第37話 二人で⑥

「んー、いっぱい食べたーっ!」

「結構量あったのに、まるっと無くなったなぁ……」


 思い返せば、フィーアは昼食も結構重いものを頼んでいた。

 俺は特に量とかこだわりがないから、その時の好みで頼んでいただけだったが。

 そこら辺、フィーアはこだわりが強そうだ。


「一日の元気はご飯から! いっぱい食べて大きくなるんだよ!」

「いや、もう身長そんな伸びないから……」


 俺もそこまで背が高い訳では無いが、フィーアはこんだけ食べても結構小柄な方だ。

 なんかこう、全体的にミニマムなんだよな。

 別に発育が悪いってわけじゃないのに。

 いや、何を言ってるんだ。


「こうやって、二人で作業して終わったらご飯食べる。……楽しい!」

「まぁ、解るよ。学園に来てから人と話す機会なんてそれこそ考古魔導学の時くらいだったから、俺も新鮮だ」


 後は、バイト中とかな。

 あそこは妙齢の女性が多いから、姦しいんだよな。


「ねぇ、えっと……ハイムくん?」

「急に改まったな? …………どうしたんだ?」


 急に改まられると、こっちまで緊張してしまう。

 この後フィーアが提案することは、概ね想像がつくのに。

 というか、別にそこまで緊張することじゃないだろ!?


「え、えっと……ハイムくん。これからもその、朝のお手伝い、一緒にどう?」

「……お、おう。もちろん、こっちこそ頼みたいくらいだ」


 なんとなく、どもってしまった。

 とはいえ、考えてみれば。

 講義を一緒に受けるといっても、クラスの連中に目をつけられたくないし、選択講義すべてが被っているわけでもない。

 案外、俺達は毎日話をする機会がないのだ。


 それはこう、少しだけまずいだろう。

 俺はフィーアの秘密を知る立場なのだ、お互いに毎日顔を合わせて、なにか新しいことがなかったかの情報交換は必要である。

 まぁ、そこまで固く考える必要もないけど。

 世間話で、お互いの状況を確認するにはやはりこれが一番だ。


「やったー! 嬉しいね、嬉しい! ありがとね、ハイムくん!」


 後はまぁ、あれだ。

 なんだかんだ、こうやって喜んでるフィーアはずっと見ていたいし、何より俺自身、フィーアと一緒に入れるなら一緒にいたい。


 というと、なんだか気障ったらしいが……

 朝にこうやって、顔を合わせて話をするくらい、別に変なことでもないよな?


 ――フィーアの正体をして、俺を取り巻く状況は一変した。

 というか、フィーアという存在がどんどん俺の学園生活で大きくなっていく。

 それが悪いことかといえば、そんなことはない。

 むしろ言いことだが、変化は変化だ。


「これからよろしくな、フィーア」

「んー? もちろんだよ、よろしくねハイムくんっ!」


 その変化に、俺はよろしくと区切りになる挨拶をした。

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