第61話 彼女ですから①
それからというもの、フィーアは毎日のように俺と二人で行動するようになった。
もともと、予定が合う時は基本二人で行動していたが、今は更に凄い。
お互いに受ける講義が違う時は、先に終わったほうが相手の講義が行われている教室の前で相手をまったり。
昼休憩は、移動すら一緒だったり。
登下校も、お互いの通学路が合流する場所で待ち合わたり、別れるようになった。
とはいえ、そういった授業の合間合間や、放課後等の時間は前から一緒にいることは多かったわけだし、そこまで変化したわけではない。
一番大きな変化は、クラスに入る時間をずらさなくなったことか。
そうすることで大きかったのは、クラスの連中が俺に陰口を叩かなくなったことか。
単純な話、奴らにとって一番大きな感情はグオリエへの恐怖だ。
グオリエに睨まれることが怖いから、グオリエに同調しているだけ。
その次が、フィーアに嫌われたくないという感情だ。
フィーアはその人の良さもあって、連中にも好かれている。
まぁ、グオリエにしてもそうだが、その感情はもはや徹底的に手遅れなのだろうけど。
俺への嫌悪感は、ぶっちゃけその二つに比べれば一段落ちるのだ。
なにせ、グオリエとフィーアはよくも悪くもクラスの中心。
対する俺は、自分たちより下の身分の平民。
どちらに精神的比重を置くかなど、考えるまでもないのだから。
グオリエはと言えば、登校を俺達より遅くするようになった。
そうすれば、二人でクラスに入ってくる俺達を見ないで済むからだろう。
嫌がらせと言える嫌がらせも、止んだ。
俺が嫌がらせを受けた現場に、フィーアが出くわしてしまう可能性が増えたからだろう。
これまでも、フィーアがその嫌がらせを認識していないわけがなかったが。
直接その場に言わせるのと、後からやってきて認識するのでは、印象も立場も大違いだ。
結果的に、俺とグオリエの根比べは、おそらく俺が勝利することになる。
そりゃそうだ。
そもそも、俺はコレまでも嫌がらせを受けてきた。
今更この程度で根負けすることもない。
加えて言えば、俺は学園で嫌がらせを受けて困るような生活をしていない。
失くしてこまるようなものを学園に持ち込んでいないし。
そもそも、学園で俺のしていることは、魔術の勉強とフィーアとの付き合いだけだ。
前者を妨害するためには、例えば俺が本を借りている図書館を襲撃したりする必要がある。
個人でできる嫌がらせの範疇を越えてしまう。
後者は、そもそもグオリエには取れない手段なのだから関係ない。
かくして、フィーアの対策がうまくハマり。
俺とフィーアが常に行動を共にするようになってから、嫌がらせという嫌がらせはされなくなり。
数日がたった。
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