第40話 自覚②

「うわーっ! 本当にすごい量だーっ!」


 バンッ! と資料室の窓を空けながら、フィーアが叫んだ。

 目が><って感じになっている。

 窓からは埃がばっと飛び出て消えていく。

 今はまだ学生が登校してくる時間ではない、フィーアの声は静かな校舎に響いて消えた。


「これは……朝だけじゃ終わらないな」

「朝食を食べる時間がないよーっ! それが一番の楽しみなのに!!」


 というか、ホコリまみれの場所で朝食は食べたくないな。

 まぁ、風魔術で埃が入ってこないようにすればいいだけだけども。


「切り替えていこーっ! 一日で終わらないなら、無理に最後までやる必要なし! 途中で切り上げてご飯食べるよ!」

「切り替えはやっ、まぁ急ぐことでもないしな」


 次の考古魔導学の授業まではまだ時間がある。

 特にストラ教授から期間を指定されているわけではないが、終わらせる区切りとしてはそのあたりになるだろう。

 つまり、余裕ってことだな。


「流石に、放課後やれば終わると思うけど……」

「……予定空いてる放課後、あるか?」

「ちょっと今日帰ったら確認してみる」


 朝ちまちま進めるか、放課後を使って一気に終わらせるか。

 そのどちらかで落ち着きそうだ。

 俺も放課後は図書館に行きたいが、一日くらいなら問題ないだろう。

 リフレッシュと考えればちょうどいい。


「今日はそうだね……私達が崩しちゃったところ、なんとかしよっか」

「結構適当に入れたから、埃も凄いことになってるしな……」


 汚れてる場所とちょっと埃が飛んでる場所があったり。埃が別の場所に飛んでたり。

 改めて掃除するとなると、結構大変なことになっている場所だ。

 それらを、まるっと一気にキレイにしてしまおう。


「というわけでハイムくんは、これ片付けておいてもらっていい? 私はあっちをやるから」

「ああ……悪いな、段取り決めてもらって」

「いいのいいの! こっちこそ悪いかも。だってハイムくん力持ちだし、頼りにしちゃうんだから! ね?」


 別に俺だって、ある程度の段取りくらい組めるが。

 フィーアのそれは本当に手際が良い。

 要領がいいと言うか、気が利くと言うか。

 そういうところがフィーアの美点なのだろうが。


「あー、それからそうだ、ハイムくん」

「どうした?」

「今日の朝食は自信作なのです! お楽しみにー♪」


 ――本当に、憧れてしまうくらいフィーアは器用だ。

 今の一言で俺のやる気が出ない理由がない。

 そういうところに、俺は惹かれているのだろうか。

 そもそも俺は、フィーアに対してどう思っているのだろう。

 フィーアの秘密を知ったこの場所で、二人きりになる。

 そうなると、嫌でも自分の本音を意識しないわけには行かなかった。

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