人は鍛えればここまでキレイに剣を振るえるようになるってことを、覚えて欲しい」
教官は、俺達の模擬試合に対してそんなコメントを残した。
何か、割とフィーアの剣に惚れ込んでいる気配を感じる。
「もちろん、それを相手に持ちこたえられるハイムの剣も、素晴らしいものだ。まずはアレを目指してみてくれ」
ついでに、俺のフォローもしてくれるのはありがたい限りだ。
俺が一方的にやられたのを見て、俺なら勝てるんじゃないかとクラスの連中が思いそうだからな。
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