第50話 懸念
「まさか、こうも早く付き合うことになるとはの」
遅くに帰ってきたステラフィアからの報告を聞いたフィオルディア・マギパステルは、浮かれ気分で部屋に戻っていたステラフィアを見送ってから、ひとりごちた。
といっても、別に浮かれポンチのステラフィアを咎めるつもりはない。
むしろ、ステラフィアとハイムが付き合うこと事態は、フィオルディアにとっては歓迎すべき事態だ。
それはそれとして、
「もうすこしこう、普通は付き合う前の甘酸っぱい関係を続けるものではないかの?」
ステラフィアの報告という形で二人の恋愛を楽しんでいたフィオルディアにとっては、あまりにも付き合うのが早くて不満なのである。
「資料室の掃除を任せたのがまずかったかの」
原因として考えられるのは、自身がストラ教授として二人に依頼した、資料室の掃除が挙げられるだろう。
別に、二人きりでの雑用なんてこれまでもやってきたわけだが。
あの場所は、ステラフィアがハイムに正体を知られた場所である。
つまり、特別な因縁のある場所。
そういう場所では、何かしら関係性が進展するイベントが起きるというものだ。
自分もそうだったから解る。
ともあれ、ステラフィアとハイムは付き合うことになった。
正確には正体を隠したフィーアとハイムが、ではあるが。
問題は、その後だ。
ステラフィア王女と平民のハイムが付き合うのはともかく、一介の貴族子女でしかないフィーアとハイム。
この二人が付き合うことは、そこまで問題ではない。
貴族と平民の恋愛は、非常に稀なことであるがなくはない。
大抵の場合は駆け落ちなどで、貴族の位を捨てることになるが、ハイムの場合は魔導学園の特待生。
今後の活動で、貴族位を与えられる可能性はある。
というか、高い。
「彼は優秀だからの、いずれステラフィアを娶るだけの立場を手に入れるとだろう」
だが、問題はそこに至るまでの過程だ。
問題は多い。
解決するには、問題を一つ一つ乗り越えていく必要がある。
「まずは……バファルスキの次男坊だったか」
最初に解決すべきは、やはり二人のクラスメイトである問題児。
グオリエ・バファルスキとの確執だろう。
バファルスキの当主が、優秀な長男にかまけすぎたせいで出来上がってしまった乱暴者。
まぁ、だからこそ当主にしてみればグオリエがどれだけ問題を起こしても知ったことではないだろうが。
「さて、この程度の問題は解決してもらわなくてはの」
フィオルディアにとっても、グオリエの問題は“この程度”だ。
それでも、ハイムやフィーアにとっては目下最大の問題である。
対決は、いずれ起きうる確定事項だった。
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