第18話バッドエンド

 虎と必死に戦うが、全く終わりが見えない。

「はぁ、はぁ」

「おい、もうギブアップか?」

「そんなこと、はぁ。ない」

「いいことを一つ教えてやろう。俺はまだ本気じゃない」

 その瞬間、腹あたりが熱くなるのを感じる。

「え...ごふっ」

 自分の血を見た良太は、死を覚悟する。

「良太! 生きて、やり直してね」

 伊邪那美の声? 俺に言っているのか?

「死に戻り《バッドエンド》」



 ――ん?

 ベッドの中にいた良太は、混乱する。

「あれ、俺死んだんじゃなかったのか...」

「おはよ、良太♡」

「おっ!?」

 そこには、伊邪那美が隣に座っていた。

「私のこの術、使用者も一緒に戻らなきゃいけないの」

「はい?」

 当然、意味が全く分かっていない良太はいったい何が起こっているのかと問う。

「あー、えっとー。あなたが死ぬ直前に術をかけて、死ぬ数分前に戻った。あ、場所は適当だったけど...」

 だから、腹の傷はなくなっているし、体は消耗していないのか。

 その横顔を見て伊邪那美は口を開く。

「大体わかったようね、わっちと共にこれから再度天界へ向かう」

「うんうん」

「多分もう一回同じことをしても結果は変わらない、だから良太にはこれを渡すわ」

 伊邪那美に手を当てられる。

「これで良し」

「何をしたの?」

「術を強制的に覚えさせた、名前は...閃光神せんこうしんね」

「あ、ありがとう」

「いいよいいよ、助けてもらった恩もあるし」

 そして、俺たちは天界へと向かった。



「着いた」

 警備員をすべて退けて、天界にごり押して入ることに成功する。

 そこには、俺といざなぎだけが抜けている二人の姿がある。

 二人の目の前には警備員と...黒い虎がいた。

 先制攻撃を仕掛けるため、刀を構える。

「閃光神!!」

 光の速さで動くその様は稲妻のようだった。

「な!?」

 予想もしていない、攻撃に虎もよけきれずに斬撃を受ける。

「くッッ!」

 胸から血が流れ、その傷を手で押さえていた。

「伊邪那美いいいいいい! 何をしたああああああ」

「わっちが教えるとでも?」

「くそおおおおおお」

 虎が叫び半狂乱になり、こちらに襲ってくる。

「良太君! 盾神!」

 社畜のサポートで何とか良太は助かる。

「あ、ありがとう」

 と、社畜に礼を言いつつ目の前の虎に集中する。

「そういえば、お前らに天照様から伝言だ。開戦は3か月後だとな」

「なるほど」

「ま、俺はこれで失礼するぜ。ここで死ぬわけにはいかないんでな」

 その一瞬で虎は姿を消す。

「3か月後ですか...」

「今日からどこまで兵を集められるかが勝負だよな」

「ああ、その通りだ」

「ま、わっちがいるから大丈夫ですよ」

 その後、良太達は天界から地界へ向かった。



 いつも通り、地界では社員が働いている。

「お、良太、来たのか。それでそうだ? 調子は」

「いやまあ、全然。なので、この方を連れてきました」

 そして、伊邪那美が前へ出る。

「わっち、伊邪那美と申します。閻魔大王はお代わりになったんですか?」

「まあ、そんなところじゃ。わしが、ちょうど十代目じゃ」

「そうですか」

 と良太にはついていけない話をしていた。

「ま、これなら安心じゃな」

「そ、そうですか」

 その後、さっきの戦いのことや天界の動きなどを報告して、下界に戻る。

「3か月どこまで踏ん張れますかね」

「絶対勝つ、敵を取るために」

「わっちも応援するぞ~、頑張れーってな」

「ありがとう!」

 3か月の準備期間が始まった。









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