第83話 決着②
「ともあれ、事情は理解った。そういうことであれば、この決闘は無効だ」
「待て! 奴の言うことは出任せだ!」
「それを証明する方法はない、だが、君が彼の発言を認める言動をした以上、このまま決闘を続けることを立会人の私は認めない」
グオリエの発言を押し留め、教師は宣言する。
決闘は、お互いの了承の上で成立するもの。
それを片方が強要したとなれば、前提が崩れてしまう。
一般的にその事実が認められた場合、脅迫した側が無条件で負けることになる。
今回は、決定的な証拠が動揺の末に出たグオリエの自白のみ。
故にこの場で裁決を下すことはできない。
グオリエが上級貴族であることを考えれば、単純にグオリエの敗北にはならないかもしれないが、決闘事態は完全になかったことになるだろう。
そのうえで、これまでグオリエがやってきたことを考えれば、この決闘の結果は――
「……ハイム、これまで君にはグオリエのことで、色々と迷惑をかけてきたが」
「ええ」
教師が、こちらを向く。
真剣な顔で、教師は俺に頭を下げた。
俺も、目を伏せてそれに応える。
「こうなっては、グオリエが今までのように君を攻撃することはできないだろう。最低でも、君とグオリエのクラスを特例でいまから変えることにはなるはずだ」
「感謝します」
「ああ、だから……この決闘は、君の勝ちだ」
――俺の勝利だ。
長く続いたグオリエとの確執も、ここで一つ、区切りがつくことになる。
「ハイムくん! やったね!」
フィーアが、こちらに走って寄ってきた。
彼女にとっても、肩の荷が降りるような思いだろう。
これまで散々、俺達を苦しめてきた相手だ。
思えば、フィーアにとってどれだけグオリエは目の上のたんこぶだっただろう。
それは俺に関することだけではない。
クラスメイトに関することだって、フィーアにとってはグオリエは邪魔だったのだ。
もともと、フィーアはクラスの連中とそこまで関係は悪くなかった。
むしろフィーアの人懐っこさとコミュニケーション能力もあって、フィーアはクラスで人気があったと言っていい。
何せ今でも、クラスの連中は俺はともかく、フィーアを悪く思ってはいなかったのだから。
それをグオリエが破壊した。
グオリエがクラスメイトに俺を攻撃するよう仕向け、あのクラスの雰囲気を作ってしまった。
それがどれだけ、フィーアを傷つけたことか。
でも、これで――少なくともその原因は取り除かれるわけだ。
ともあれ、今は――フィーアはそういうことを考えてはいないだろうけど。
というか、勢いよくこっちに突っ込んできて。
「ハイムくーん!」
――だ、抱きついてきた!?
周囲から歓声が上がる。
恋人同士の抱擁にしかみえないのだから当然だ。
いや、合っているのだけど。
俺はこういう、目立つ行為は恥ずかしくて仕方ないのだが!?
「ふぃ、フィーア! 周りが見ている!」
「え? あ――」
そして、フィーアも。
視線を受けて、顔を茹でダコにした。
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