第35話 二人で④
「そ、そうだ! ハイムくんって朝食はどうしてるの?」
「自炊だが……今日は食べてきてないぞ」
朝が早かったからな。
軽く運動して、汗を流したらもう時間だった。
というか、
「後、フィーアが料理を用意してくるみたいだったしな」
「ば、バレてる――!?」
「いや、昨日朝食は何食べてるかって聞かれたからな……」
流石に、それを問われたら朝食を期待するなって方が無理だろ。
仮になかったとしても、そろそろ売店が開くから、そこで朝食を調達すればいいしな。
「うう、私のバカ……」
「というか、俺はフィーアが料理できるってのが意外だったんだが」
「むぅ、失礼な……女子だよ、私!」
「いや、女子の前に王族だろ」
その言葉に、フィーアがハッとなる。
……冗談だよな?
「お母さんに教わったの」
「ああ」
母親が平民ってことは、元は侍従かなんかだったんだろう。
厨房で働いてたら、母親に料理を教わってもおかしくない。
まぁ、王城の事情なんてしらないから、適当な想像だけどな。
なんて思いながら、フィーアが取り出した料理を見て――
「というわけで、グラスボアのお肉を使って、色々作ったよ」
――なんか茶色くね?
いや、美味しそうなのは解る。
肉料理なんて、俺に取っちゃ最高の贅沢だ。
だがしかし、茶色。
揚げ物が多いからだろう。
正直、想像と違っただけで中身はめちゃくちゃ美味しそうだ。
後、グラスボアの肉ってのが驚きだ。
グラスボアは、マギパステルの街道なら比較的どこにでもいるイノシシ型の魔物で、この国でよく使われる肉料理の素材だ。
当然その味も悪くないのだが、とても一般的名素材なので、仮にも王女であるフィーアが出してくると違和感が凄い。
「ふふふ、驚きって顔をしてるねー」
「そりゃそうだろ……いやでも、匂いは凄いな、本当に美味しそうだ」
「そこは保証するよ! ささ、食べてみて!」
その違和感に関しては、フィーアも自覚があるのだろう。
というか、むしろその違和感で俺を驚かせたかったに違いない。
ニマニマとした笑顔は、実に楽しそうだった。
それはそれとして――パンで挟まれたカツサンドをいただく。
パン事態はかなりいいものを使っているようで、パンだけでも美味しくいただける食感と柔らかさ。
噛めば噛むほど甘みが広がるが、それとカツの相性が最高だ。
「焼き立て出来立てだな、これ……旨い」
「でしょう? つまみぐい……コホン、味見したから自分でも自信を持ってお出しできるよ?」
いや、別につまみぐいはしてもいいんじゃないのか?
結構量あるし、もともと二人で食べきる量だろ、これは。
……ここに持ってきた時点で、二人で食べきる量ってことか?
視線を向けると、フィーアは下をペロッと出して顔をそらすのだった。
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