第99話 許可②
改めて、フィーアから条件について確認した。
とりあえず、確認に際してフィーアは俺から離れてもらう。
あのまま真面目な話をするのは不可能だ。
色々気になってしまって仕方がない。
「と、というわけでね? さっきも行った通り、ハイムくんが一緒なら外に出ることもできるんだって」
というか、フィーアの方も冷静になってしまったのだろう。
少し恥ずかしそうにしながら、話をしている。
お互い、しばらく視線は合いそうになかった。
「街の外に出ることはダメだって、街の治安が悪い場所に行くのも禁止。ただ、例外的にハイムくんが大丈夫と判断したら、それも認めるって言ってた」
「……聞けば聞くほど、俺に対して信頼を寄せすぎじゃないか?」
「お父様、なぜかハイムくんのことすっごく気に入ってるんだよね」
やっぱり、この条件を出したのはフィオルディア陛下だった。
ともあれ、その意図は読めない。
読めないなら、とりあえず話を続けるしかないだろう。
「バイト先には、次のハイムくんのバイトをする日から行っていいように手配するんだって」
「それは……こう、勅命とか振りかざして?」
「そ、そんなわけないじゃん! カラット家の人が、娘の社会勉強のためってことで学園の友人が務めてるバイト先に一緒に働かせてくれないか頼むらしいよ?」
まぁ、そのカラット家ってのは実際には実態がないわけだが。
おそらく、王族が市井に身分を隠して赴くことをサポートする人たちがいるんだろう。
フィーアが通学路を夜遅くに安心して歩けるのは、その人達のサポートあってのことのはず。
とはいえ、そのうえでイレギュラーの対処はすべて俺に任せるとなると……
あまりにも、責任が重大すぎる。
とはいえ、
「……見方を変えれば、これは俺に対する試験でもあるな」
「あ、そっか。そうだよね」
「フィーアとこれからも一緒にいたいのなら、この程度の責任は果たせなくちゃダメってことか」
結局、どこまで行っても俺は平民だ。
平民と下位貴族が学園で付き合うこと事態は、珍しくても否定されるほどではない。
だが、王族と平民となれば、そのハードルは天と地の差。
今はまだ学生だからと見逃されていても、何れはそのハードルを越えなくてはならない時が来る。
「この程度で、躓いてちゃいられないよな」
「うん」
「それに――」
それに、だ。
「フィーアとバイトができるのは、俺も素直に嬉しいと思うよ」
「うん!」
この状況は、決して悪いことではない。
俺は、フィーアと二人でバイトをすることにした。
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