第85話 決着④
変化といえば、クラスの連中も変化を余儀なくされていた。
ぎこちない空気が、常にクラスを支配しているのだ。
グオリエはもういない。
だが、グオリエの下で育てられた俺への差別感情は消えない。
そもそも、俺がグオリエに勝ったことで奴らの恐怖の対象は俺に移っている。
フィーアが俺と恋仲になったのも大きいだろう。
今まではそのことを知らなかったが、例の決闘で流石にそれを知らないということはありえなくなった。
流石のフィーアも、自分の恋人を悪くいう連中と仲良くなるのは難しい。
「……まぁ、こっちが配慮する必要はないんだけどさ」
言いながら、フィーアは荷車を使って的を移動させている。
今日も今日とて、俺たちはゴミになった魔術用的の片付けをしている。
「でも、私たちが早くクラスに行って向こうの気まずそうな空気を直に感じるのもやだし」
「まぁ、今までみたいにこうやって雑用をして、時間ギリギリにクラスへ行くことになるよな」
クラスの連中とは、もともとホームの直前と必修科目の間だけの関係だ。
後者はお互い真面目に授業を受けていれば変な空気になることもない。
だったら、これまで通り雑用で時間を潰してホーム前にクラスへ行けば余計な衝突は生まれない。
「でも、やっぱり寂しいよね。せっかく一緒のクラスになったのに」
「フィーア個人の好悪と俺に対する態度はともかく、連中がただの嫌な奴ってことはないだろうしな」
「そうなんだよねえ、グオリエのせいでおかしくなるまでは、普通に楽しく交友関係を築けてたわけだし」
俺はともかく。
フィーアにとって彼らは悪い友人ではなかった。
グオリエに対抗する気概がなかっただけで。
「まぁ、フィーアにその気があれば、そのうち連中ともやり直せるさ」
「今はいいかなあ」
そりゃそうだ。
せっかくグオリエから解放されたのにわざわざ不快な思いをする必要はない。
「そうだ、せっかく落ち着いてし、そのうちハイムくんも私のクラスの外の友達と会ってみようよ」
「ああ、前に交流があるって言ってた」
なんでも、他国からの留学生で、少し不思議なところがある少女だとか。
まぁ、機会はそのうちあるだろう。
「まぁ、今はあれだね」
「あれ?」
魔術に的を焼却用の杖で燃やして、フィーアは一つ息を吸った。
「いちゃいちゃしよう!」
いちゃいちゃするのか。
「いや、何を言ってるんだ?」
「そこは嬉しそうにしてよ、彼氏でしょ!?」
「俺、そういうあけすけなのって苦手で……」
「そっちから告白してきたくせにーーーーー!」
……まぁ、そう言われると弱いんだが。
ともあれ、嫌ということはないので、フィーアの提案は承諾する他になかった。
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