第59話 嫌がらせ④
それからというものの、グオリエの嫌がらせは続いた。
嫌がらせのパターンはおもに二つ。
一つは学内にある俺の私物の破壊だ。
机の他には、実習に使っている学園が貸し出している魔術杖が破壊されたりとかだ。
流石に、それが予想できていれば学内に大事な私物を持ち込むことはしないものの。
肌に身に着けていないものは、ことごとく破壊される憂き目にあった。
もう一つは、ホームでのクラスメイトが放つ俺への罵倒が悪化している。
これはそもそもクラスメイトが勝手にやっていることだろうが、グオリエの圧がそうさせているとも言えるだろう。
ともあれ、何を言われても今更連中への俺のイメージが変わることもないのだが。
とはいえ、仮にも平等を謳う学園の中で、俺にできる嫌がらせなんてたかが知れている。
正直、実害と言える実害もない。
これでいっそ、嫌がらせのために犯罪の一つでも手を染めてくれれば、その方が楽なのだが。
問題といえる問題はグオリエの方ではなく――その嫌がらせに対して露骨にイライラをつのらせているフィーアの方にあるといえるだろう。
「もー! みみっちすぎるよ、何なのあいつ! あの筋肉はなんなの!? 見せ筋!?」
「見せ筋って……とにかく落ち着いてくれフィーア。グオリエも俺が動じてないとわかれば、手を打ってくるだろ」
「ハイムくんがよくても、私はやなの! やーなの!!」
「子供か?」
「子供だよ!」
まだ十五だよ!?
とフィーア。
一応、平民ならその年から働きに出る奴もいるけどな。
貴族にとっては、十五で学園に入り、卒業するまでが子供という扱いなんだろう。
いや、何を冷静に考察してるんだ。
むくーっと膨れているフィーアは可愛らしい。
ずっと見ていられるな。
違う、そういう話でもない。
「とにかく! 何かしら対策を打たなくてはなりません!」
「対策、対策と言ってもなあ……」
「ハイムくんの私物を破壊している証拠を掴む!」
「魔術を使われると、いつどこで破壊したかも解らなくなるからな……難しい」
先日の席炎上事件、グオリエは如何にも無関係ですよといった風にホームが始まる直前にやってきたが。
魔術を使えば、いつ席を燃やしたかなんて関係ない。
「くそー、せめてこっちに嫌がらせしてきたら、直接やり返してやるのに」
「いやいや、やり返しちゃダメだろ。……フィーアに嫌がらせしてきたら?」
シュッシュ、とシャドーボクシングをするフィーアをなだめようとして、あることに引っかかる。
そういえば――グオリエの嫌がらせは、俺に対するものに限られているな?
「……あいつ、フィーアがいるところでは嫌がらせをしてこないのか?」
ふと、その事実に俺は気がついた。
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