第36話 二人で⑤
「そういえば、ハイムくんって普段は何して暮らしてるの?」
「何って……学生だが」
「そうじゃなくってー、休日とか普段どうやって暮らしてるかってことだよ!」
つまり、学生として行動してる時以外のことか。
フィーアに関しては、やはり公務だの何だので忙しいのだろう。
学生として学園に通うことの方が、むしろ休日のような感覚なのだとか。
「とりあえず、特待生だから学費は全額免除されてるんだよ」
「おー、流石。あのすっごくお高い学費を全部……全部!?」
「まぁ……人によっては、一部免除だったりするそうだが」
成績と連動しているらしい。
これ、困るのが今年の成績なんだよな。
グオリエのせいで落とした単位と、通常の実技で落とした評価が結構痛い。
もちろん、教師側もその辺りは考慮してくれているが、体裁を保つためにも試験での成績は可能な限りいい成績でないと、特待生としての評価が落ちる。
まぁ、一年目で習う部分は、俺にとってはほぼすべて既知の情報なので、試験でミスることはそうそうないだろうが。
これが、二年目以降の授業だったらまずかったかもしれない。
二年目以降のカリキュラムの中には、俺が学んだことのない講義も結構ある。
一年目で受けれる範囲だと、習ったことがないのは考古魔導学くらいだな。
話が逸れた。
「休日は、魔術道具を見に店を回ったり、魔術本を漁りに書店を回ったりだな」
「うわー、魔術の虫。本って、小説とかは読まないの?」
「娯楽小説は結構読むぞ、何というか……平民として貴族ばかりの学園に放り込まれると、共感できることが……おおい」
「あ、あはは……」
娯楽小説の主人公、学園で虐げられてる奴がめちゃくちゃ多いからな。
グオリエみたいな悪役を、俺は何人娯楽小説で見てきたか……
そしてフィーアも、そうやって苦笑いをする辺り、結構そのあたり理解できるようだ。
「後はそうだな……週イチでバイトしてる」
「バイト!?」
「うおっ」
今日一食付きが良かった。
そんなに興味あるのか、バイト。
「魔術筆記による写本のバイトだな。魔術の練習になる一般向けのバイトって、これくらいしかなかったんだよ」
「そこまで魔術基準かぁ……でも、バイト。いいよねぇ、バイト」
なんとなく、フィーアの中に社会経験=バイトの図式があるのを感じる。
気持ちはわからないでもないが。
ちなみに魔術筆記とは、魔術を使って本の内容を別の本に書き写すことだ。
それなりに複雑だが、便利なので一般の魔術師の間でも結構普及していて、それ専門の仕事がある。
「うーん、やっぱりいいなぁ、バイト。私もやってみたいなぁ」
「めちゃくちゃ羨ましそうにこっちを見るのをやめてくれ……」
後、だんだん視線が俺の手にあるカツサンドに向くのも辞めてくれ。
上げるから、ほら。
すごくいい笑顔で平らげてくれた。
上げてよかった……
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