第35話 魔女裁判開廷

☆検察官アンリの発言

 えー、では。今回の誘拐未遂事件の概要を説明します。

 と、いってもすでに解決済みなので、変に頭を悩ませる必要はなさそうですね。いやー、よかったよかった。


 事の発端は先日の市場が立った日、被害者天草まりあ氏が占いで「今日誘拐されて悪魔への生贄のために殺害される」との予言を受けたこと。

 まりあ氏は予言の実現を避けるために、リリス氏と協力して逆に魔女とその協力者である男を捕まえた……と。


 じゃあ、次、カイン君。詳しい話をよろしく。

 あれ? いない? もー! こんな大事件なのにー!

 ちょっと呼びに行ってきます!






☆証人の発言、エクソシストカイン

 誰の目にも明らかだと思うが、一応仕事はしておこう。

 今回捕まった女は間違いなく魔女だ。


 予言に出たっていう森の奥の祭壇を調べたが、悪魔を降ろして生贄を受け取ってもらうための魔法陣が地面に描かれていた。

 その文様と術式を読み解いたところによれば、契約者は女の方。男はただの協力者ってところか? これも、女が人間には不可能な速度で追いかけてきた、っていう被害者の証言と一致する。


 それと、奴らの馬車の中から魔術に使うためと思しき道具や人骨、正規ルートには流れてないような怪しい薬が大量に出てきた。余罪はたくさんありそうだ。






☆証人の発言、占い師カサンドラ

 ボ、ボクは見えたものをまりあお姉ちゃんに教えただけだよ?

 魔女? 悪魔? えーん、難しいことわかんないよー!

 お兄ちゃん助けてー!




☆証人の発言、カサンドラの兄ヘレノス

 失礼。妹はまだ幼く人見知りなのです。

 妹の言うことはおそらく本当です。

 この子の占いは昔から本当に当たる。僕の知る限り、外れたことはありません。

 キャシー……、カサンドラが「被告人が魔女として生贄の儀式を行う」と予言したというのなら、被告人は魔女なのでしょう。






☆証人の発言、弁護人リリス

 証言台で話すのは新鮮だな。

 僕は魔女の協力者であった男と言葉を交わした。彼は、僕が「悪魔の遣いだ」と名乗ると安堵した顔で迎え入れた。通常ならそんな反応はしないはずだ。

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