【第3話】私の日常と、美醜の話

 


 アニーに先導され食堂に着くと、既にお父様が席に着いていたが、私が来たことに気がつくと、ビックリするぐらい破顔した。

 そしていそいそと立ち上がり、大袈裟なくらい両腕を広げて大歓迎のポーズ。


「アメリアっ!」

「っ、お父様っ。おはようございます!きょうは、おしごとゆっくりなんですねっ」

「あぁ、私の天使、おはよう」


 言うやいなや、お父様は私をぎゅーグリグリグリ!と、ハグして私の頭にモチモチな頬を擦り付ける。


 ちなみに、大歓迎のお父様ばかりに目が行きがちになるが、ちゃんとお母様もお淑やかに座って、こちらに慈愛の表情を向けている。


 (ハグはいいけど、グリグリが……圧がすごいのよ)


「今日は、もう2日もアメリアと朝食を共にしていなかったから、ちょっと遅めに行くことにしたんだ」


 これまた大袈裟なぐらい、しょんぼりのアクションをして、潤んだ目を向けてくる。


「えへへ、ありがとうございます。お父様!」

「ははは、アメリアのためなら当然さっ!」

「あなたったら、アメリアが潰れてしまいますわ!ふふふっ」


 再度ぎゅーグリし始めるお父様だったが、お母様がやんわり助け舟を出してくれた。


「お母様、おはようございます。あいさつがおそくなってごめんなさいっ」

「良いのですよ、お父様がはしゃいでしまったんだもの。おはようアメリア。今日も素敵な小さなレディね」


 3人が揃った時の日常である。

 お父様もそうだが、実はお母様も大概である。

 毎朝愛おしそうに、一言褒めてくれる。

こんな風に、両親の莫大な愛でぬくぬくと育っている、精神年齢25歳、実年齢5歳児は、ようやくお父様のお腹から脱出した。


 お気付きかと思うが、お父様について、モチモチだの圧だのお腹だのと表現するのには、訳がある。


 私の父ロメリアスはポヨンポヨンの大きなお腹に、肌は綺麗だが、プクプクの顔まわり。

 顔に肉がついているので笑うとおめめが埋没してしまうくらい太……ふくよかだ。

 髪は私も大絶賛の透き通るプラチナブロンド!

 顔の造形はと言うと……うん、肉に埋もれる透き通った青い瞳で、鼻は横に広くぺちゃっとしてる。

 眉は薄く広く分布してて、もはや瞼が眉毛でふんわり覆われているかもしれない。

 唇もふっくら分厚くて、かわいいと言えばそう……なのかな?


 私から見たお父様は、痩せたら……まぁそれな……り?

 でも、人相が悪いとかでは、ないはず!……はずっ!


 いや、はっきり言おう!

 私の中で、イケメンか?というと、全くもってちがう!


 家族の情や贔屓目と、イケメン評価とは別物である。

 申し訳ない……。


 

 そんなお父様だが、実はこの世界では、父の体型・顔の造作こそが、輝かしいほどのイケメンなのだ!!……なのだ。

 その証拠に、助け舟を出したはずのお母様は、下品でない程度にではあるが、私にデロデロなお父様をうっとりと見つめている。

 それだけなら、愛ゆえかと思うが、実は周りで給仕をしている侍女や使用人、果ては従者や執事までもが、お父様に羨望とも言える、うっとりとした視線を、コッソリと送っているのだ。


 ―――うん。

 多分だけど、私が分かる範囲では、取り敢えず男性の美醜の感覚は、前世の日本と比べると、どう見てもおかしい。

 ただ、敬愛する主人に向けるにしては、あの視線は熱すぎる……。


 現段階、この世界……魔法が存在する、男性のみの美醜逆転のようです!!!


(絶対地球じゃないわっ!!)

 

 女性については、もう少し様子を見たいと思うが、私と母への言動、そして使用人の女性たちの様子を見るに、こちらは日本と大差ない感覚な気がする。


 ……どうしよう、私イケメンスキーの中二病、花宮 円香改め、アメリア・ハワードには、とても……とても!生き辛い世界かもしれない……。





 ところで、私のワンチャンイケメンの希望の星、ユリシスお兄様にはいつになったら会えるの?



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