【第17話】私と、この世界の魔法の話
誕生会の後のお兄様との
(そういえば、私が6歳になったと言う事は、お兄様はもうすぐ10歳!遂に魔法が使えるイケメンにランクアップするってことだっ!)
魔法が使えるイケメンという、何とも夢いっぱいの存在に震える。
(すばらしいっ……!神様有難うっ!!!!!)
私とお兄様は4歳差で、5月に私の誕生日があって、その後6月に、お兄様の誕生日がある。
次の誕生日で、晴れてお兄様は魔法の洗礼を受ける10歳になるのだ。
この世界には魔法が存在している。
と言っても、魔法が使えるのは、その殆どが貴族階級で、かつ10歳以上である。
私が初めて魔法を見たのは、4歳の時だ。
お母様の前で紅茶をひっくり返して軽い火傷を負ってしまった時のこと。
侍女たちが大騒ぎする中、お母様が光る掌をかざして、ジリジリと痛む手を治してくれたのだ。
”治癒魔法“としか思えないそれに、私は目ん玉をひん剥いてびっくりした。
言語が違う西洋風の、近代日本よりは大幅に遅れた文化な所だな……と思っていた私が、ハッキリと異世界だ!と断じた瞬間だった。
びっくりした私は、お母様に魔法について、前のめりで質問した。
「あらあら、アメリアは魔法が気に入ったのね」なんて言いながら、魔法の使える条件や、私もそれに該当しているから、10歳になったら使えるようになると言う事を教えてくれた。
魔法は血筋に宿るということ。
そして魔法を使える血筋が、王族からなるこの世界の貴族だということ。
だからこそ、魔法は貴族階級に”ほぼ“限定されていて、その発現条件が、神の洗礼を受けること。
お母様は敢えて説明から省いたようだが、ほぼ、と言うのは本来それぞれの貴族家の血統は、流出しないはずではあるが、貴族のお遊びが取りこぼしを起こさせる。
どうせそんなところだろう。
貴族の子だと知られずに産まれた庶子などで、貴族と認められていない庶民にも、密かに魔法が息づいていることがあるということだ。
だけど、貴族には貴族たる戸籍証明の”貴族証明“があるので、魔法が使えるというだけで、庶民が貴族になれるということはないのだろう。
私が産まれた時も、初めてお父様に抱かれる中「旦那様、貴族証明のご記入を」という家令の声が聞こえていたので、私は貴族証明を持った、歴とした貴族である。
発現条件の神の洗礼だが、これは神殿で祈りを捧げるだけでいいらしい。
その後、何の魔法が使えるのか診断される。
私も転生特典云々神に叫んだりしているが、実際この世界の人々は、神を信じている。
それもそのはず、神に祈ったその時から魔法が使えるようになるのだから。
なので、庶民よりも実際に魔法を使える貴族の方が、信仰心が厚いといえる。
お母様もたまに神殿にお布施にいっているのは、貴族として当然の行動なのだ。
何故その時期が10歳なのかと言うと、身体的・精神的に、魔法を使わせても問題ないだろう年齢を定めたのが始まりらしい。
魔法発現のきっかけである祈りは、厳しく管理されているので、コネで早めになんてことは出来なくなっている。
(きっと昔いろいろと事故や事件があったんだろうね)
その発現の祈りは、10歳の誕生日を迎えれば、受けることができるようになるが、これは貴族の義務のようなものだ。
貴族の証明たる魔法を発現させることは、とても大事なことなので、子供に洗礼を受けさせない貴族家は無い。
この洗礼は、庶民にも許されているそうだ。
庶民に紛れた血筋を発見する事になるが、貴族ではないが魔法が使える彼らから、魔法を取り上げるほど、この国は非情では無いらしい。
利用価値があると言うのもあるのかもしれないけど。
洗礼の後に、魔法の特性を必ず診断するあたり、国が魔法を使える人間の管理をしているのかもしれない。
お母様の魔法は治癒だが、これはお母様の家系が治癒が多く出る血筋なんだそうだ。
血筋毎に出やすい魔法特性があって、父方と母方どちらの魔法を引き継ぐかは、運のようなものらしい。
例えば、息子は母の魔法を受け継いだが、その子供は祖父の魔法を受け継ぐなど、家系の中から、魔法特性を受け継いでいく。
よって、貴族の結婚は政略結婚も多いんだとか。
(政略結婚はいやだ!私はイケメンと恋愛結婚する!)
血筋に出る特性から、一つだけ魔法特性を引き継ぐので、魔法使いは万能ではない。
一人が火を出したり、水を操ったり、転移しちゃったり……なんて、よくあるファンタジーのチートな存在は、居ないんだそうだ。
期待していた夢が一つ壊れて消えた。
転生特典という希望があるかもしれないが、この世界の神には期待ができない。
(中途半端神だからね……)
とまぁ、お母様との怒涛の質疑応答で得た、この世界の魔法についての知識は今のところ、こんなものだ。
その、魔法を発現する祈りをする為、来月お兄様は神殿へ受けに行く。
家族が一緒に行くことは普通なので、私も絶対に着いて行く所存である!
神殿背景に佇むふつくしいお兄様を見逃す手はない!
そして一番最初にお祝いするのだ!
お兄様は何の魔法を発現するだろうか?
(お兄様なら、なんでもかっこいいに決まってる!魔法使いのイケメン尊いっ……!)
魔法の光に包まれるお兄様を妄想していたところで、アニーが戻ってきた。
「おかえり!お兄様は受け取ってくれた?」
「はい。ご伝言もお伝えいたしました」
「ありがとう!よ、読んでくれないなんて事は……ないわよね?」
手紙は読んでもらえなければ、意味がないことに気がついて、アニーに縋るような視線でたずねる。
「僭越ながら、お嬢様が心を込めたお手紙なので、必ず読んで頂きたいと、念を押して進言してまいりましたし、ユリシス様もお嬢様を蔑ろにするような方ではない筈です。きっと読んで下さいますよ!」
「……そうよね、きっと読んでくれるわよね!」
少しだけ不安ではあるが、もし、もし読んでくれなくても、”イケメン無罪“を適用し、また別の作戦を立てればいいだけだ!
さて、明日に備えて、晩餐のあとはお風呂に入ったら即寝るぞ!
これまでの勉強の成果を披露する日なので、緊張で少し眠りにつくのに時間がかかったが、寝起きはスッキリしていた。
ーーーさぁ!パーティー当日だ!
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