第32話 二人で①
翌日、普段より少し早く起きた俺は、日課を済ませると水魔術でシャワーを浴びてから学園に向かった。
俺が普段暮らしているのは寮で、学園にはすぐ到着できる。
だからだろうか、フィーアは俺が到着してから少し後にやってきた。
「おまたせー、待たせちゃった?」
「いや、ちょうどいいくらいだろ」
多分、出た時間は同じくらいじゃないだろうか。
王城から学園まではそれなりに距離もある。
どうでもいいけど、王女が一人で町中を歩いても問題にならない認識阻害魔術は凄いな。
「今日は何をするんだ?」
「んふふ、ついてからのお楽しみー」
機嫌よく進むフィーアの後ろを追いかける。
何とも楽しそうじゃないか。
「この時間は静かだな」
「でしょー? 私、結構好きなんだ。この時間」
人気のない校内を歩く。
ホームまでは、まだ二時間くらい時間に余裕がある。
この時間に来る学生は、朝練に来ているクラブ所属の学生か、生徒会の連中か。
もしくは俺達のような例外だけだ。
今いる場所は、そういったクラブの学生が来るような場所ではない。
生徒会の人間はそもそも数が少ないから出くわすこともない。
「というわけで、つきました」
「えーっとこれは……魔術用の的の残骸か」
やがて校舎をでて、外の一角にたどり着く。
そこには魔術の的がぼろぼろになって積み重なっていた。
「そ、魔術の的って最低限、魔術的な防御加工がされてるんだけど、何度も魔術を当ててると壊れちゃうからね」
「最低限って言っても、本当に最低限だけどな……たしか、学生向けに、魔術用の的を作るバイトがあった気がする」
「バイトかー、いいなぁ」
流石にバイトは学外での活動になるから、許可が降りないんだろう。
曰く、フィーアが自由に行動できるのは、基本的に学園だけだそうだ。
例外は、それこそ登校のために学園と王城を行き来する道くらいじゃないか?
多分、その通学路くらいならある程度問題が起きてもすぐに対応できるようになってるんだろう。
「というわけで、今日はこれを片付けるよ」
「日によっては、壊れた的をあちこちから拾ってくる日もありそうだな」
「正解、一昨日はそれやってたら、ちょっと遅れかけちゃったんだよね」
なるほどそれで、今日はこの残骸を片付けるわけだ。
「ゴミの処分場があっちにあるから、そこで片づけよ」
「処分場か、言いよなあそこ。処分方法が時前の魔術だから、ついでに修練にもなる」
「だよね。……の割には、ゴミの片づけに名乗り出る学生が少ないんだよなぁ
「まぁ、ゴミって時点で処理したくないだろ」
大抵は貴族だからな。
ゴミの処分なんて、どう考えても使用人の仕事だ。
ともあれ、俺は平民だし、フィーアは今は使用人も殆どいないような家格の貴族。
ゴミの処分なんてどうってことはない。
さっそく、作業に取り掛かった。
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