第33話 二人で②
「これ、運ぶための荷車ね」
「ん? そんなものあったのか」
早速、的を処理場まで運ぼうかと思って腕まくりをしたら、的の影に置いてあった荷車をフィーアが持ってきた。
とはいえ、そもそも的のサイズがでかいから、乗っても二つくらいがいいところだろう。
「大丈夫だよ、荷車はフィーアが使ってくれ」
「え? でも……って」
言いながら俺は的の残骸に手を伸ばし。
それをひょいっと持ち上げた。
「ええ!? ハイムくん、そんなに力持ちだったの?」
「いや、身体強化魔術だよ。まぁ、毎朝にちょっとした運動くらいはしてるけどな」
運動を日課にしているのだ。
わざわざ朝にシャワーを浴びるのはそれが理由である。
なにせ、普段は講義と資料漁りだ。
朝に、ちょっとくらい身体を動かしておかないとな。
「使ったところ、全然見えなかったけど」
「ここに来る頃には、もう使ってあったんだよ。肉体労働になるだろうからな、先に使っておいた」
「えー、気付かなかった……」
ともあれ、これなら問題はなさそうだ。
フィーアが荷車に的を乗せたのを見て、俺は処分場へ歩き出す。
処分場はすぐそこだから、殆ど行き来に時間はかからない。
だったら処分場に置いておけばいいじゃないかと思うが、結構な量があって処分場に置いておくのには邪魔なるだろうな。
「処分方法はどうする? やっぱり火魔術?」
「でもいいけどな、ちょっと試してみたいことが会って」
とはいえ、試すにしてもまずはこっちに残骸を全部持ってきてからだろう。
俺達はテンポよく、残骸を処分場に持っていく。
「うーん、やっぱり二人だと早いねー」
「そもそも、一人でやる仕事じゃないだろこれ」
「まぁ、私がやりたくてやってることだから」
社会活動を目的としているのに、他人と関われないってどうなんだろうと思わなくもない。
けど、無闇に人と関わって、問題を起こしても王女であるフィーアとしては厄介だ。
ただでさえ、人を勘違いさせやすい体質なんだから。
「私もねぇ、もう少しクラブとかに参加して、人と関わりたいんだけど」
「やっぱり王女一人で、色々とさせるのは不安があるってことか」
「せめて、一緒に学園に通ってくれる侍従がいればよかったんだけど」
そういえばそうだな。
普通こういうのって、フィーアをサポートする誰かしらが隣に付いてるもんじゃないのか?
「私は妾の子だから、信頼できる侍従を用意できなかったんだよ。学園に通って私をサポートするってことは、王国の秘密を知るってことだから」
「あー……」
逆に言えば、妾の子だから一人で学園に通わせてもいいってことか。
そこら辺の事情は、平民である俺にはさっぱりわからない。
ともあれ、今は眼の前のことだ。
残骸を運び出すのは、一時間もかからずに終わった。
次に移るとしよう。
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