第9話 バレるまで⑧
考古魔導学の講義が終わった後、ストラ教授に頼み事をされた。
「資料の整理を手伝ってほしいのだ」
とのこと。
もちろん俺は引き受ける。
雑用を押し付けられただけじゃないかと一見思うかもしれないが、そうではない。
この資料は、学園にある貴重な魔術に関する資料なのだ。
それを整理しながら読むことができる。
はっきり言って、メリットしかない頼み事である。
フィーアも頼まれたが、そちらは何やら用事があるようで。
普段から忙しそうな彼女だが、特に部活などをしているわけではないらしい。
外で何かしらの活動でもしているのだろうかと、このときの俺は思っていた。
「失礼します」
ストラ教授から預かった鍵を使って、教授の研究室に入る。
中は非常に散らかっていて、机の上には様々な資料が所狭しと置かれている。
これらを分類し、棚に詰め込むのが俺の仕事。
何にしても、宝の山だ――!
それから俺は、資料の分類に没頭した。
どれも俺が見たことないような、魔術に関する論文だ。
正直、そのすべてを一から読み耽りたい衝動に駆られるが、今はそれどころではない。
まずは全ての分類を終えて、それから時間が余ったら興味のあるものから順番に読んでいくのだ。
その順番に思いを馳せるのが、また楽しい。
魔導学園での生活は、正直あまり楽しいものではないけれど。
こうして、未知の資料や論文を直接手に取れるのは、やはり世界広しといえどこの学園しかない。
魔術を学ぶことは、とても楽しい。
俺のような平民でも、知識を吸収すれば吸収するだけ腕を伸ばせる。
「人は魔術の前に平等である」というのはマギパステルで掲げられた言葉ではあるけれど。
魔術の腕を研鑽するということにおいて、それは間違いなく事実だと俺は思う。
俺は、魔術を平民でありながら学べる環境で育った。
周りの人達も、魔術を自分のために磨いた。
だが、特待生として学園に招かれたのは俺だけだ。
同じ環境、同じ機材が揃っていたにも関わらず。
その差は才能ではないと、俺は思う。
熱意だ。
俺には魔術を学びたいという熱意があったから、その実力を磨き続けることができた。
そう考えると、この学園の生徒はもったいないことをしている。
貴族としての柵や、プライドに拘って絶好の環境にいるにもかかわらずそれを活かしきれていない。
グオリエなんて、その典型だ。
けれど、同時に。
フィーアはどうなのだろう、と思う。
彼女はいつも忙しそうで、魔術の研鑽に時間を割けるわけではない。
それでも真面目で優秀だから、常に魔術でも好成績を修めているわけだけど――
「……やっぱり、俺と彼女は、違う世界に生きてるんだろうな」
いくら考えても、その結論にしか俺はたどり着けなかった。
やがて資料をまとめ終え、俺は研究室に収まりきらない資料を、資料室へ片付けに行こうと行動を起こす。
そして、時間軸は現在に戻るわけだ――
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