第84話 決着③
決闘は、実質俺の勝利で決まった。
まぁ、あの火炎魔術をグオリエに当てていれば実際勝っていたのだから、文句なしに勝ちと言ってもいいだろう。
決闘からすでに数日が経ち、学園はその話題で持ち切りだ。
幸いなこととして、話題になったのは俺の立場と、グオリエとの恋愛に関する確執だった。
グオリエと特待生のハイムが一人の女性を巡って争ったというところが話題になり、その女性が誰かとか、俺の顔までは話題にならなかったのだ。
この時ばかりは、俺の地味顔に感謝だな。
あと、フィーアは世界で一番可愛いが、印象は貴族の中でも地味な部類に入るのも良かったのだろう。
まぁ、その顔の作りはかのステラフィア王女と同じなのだから、フィーアの良さを知ってしまえば誰だってフィーアの魅力に気づいてしまうだろうけれど。
……この話はあまりするべきじゃないな。
ともあれ、学園中を決闘が話題掻っ攫う中、俺とフィーアは普段と変わらない日常を送っていた。
いや、普段通りではないな。
もうクラスにグオリエはいないのだから。
あの決闘で一番大きな反応を見せたのは、グオリエの実家らしい。
そりゃそうだ、息子の失態を学園中に知られてしまったのだから。
「……でも、実際のところはそれだけじゃないみたいだよ」
「と、いうと?」
「お父様が言ってたけど、あいつってバファルスキ家の中では扱いが悪かったみたい」
資料室にて、部屋に置いてあった椅子に座り込みながら、フィーアは気のない声音で言う。
「バファルスキ家には、天才って言われる長男がいるんだ。家督もその人が継ぐの」
「へぇ」
「赤獅子と黒鷹って聞いたことある?」
「王太子殿下と、その右腕と言われる側近だろ? 流石にそれくらいは知ってるぞ」
「お兄様が赤獅子で、黒鷹があいつのお兄さんなの」
ああ、と納得する。
つまり、この国の未来を背負って立つコンビというわけだ。
バファルスキ家は上級貴族であるが、常に王族の側近をするわけではない。
だから黒鷹と呼ばれる兄は、実力で次期王の側近に上り詰めたわけだ。
グオリエがそれと比べられていたというのは、なんとなく納得ができる話である。
「あいつの俺とフィーアに対する執着が、兄への嫉妬と尊敬の代償行為だった……かもしれない、か」
「勘弁して欲しいよ」
バッサリ、フィーアは切り捨てた。
まぁ、俺も同感だが。
「ともかく、グオリエは学校を辞めさせられて、実家に戻されるみたい」
「……これで全部終わったんだなあ」
「全然実感湧かないよね」
だな、と俺もその言葉に同意するのだった。
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