第52話 貴族②
正直、ホームが終わってすぐに仕掛けてくると思っていた。
グオリエのことは、俺にとっていずれ解決しなければいけない問題だ。
これまでは、一年耐えてクラス替えで別々のクラスになれば二度と顔を合わせることもないだろうと、耐えることを選んでいた。
行動を起こすのが面倒だったからだ。
だが、今は違う。
フィーアの秘密を知ってしまったことで、俺とフィーアの関係は変化した。
それに合わせて、俺はフィーアと一緒にいる時間が増えた。
故に、いずれその関係はグオリエの知るところになる。
一緒に学食を食べたりしているのだ、鉢合わせになることだってあるだろう、と。
結果として、昨日の昼休み、俺はグオリエに声をかけられた。
その時が来たわけだ。
昨日は、最終的に教師がやってきてグオリエはその場を引いた。
だが、いずれ俺に対して何かしらの攻撃を仕掛けてくることは明白。
何かしら対応しなければならないと思っていたわけだが、グオリエは不思議なことに何もしなかったのだ。
ホームが終われば、クラスに長居する理由もない。
昼前にある実技の必須科目まで、グオリエとは距離を取るだけだった。
その間、なぜグオリエが行動を起こさないのか考えつつも、結論は出ず。
実技の時間を迎えた。
「本日は、上級火炎魔術の実習を行う」
教官のその言葉に、クラスがざわめく。
上級魔術の実技は、これが初めてのことだ。
はっきり言って、この時期に上級火炎魔術の実習は学生に荷が重いだろう。
本来、この上級火炎魔術の実習は、魔術を成功させる想定はされていないだろう。
いずれ学ぶことになる魔術に、今のうちに触れておくための授業のはずだ。
俺を除けば、何の指導もなく上級火炎魔術を使えるのはフィーアと――
「では、グオリエ・バファルスキ、前へ!」
――こいつだけだ。
教官に呼ばれ、前に出たグオリエの顔を見て理解った。
自身に満ちた笑み。
こいつは、今日の実習で上級火炎魔術についての実習を行うことを知っていたんだろう。
そして、俺に対して挑発的な視線を送る。
「上級魔術は、選ばれし者にのみ許された才覚の証だ。それを証明してやろうではないか」
こいつは、俺に対して上級火炎魔術を使って見せることで、自分と俺の差というやつを見せつけようというらしい。
誰に対してかは……言うまでもないだろう。
「業火よ、焼き尽くせ!」
グオリエが大仰に詠唱を行うと、生み出された炎が魔術用の的へ突き刺さる。
そして、的を跡形もなく吹き飛ばした。
「これが上級火炎魔術、見たか!? これこそが俺の才能の証だ!」
勝ち誇るように、グオリエは叫んだ。
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