第88話 俺と彼女②
フィーアと知り合って、彼女の優しさに惹かれた。
フィーアの秘密を知って、彼女を守りたいと思った。
そしてフィーアに告白し、今の俺と彼女はここにいる。
グオリエの問題も片付いて、これから俺たちの生活はまた大きく変わっていくことだろう。
こう言う穏やかな時間は、その中でどれだけ続いてくれるだろう。
「私は、そう言う困難も悪いものじゃないと思うよ? 流石にあいつみたいのとは何度もやり合いたくないけど」
「フィーアはそうだよな。俺はやっぱり面倒が勝るよ、厄介ごとは」
「でも、その面倒よりも、私を優先してくれるんだよね?」
その一言に、一瞬ドキッとする。
こちらを見透かしたような……というか、見透かした発言だ。
「フィーアには敵わないな」
「ふふふ、私はハイムくんの彼女ですので」
ステラフィア王女の姿でそう言われると、なんだか新鮮だ。
とはいえ、今のフィーアはフィーアだけれど、いずれはそうではなくなるのだろう。
「……いつか、俺はフィーアをステラフィアって呼び捨てにして、今と同じように接さないと行けないんだよな」
「んー、王女のご尊顔に何か不満かー?」
「不満っていうよりは不安だよ。俺はまだ、王女様を正面から呼び捨てにする勇気はない」
フィーアは、その言葉に少し考える。
「んー、問題ないと思うよ?」
「なんでだ?」
「ハイムくんは受け身だけど、目の前の問題を解決するってなったら無敵だもん」
「無敵って……」
そう言われるのは、だいぶ気恥ずかしいな。
「あいつとの決闘も、完勝だったじゃん。何もさせなかった」
「勝つとなったらそうなるしかない勝負だったからだよ」
「そういうのも、かっこよさだって思う」
フィーアは、真剣にこちらをみている。
その言葉は、俺の耳に一つ一つ染み渡ってくる。
「私は、そういうハイムくんの、一つのことに集中すれば誰にだって待てない無敵なところに惹かれたんだから」
「……」
「私は……」
そして、
「ハイムくんが、好き」
確認するようにそういった。
「魔術のことになれば、誰にも負けないハイムくんが好き。私のやりたいことに真剣に付き合ってくれるハイムくんが好き。私と身分の差を越えてにずっと一緒にいようとしてくれるハイムくんが、好き」
資料室。
かつて、フィーアの秘密を知ったこの場所で。
フィーアに告白したこの場所で。
「俺も、俺に新しい世界を見せてくれるフィーアが好きだ」
俺と彼女の始まりの場所で、互いに好きを伝え合う。
「これからもよろしくね、ハイムくん!」
「ああ」
だから、
これからも、俺たちの関係は続いてく。
――――
今回で一区切りとなります。
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