陰謀

第7話初戦

 夏休みは、今のところ遊んでいない。

 父さんは、仕事で忙しそうにしているし、俺に構っている暇がないと思う。

 ぼーっと考え事をしていると、窓を叩いた音がした。

 そこを見ると、この2週間一緒に過ごした元神がいた。

「はい、はい」

 窓の鍵を開けて、窓を開ける。

「よ、良太。お前は、合格だ」

 突然そんなことを告げられる。

 多分妖術師のことだ。

「え? 」

「だから、実践に行くぞー」

 また、尊寿と俺の周りが光始める。


「またか...」

 そこは、見慣れた京の町並み。

「ここは、霊が集まりやすいからのー」

 夏休みだからか、観光客が物凄く多い。

「人が多いのう。が、むしろ好都合だー」

「そうなの?」

「そう、霊は人が多い所に集まりやすい」

「そうなんだ」

 その後も、和風の町を尊寿に付いて歩く。

 向かうのは、神社だ。

 大勢の人は、神社に真っ直ぐ向かうが、俺らは、違った。

 横の林に道をずらし、戦闘準備を始める。

 尊寿の言った通り、周りにたくさんの霊がいた。

「準備は、出来てるかー? 」

「ああ」

 前にいる、女の霊に狙いを定める。

 気持ちに整理がつき、印を宙に書く。

 その印に、妖力を込めて呪文を唱える。

「妖気弾! 」

 術を発動させる。

「ぐはぁぁぁぁ! 」

 霊の悲鳴が、聞こえてくる。

 それでも、良太は攻撃をやめない。

 すぐに、脚に妖力を込めて素早く霊の元へ距離を詰める。

 手のひらを、霊の顔の前に置き、そこで妖気爆発を起こす。

「ぎゃっあ」

 霊も反撃しようとしてきたが、それを避ける。

 同様したところに、顔にお札をはる。

「はああああああ」

「がっっぁ」

 そして、霊が地面に横たわる。

「終わった...」

 一体を仕留めるのもかなり苦労した。


 しかし、まだ終わりではなかった。

「良太!来るぞっ」

 尊寿に言われすぐに身構える。

「上だっ!」

 すぐに上を向くと、鼻の長い霊がいた。

 天狗と呼ばれるものだと判断する。

「久しぶりですね、尊寿さん。あと、良太君」

「ああ、天狗。お前もあっち側か?」

「はい、もちろん」

「そうか、なら俺らに何の用だ?」

「良太君を殺しに来ましたぁ」

 不気味な目が俺を捉える。

 大きな風と同時に、天狗の息を感じられる距離にまでになった。

「ひっ」

 俺の悲鳴の後、すぐに天狗が攻撃態勢をとる。

「はあああああ」

 左腕に攻撃を受け、浅い切り傷ができ、そこから血も流れる。

「くぅっ」

「良太、後ろだ!!」

 尊寿の言葉に反応し、右腕に妖力を込めて硬くする。

 そして、重い一撃を何とか腕で止める。

「ほう、これを止めるか...」

 興味深そうな顔をして、一度天狗から距離をとる。

 天狗は空で俺らを見ていた。

「はあ、はあ。つ、強い」

「りょ、良太!大丈夫か!」

 駆け寄ってきた尊寿がそんなことを言ってくる。

「な、なんとか。致命傷は避けられた」

「良太、わしは残念だが戦うことができない。変わりに弱点を教える。あいつは近距離が大の苦手だ。逆に言えば遠距離ならお前は...死ぬ」

「わかった」

 良太は、ここで一つ思い出す。


 尊寿と修行していた時のこと。

「だーかーらー、空気をつかむ感じだって!妖力でつかんで飛ぶんだー!」

 尊寿はずっとこういっていた。

「いや、尊寿の説明が雑だから、俺ができないんだ!」

「いや、絶対できないとだめだ。神は基本空を飛べるからな」

「そう、か...」

 それからも、その技を練習することはなかった。


 今ならできる気がする。

 生死を分ける今なら!

 良太は、足に妖力を集中させて...空気を、つかむ、感じ。

 良太は頭の中でそれを必死にイメージする。

「ふああああああ」

 その瞬間、足がふわっと浮く。

「来た!」

 尊寿は驚いて声も出ていない様子だった。

 よし、第二回戦の始まりだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る