第5話 バレるまで④
この学園の授業には二つの種類がある。
必修科目と、選択科目。
必修科目は、すべての学生が受ける必要のある講義だが、特徴はその講義はクラス単位で行われる。
あの居心地が悪い連中と、同じ空気を吸わなくてはならないわけだ。
とはいえ、私語などが許される場ではないから、目立たないようにしていればこちらを攻撃されることはない。
それを解ってか、フィーアも必修科目の最中は、基本的に俺へ言葉をかけることはない。
ホーム前などで積極的に声をかけてくるのは、その方が俺を守れるからだ。
多分、やたら俺に対して好意的なのも、それが理由……だと思う。
「では、今日は中級火炎魔術の実習を行う」
今日は実習だ。
座学と実習、二つの種類があるこの学園の講義だが、一般的には実習のほうが人気がある。
わかりやすく派手だからな、魔術を使う行為は。
魔術、この世界においてその存在は文明の発展に必要不可欠だった。
この世界のあらゆる技術は魔術によって発展したと言っても過言ではなく、多くの人間は魔術を使って生活を送っている。
魔術を本格的に学ぶには、それなりの環境が必要だ。
しかし魔術を日常的に使う程度なら、この世界の至る所で学ぶことができる。
魔導学園パレットは、そんな世界で唯一魔術を専門に教える学園であるということ。
貴族学校としての側面もあるから、選択講義には帝王学だの経済学だのの講義もあるが、必修科目はすべて魔術の講義だ。
「グオリエ・バファルスキ、前へ!」
この世界の魔術は、下級から上級までの”等級”と、火炎や冷気などの”種別”で分けられる。
種別は様々だが、等級は下級から上級と、例外として設けられた最上級までの四つしかない。
中級火炎魔術は、その中でも比較的ポピュラーな魔術だ。
「火よ、逆巻け!」
グオリエの言葉とともに、ヤツの手からは炎が放たれる。
それは指定された的へと寸分たがわず命中した。
「詠唱の精度、命中、どれを取っても申し分なし。今後も練磨を続けるように」
「当然だ」
だいたい八十点ってところだな。
グオリエは腐っても上級貴族、魔術の練度はクラスでもかなり高い。
だが、現状に満足している節があるから、その点を差し引かれて八十点。
そんなところか。
「では次、ハイム、前へ!」
「はい」
続いて俺の名前が呼ばれる。
周囲からは冷笑の視線。
……グオリエ、わざとこうなるように、俺を自分の次にするよう教官へ言ったか?
ともあれ、やることは変わらない。
俺も中級火炎魔術を行使する。
だが、結果はグオリエのそれとは比べ物にならないものだった。
「詠唱は正確だが、命中に難がある。魔術を使うという意識を常に心がけるように」
「解りました」
高めに評価しても、せいぜいが四十点。
的にすら当たっていないのは、かなり評価が下がるだろう。
そういう風に魔術を使ったから、当然だ。
途端、周囲から俺を侮蔑するような笑い声が漏れた。
一番うしろで、フィーアが面白くなさそうにそれを見ているが、気付くものは振り返って生徒たちの方を見ている俺しかいなかった。
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