第102話 デート②
魔導学園パレット、そして魔導王国マギパステルの王城がある王都マギパステルは、常に人で賑わっている。
そりゃそうだ、マギパステルは大陸随一の大国で、その権勢は未だ大陸中に響き渡っているのだから。
商売をするにも、魔術師として活動するにも、これほど向いている土地はない。
強いて言うならダンジョンが近くにないので冒険者として活動するのは、若干不向きな程度か。
だが、徒歩で一日のところに迷宮都市と呼ばれる冒険者の街がある。
そこからやってきた冒険者も、探せばある程度は見受けることができた。
「わあああ……街だね!」
「そうだな、街だ」
そんな人だかりに、フィーアはお上りさんみたいに目を輝かせている。
どっちかといえば彼女は下りてくるほうだろうに。
そういう反応ができるのは、彼女が素直で純朴であるという証か。
「人が……いっぱいいる!」
「いろんな人がいるからな、見ろ」
「んん?」
「パレットの学生も結構いるぞ」
人の中には、学生服姿の少年少女もちらほら見受けられる。
ここは学園から近い治安の良いエリアだというのもある。
だが、平民の中に貴族が普通に混じって日常を送っている光景は、マギパステルの中でも王都でしか見れないだろうな。
「貴族相手に商売して、萎縮したりしないの?」
「王都のこんな一等地のエリアで商売する連中が、その程度で臆するもんか。適当に店を覗いてみれば解るよ」
ここは、学園の近くにある商業エリアだ。
店先には、様々な商品が売り出されている。
食料品から、貴族向けの装飾品まで。
あまりにも多種多様で、雑多だ。
「うう、少しお金残しておけばよかったかなぁ」
「学生なら、支払いを家に頼むこともできるぞ。俺は無理だけどな」
まぁ、言い方はアレだがツケってやつだな。
貴族は財布を持たない奴が多いってだけで、払えないことはありえないんだが。
「カラットの人にはいつも迷惑かけてるから、あんまり負担はかけたくないなぁ……」
「じゃあ、買うものを厳選すればいい。街に出かけたのに何も買わなかったってのもそれはそれで健全じゃないだろ」
貧乏学生じゃあるまいに。
俺だって、平民にしてはそれなりに金を持ってる方だと思うぞ。
主に、学費が浮いたおかげで仕送りを全部生活費に当てれるからだが。
「それはそれで、選びきれないよー!」
「それを選ぶのが楽しいんだ。せっかくだし、そういうところも楽しんでいこう」
「はーい!」
というわけで、俺達の初デート……というか、街の散策が始まったのだった。
デートと意識すると、今更ながら恥ずかしくなってくるな。
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