第7話 バレるまで⑥
考古魔導学は、前述の通り人気のない学問だ。
これには二つくらいの理由があって、一つはそもそも考古魔導学で習う部分があまりにも古すぎること。
普通の魔術に関する歴史は、魔術史で習うことができる。
そちらは普通に人気の講義だ。
そしてもう一つは、開催が月に一度、不定期であること。
教える教授の都合で、空いている時間にねじ込まれる形で予定が入る。
貴族の時間は有限、そんな講義を受けれるのは特待生であり普段は暇してる俺のような学生だけだ。
フィーアは何故か毎回受けれてるけど、彼女のスケジュールはどうなっているんだろう。
「揃っているようだの、授業を始めるぞ」
そして教授は、今日も少し遅れてやってくる。
どんだけ忙しいんだよ、と思うのだが、どういうわけか考古魔導学の教授を普段学園で見かけることは少ない。
オルディ・ストラ。
白髪交じりな初老の男性教授だ。
俺にとっては、ある意味恩師のような存在である。
俺、ハイムは特待生だ。
だが、実をいうとそもそも俺はこの学園に入るつもりはなかった。
魔導の勉強をするのに、学園は最高の環境だがそれに付属する貴族の柵が鬱陶しかったのだ。
だから家族には、もしも特待生として学費が免除されたら入学すると常々言っていた。
そんな俺を、特待生として学園に招き入れたのが、ストラ教授だったのだ。
ほとんどやる気のないまま望んだ面接の場で、俺について熱心に効いてきたストラ教授。
その推薦もあって、俺は特待生として認められ学園に通うことになった……らしい。
正直、詳しいことはよくわからない。
俺のクラスを担当している教官から、それとなく話を聞かされたくらいだ。
とはいえ、今となっては俺が学園に通う理由の一つはストラ教授にある。
彼は何かと俺に便宜を図ってくれる、特待生という難しい立場で、貴族の後ろ盾もない俺にとって、彼こそがこの学園の拠だ。
だが、何よりも――
ふいに、フィーアと視線があった。
微笑むフィーアは、相変わらず愛くるしい。
正直見惚れてしまいそうになるのを、講義に集中するためという名目で視線を逸らして防いでいるくらいに。
そのことで、またフィーアから鋭い視線が向けられるわけだが。
そもそも俺がフィーアとここまで話をするようになったのは、この考古魔導学の講義が理由だ。
講義を受ける間、常に二人ということもあって自然と話をするようになった。
以来、グオリエからフィーア自身のことがなくとも邪険に扱われる俺へ、せめてもの防波堤としてクラスでも積極的に俺へ話しかけてくれるようになった経緯がある。
だから、ストラ教授には感謝しかないのだが――
「むむ、何やら恋愛の波動を感じるの、仲睦まじいことだ」
「ちょっと、教授!? 何言ってるの!?」
時折、俺とフィーアのことをからかってくることだけは、正直恥ずかしいと思っていた。
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