第100話 許可③
そういえば、と思ってふと口にした。
「それ、バイト以外にも俺が一緒なら、街に遊びに行ってもいいってことか?」
「―――――」
すると、フィーアは完全に口を開けたまま停止した。
完全に想定外だったらしい。
いや、むしろ話としてはそっちのほうがメインじゃないのか?
「……確認してくる!!!!」
「先に雑用始めてるな」
とはいえ、そこをきちんと確認してないなら確認しないと行けないのは確かだ。
フィーアが凄まじい勢いで王城の方に取って返していく。
こりゃあ今日の雑用は一人で進めることになるかなと思って、目的地に向かうと――
「OKだって!」
先回りしていたフィーアが目を輝かせながら叫んだ。
いや、早い早い。
どんだけ凄いスピードで王城に取って返したんだよ。
少し概算すると、身体強化の魔術を最大出力で使って、一目散に王城へ向かうと間に合いそうな感じだと思った。
これあれじゃないか? 陛下の部屋まで突撃してバイト以外の外出についてだけ質問して即戻ってきたんじゃないか?
陛下びっくりしただろうな……
「街に! 行こう! ハイムくん!」
「お、おう。それは楽しみだな」
俺の次のバイトは明日だ。
フィーアがそこから働けるようになるかはわからないが、逆に言うと今日は働けないということでもある。
せっかく街に行けるというのに、一日お預けは辛いだろうからな。
「でも、用事はいいのか?」
「ん、最近は結構余裕のある時期だから。この間も大丈夫だったでしょ?」
それもそうか。
フィーアの主な皇女としての政務は、主にイベントへの参加だろう。
舞踏会とか、そういう如何にも貴族っぽいイベントの。
今の時期は年の区切りとかそういうイベントが発生しやすい時期から遠い。
まぁ、たまには暇な時もないと王女はやっていけないだろう。
特にフィーアは。
「というわけで、今日! 放課後! 街へ!」
「ほんとテンションたかいなぁ」
少しほっこりした。
――んで、その日のフィーアはそのテンションのまま授業に突入した。
もう、傍目から見て解るくらいそわそわしていたのだ。
クラスの連中が露骨に気にしていたし。
俺と別行動中に、例の留学生の友人に会った時も指摘されたらしい。
中々機会がなくて、俺はその友人といまだエンカウント出来てないんだけど、いつ会えるんだろうな?
そして、放課後。
ちょうど俺とフィーアは午後がすべて別々の講義だったこともあって、数時間ぶりの再開だ。
アレだけ楽しみにしていたんだろう、さぞ高いテンションで街に飛び出しかと思いきや――
「お、おほほ、ハイムくん。ご、ごきげんうるわしゅう」
そこには茹でダコになったフィーアがいた。
いや、言動もおかしいぞ、どうした?
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