第13話 バレた④
「でも、これからどうしよう……」
「そうだな……」
せめて、国家機密さえ知らなければまだ言い訳のしようもあったかもしれない。
いや、記憶を消す魔術に関して知ってしまった時点でダメだな。
本来ならその後忘れるから問題ないのに、俺が忘れられなかったばっかりに。
「……誰かしらには、報告した方が良いとは思う」
「で、でもそれだと……ハイムくんは、大丈夫?」
「流石に、俺達だけでヒミツを抱えるわけにも行かないだろ」
誰かに話せば、俺は色々と大変な目に遭うかもしれない。
そうでなくとも、俺にのしかかる問題は多いだろう。
二人だけのヒミツにしてしまえば、きっとそれが一番楽なはずだ。
だとしても、俺は黙っている気にはなれなかった。
「あはは、ハイムくんならそう言うと思った」
「そう言われると、少し照れる」
そう言って頬を掻く俺、フィーアは何かを考えている様子だ。
「……お父様に、相談してみようと思う」
「陛下に?」
陛下――フィオルディア・マギパステル。
ステラフィア・マギパステルの父にして、この国の君主だ。
賢王フィオルディアとも呼ばれ、その名声は大陸全土に響き渡っている。
政治、軍事、そして何より卓越した魔術の腕を持つ魔導王。
俺も、彼のことは心底尊敬している。
……まぁ、彼の素晴らしい魔術の腕前に心酔しているというのが正しいだろうか。
それくらい凄いのだ、彼の魔術師としての力量は。
「うん。……お父様も、私みたいに身分を隠して学園に通ってたことがあるから、理解があると思うの」
「あの、如何にも厳しそうな陛下が……」
「お父様が厳しそう?」
違うのか? と首を傾げる。
マジックフォトで拝見した陛下の尊顔は、如何にも厳しい王としての顔をしていた。
政治においても、合理性を重んじる姿勢は有名だ。
合理的で有能だが、少し合理的すぎる部分もあるタイプ……と一見思っていた。
「ふふ……政治の場だとそうかも知れないけど、全然そんなことないよ?」
「そうなのか?」
「うん、親しみやすくて……とってもいいお父様なの」
そう言われて、俺はなんとなく合点が行った。
そういう人物に心当たりがあったからだ。
「なるほど、フィーアのお父上だものな」
「えー? なにそれ、堅いよ。お父様はお父様なのに」
「そういうところだよ」
親しみやすい王族という存在において、フィーアに勝る人間など果たしているのだろうか。
何にせよ、俺達はひとしきり笑いあった。
それから、フィーアにとりあえず俺は一旦家に帰って、後は自分で話をすると言われた。
まぁ、俺が王城に行くわけにもいかないからな。
今、俺にできることはなにもないのだ。
そう考えると、少し歯がゆく感じられるのだった。
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