第57話 嫌がらせ②

 次の日、クラスに行くと机が破壊されていた。

 跡形もなく燃え尽きていたのである。

 思わず二度見してしまった。

 クラスの雰囲気が入った時点で変だとは思わなかったが、まさか自分の机が破壊されるとは。


 犯人は、言うまでもないだろう。

 ただ、クラスに奴の姿はなかった。

 普段であればもうすでに顔を出しているだろうに。

 やってきたのは、ホームが始まる直前の――俺よりも少し後のタイミングだった。


「……グオリエ」

「おや? これはずいぶんと不憫だなぁおこぼれ、座る場所もないではないか。滑稽だなぁ」


 グオリエは、得意げにそう吐き捨てて自分の席に座る。

 いや、それを得意げに言うことかよ。

 ともあれ、今ここで糾弾しても奴はボロを出さないだろう。

 というか、主犯であるかも怪しい。

 正面からがダメなら陰湿な手段を取ったとして、ばかみたいな証拠を残すタイプかといえばそうではないだろう。


「おはよー……って、何事?」

「ああ、おはようフィーア」


 最後に俺と少しタイミングをずらしたフィーアが入ってきた。

 クラスの雰囲気に、違和感を覚えたのだろう。

 そして、俺のところ……というか、自分の席までやってきてそれに気づく。


「なにこれ……」

「いや、朝来たらこの通りだったんだ」

「……ちょっと!」


 フィーアが鋭い視線をグオリエへ向けた。

 グオリエは、それに対して視線をそらす。

 あいつ、まさかまだフィーアに対して体面を保てると思ってるのか?


「いや、いいよフィーア」

「でも……!」


 憤怒するフィーアを押し止める。

 ここで騒動を起こしても、問題は解決しない。

 あと一分もしないうちにチャイムがなって教師がやってくる。

 もちろん、教師は配慮してくれるだろうが、それはそれとして。

 また、クラスの連中がグオリエに恐怖して空気が変わるかもしれない。


「ホームが始まる前になんとかするよ、この程度なら問題を起こすまでもない」

「へ……?」


 俺は、杖を抜いた。

 クラスの連中がざわめく。

 いよいよ俺がグオリエを攻撃するのではないかと思ったのだろう。

 顔には「巻き込まれたくない」と書かれている。


「――樹木よ、芽吹け」


 だが、俺のすることはそんな短絡的なことではない。

 俺の詠唱によって、燃え尽きた机から

 ざわめくクラス、驚くフィーアにグオリエ。

 そんな中、樹木はどんどん大きくなって、俺の腰辺りまで伸びる。

 そして、


「形成」


 俺がそうこぼすと、樹木は足元から削り落とされる。

 やがて、そこには燃やされる前と変わらない、木でできた机と椅子が鎮座していた。


「もともと、机に荷物は入れてない。これで十分だ」


 最後に、削り出した木片を風魔術でひとまとめにして、脇においておけば完成だ。

 木片は後で掃除するとしよう。

 教師だって、そのくらいは見なかったことにしてくれるはずだ。

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