第12話 バレた③
「え、えい! えい!!」
「……あ、あー、まさか」
それから、何度もフィーアは魔術を行使しようとした。
手のひらからそのたびに光が溢れ、俺の顔を照らす。
だというのに、変化はない。
魔術が効いていないのだ。
複数回行使されて、俺はなんとなくその理由に行き着いた。
「……悪い、フィーア。どうもその魔術は俺に効かないらしい」
「な、なんでぇ……?」
色々自棄になっているのだろうか、涙目になりながら問いかけてくるフィーア。
その間にも、魔術は行使されているわけだが、俺の記憶は一向に消える気配を見せなかった。
「無意識にレジストしてるんだよ。魔術師はある程度魔術を極めると、自分の実力以下の魔術は効かなくなるんだ」
「え、ええ……なにそれ……私も知らないんだけど」
「一般的じゃないからな。普通、魔術をレジストできるくらい魔術を極められる魔術師は稀だし……それに攻撃魔術を防げないから、そこまで大きな恩恵はないからな」
攻撃魔術は破壊を伴う。
たとえ魔術の効果をレジストできても、それに伴う破壊を防げないのでは意味がない。
だから、基本的に効果があるのは精神面に作用する魔術を防ぐ以上の効果はない。
「そ、それ……敢えて受けることはできないの?」
「完全に無意識下でやってることだからな……正直、俺もどうすればいいのかは判らん」
強いて言うなら、俺よりも実力のある魔術師が使った魔術なら、レジストすることはできないかもしれないが。
とはいえ、普通はそれで困ることはない。
自分にとって有益な魔術はレシストしないためだ。
例えば回復魔術みたいなものは、ちゃんと効果を受けれるからな。
「つまり、ハイムくんの……記憶は、消せない?」
「王家に伝わる魔術って言うくらいだから、無意識下のレジストを突き破って効果があるもんだとばかり思ってたからな、悪い。思い至らなかった」
「…………」
フィーアは答えない。
怒っているだろうか。
そう思って、眺めていると。
「う、ううう……うううううっ! わーーーーーんっ!!」
フィーアは、泣き出してしまった。
そのまま床にへたり込み、わんわんと涙を流している。
「よかったよ、よかったんだよーーっ! だって、私、私、ハイムくんの記憶……消したくないんだもん! うわーーーーーーんっ!」
「あ、えっと、とりあえず落ち着いてくれ、フィーア」
「ハイムくんっ! 私、記憶消さないから! ハイムくんにずっと覚えていてもらうから! だから、だからこれからも一緒だよ! 一緒だよハイムくん!」
「わかった、わかったから泣き止んでくれ!」
「よかったうわーーーーーーーんっ!」
余計泣き出した!?
その後、しばらく泣き続けるフィーアを何とか宥める。
しかし、それは決して悪い気はしない。
安堵したことで泣き出してしまったフィーアに、俺も少しだけホッとしたからだ。
そりゃあ、記憶を消したくないのは俺だって同じなんだから。
ああでも本当、こんだけいろいろ言ってもらえると……どうしても、勘違いしてしまいそうになるな。
罪作りってやつだ、フィーアは。
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