第23話 大丈夫④
「そういえば、フィーアってステラフィア王女の時とは髪の色だけじゃなくて、長さまで違うよな」
「うん、それも魔術で一時的に短くしてる感じだね」
フィーアの時のフィーアは、茶髪のセミロング。
対してステラフィア王女は、金髪の腰まであるロングだ。
どちらもフィーアの可愛らしい顔立ちにはとても似合っているが、やはり印象は全然違う。
レジストによってフィーアの認識阻害を受け付けていないはずの俺も、直接顔を合わせるまでは全く気が付かなかったくらい、二人は別人だ。
多分、認識阻害がなくても基本的には、フィーアの変装はバレることがないと思う。
「っていうか、ハイムくん」
「どうした?」
「私の王女様モードに対する言及が、昨日はありませんでした。私はとても悲しいです」
「いや、それどころじゃなかっただろ……」
むしろあの状況で、ステラフィア王女の容姿を褒めれるヤツがいたら何者だよ。
いや、確かに最初は見惚れたけどさ……俺が正体を指摘した後のフィーアは、概ねいつものフィーアだったから、ステラフィア王女と結びつかなかった。
「だったら、今日なら存分に感想を述べることができるよね?」
「え? いや、まぁ……そうなるのか?」
存分に……というが、そろそろホーム始まらないか?
……なんて言っても、フィーアが止まる気がないのはその顔に浮かんだいたずらっぽい笑みで解る。
「せっかくだし、眼の前で変身しちゃうよっ!」
パッと立ち上がり、一回転。
ビシッと決めポーズを取ってから、フィーアは小声で数句の詠唱を唱える。
魔力が足元から溢れ、体全体を包む。
最後に髪が光を帯びると、美しい金髪に変化し――揺れるようにしながら髪が伸びた。
かつてマジックフォトで見た、天の至宝がそこにいた。
「改めまして、魔導王国マギパステルが第三王女――ステラフィア・マギパステルと申します。賢者ハイム、こうして貴方に出会えた幸運に、今は感謝を」
すらすらと述べられる、王女としての言葉。
俺は自分が思わず立ち上がっているのに、そこで気がついた。
胸に手を当て、この国では一般的な立ったまま取る臣下の礼をする。
昨日ここで、ばったり出くわしてしまった時は、すでに素の彼女の反応を見せてしまっていたからこうはならなかったが。
なんともはや。
――コレが、王女ステラフィア。
国民に絶大な人気を誇る、美貌の姫の姿なのだ。
そんな彼女が、
「……もう、ハイムくんったら、真面目すぎだよ」
おかしそうに笑みを浮かべるのは、家族を除けば……多分、今は俺だけなんだろうなと、そう思った。
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