【第4話】私、誕生日プレゼントはスマイルで!
この世界の有り様に、眉間に皺を寄せながら生きていくのかと、重たい気持ちになってきた5歳児美幼女ですが、ついに一週間後、晴れて6歳になります!
つまり、1年に1度あるとは言え、私の関わる唯一の大きなイベント、誕生日パーティーが近づいてきたのだ!
ユリシスお兄様については、いくら実の兄ではないとは言え(これを私が知っているのは秘密だが)、「こんなに会えないのはおかしい」「お兄様に会いたい」と、度々お母様や、侍女のアニーに訴えてみるのだが、どちらも困った顔をして、「ユリシスが会いたいと言ったらね」とか「ユリシス様のご意志ですので……」とか、なんとも食い下がり難いお返事をもらうことしか出来ないでいた。
しかも、お父様にお願いした時に至っては、「ユリシスに頼んでみようね」と悲しそうに言っては、「ごめんね、アメリア。お父様が上手く言えなかったかもしれない。また今度も聞いてみよう」と、なんとも聞いてるこっちが申し訳なくなるやりとりになってしまうので、暫く時間を置くしかない状態だった。
私、産まれただけでお兄様に嫌われているの―――??
(どうして!!!?)
「納得いかなぁーーーい!産まれた日には顔を見にきてくれたはずなのに!なんで!?何がダメで会いたくないの?!」
侯爵令嬢にも関わらず、大きな独り言をいいながら、ベッドにダイブして、ゴロゴロバンバンと暴れる私。
アニーに見つかったらお小言くらいもらうかもしれないが、バレなければどうと言うことはない!
来週は私の誕生日パーティーがある。
だから、「誕生日プレゼントは、お兄様のスマイルで!」とか、駄々こねてみようかな……?
誕生日ごときで何を偉そうにと思うかもしれないが、5歳児の小さな願いを叶えてくれないかな?!
(小さいよね?!国宝くれなんて言ってるのでもなし!)
だって、会いたくない理由もわからないし、一応貴族令嬢で、目上の兄に許可なく会いに行くのは、精神年齢25歳の私にとって、ハードルが高すぎる。
つまり、物分かりが良くなってしまうと言うか、駄々こねきれない。
「許可して欲しいよー!許可ぁ!イケメン(かもしれない)お兄様会いたいよ!声が聞きたい!せめてチラッとでいいから見せてーー!!」
(……別に元々落ち着きがある淑女な性格でもないけど、アメリアになってから、内なる私まで幼児化してきた気がする……)
まだ見ぬ期待の星のお兄様が、月日が経つほどに気になって仕方がなくなっていく私であった。
そんな自分の、私以外誰も知らない内なる25歳の自分の変化に、何とも言えない気持ちになった私は、アニーを呼んで、庭園で気分転換でもすることにした。
「アニー!ていえんへ行きたいわ。きれいなバラを見て、おいしい空気がすいたいの」
我ながら、なんともババくさい物言いになってしまったが、アニーは特に気にしてないようでよかった。
「はい。かしこまりました。まだ冷えるといけないので、ケープをお召しになってくださいませ」
「わかったわ。あのお気に入りの真っ白のケープにしてちょうだい」
私は前世の自分が強すぎて忘れがちだが、白を纏えば天使と言われ、黒を纏えば女神と言われる美幼女なのだ!
庭園とはいえ、まだ小さくて、屋敷から庭園に出るのがやっとな私の貴重な外出である!
せっかくなので、可愛くして気分も上げていこう!
◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………わあぁ……!」
凄い!流石侯爵家!庭園が庭じゃなくて、本当に“庭園”なんだよね!
(……はぁ、語彙力)
自分の家なのに、妙な客観視をしてしまう。
「アニー、一番きれいなのバラがあって、すわってゆっくり休めるのはどこかしら?」
期待の眼差しでアニーを見つめると、ケープを着せてくれた時も頬を染めてうっとりしていたが、「お、お嬢様……」と小さく感嘆のため息をついて、返事がすっと出てこない。
「アニー?」
「!はい、こちらでございます!少し細い通路も通りますので、お手をどうぞ」
侯爵家の庭園で細い通路とは珍しい……とも思ったが、ゆっくり休める所という指定が、奥まった秘密の花園のような所に繋がったのかもしれない。
こうしてアニーに手を引かれ踏み入った先には、初めて見る、とても綺麗で密やかな雰囲気のあるガゼボがあった。
―――そう、ここで私は運命の出会いをするのである。
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