第17話「武と武の戦い」
第十七話「武と武の戦い」
「最後の『変異』だって…」俺は驚いた。
今までの力でも十分強かったのに、さらなる切り札を隠し持っていたとは。
「ああ、そうだ」とヤーモンは答えた。
「その『変異』とやらを今すぐ見せてやろう…はああああ!」と叫びながら、彼の体が伸縮し始め、変化していく。
「がああああ!」と彼の体が神々しい光に包まれ始めた。
「うわ!」俺たち、俺や大崎さんはその光に目を閉じざるを得なかった。
そして…光が収まり、目を開けるとそこには…
「な…」俺は言葉を失った。
しかし、私が言葉を失ったのは別の意味で。
そこにいたのは、小柄でしわくちゃの老人だった。
「なんだ…これは?」
「ふふ…これが最後の『変異』じゃ」とヤーモンが笑いながら言った。
「な…なんだこれは?」俺は再び言葉を失った。
大崎さんも同じ反応を示した。
しかし、大崎さんはすぐに冷静さを取り戻し言った。
「それがお前の最後の切り札か…」老人は笑いながら答えた。
「くくく…その通り、これが儂の真の姿じゃ。」
「どんな恐ろしいものかと思ったが…本当に強くなったのか?」俺は首を傾げた。
「ああ、ばっちりじゃ」とヤーモンは言い、大崎さんの方へと近づいてきた。
そして、目の前に立った。
「試しに、ほれ…殴ってみい」とヤーモンは自分の顔に向けて右手の人差し指を指した。
「分かった」と大崎さんは言い、ヤーモンの顔面に正拳突きを放った。
しかし…
「遅いな」とヤーモンは言い、突如目の前から消えた。
「何!」と大崎さんが驚いた声を上げる。
「ここだ。」と背後から声がする。
振り返ると、ヤーモンがすでにそこにおり、大崎さんの顎に蹴りを入れる。
「どはァ!」と大崎さんは老人の蹴りで大きく吹き飛ばされる。
「儂がお主たちに見せるのは、圧倒的な力やスピードではない。……圧倒的な武の技じゃ。」そして、ヤーモンは大崎さんに突進する。
「く...」と大崎さんは受け身を取りながらも、ヤーモンは瞬間移動したかのように追撃を加える。
連続して蹴りを放ち、大崎さんも反撃を試みるが、すべてかわされてしまい、逆に攻撃を受ける。
「はあ……はあ……」と息を切らしながら、余裕の表情を浮かべるヤーモンに対し、大崎さんは立ち尽くす。
「どうした?もう終わりかのう?」とヤーモンが挑発する。
「くそ!」と大崎さんが叫び、次の瞬間、目の前のヤーモンから攻撃を受ける。
「ぐは!」と大崎さんは再び吹き飛ぶ。
「くそ……」と大崎さんが呟きながら、ヤーモンがゆっくりと近づいてくる。
「全く、お主は弱いの。面白くないから、今から一分間攻撃を控えよう。」とヤーモンが余裕の表情で言うと、大崎さんは・・・
「くそ!」と叫び、正拳突きを放つ。
ヤーモンは飛び上がり、大崎さんの腕の上に着地する。
「ほれ、どうした?」とヤーモンが挑発する。
大崎さんは回し蹴りを放つが、それも避けられ、ヤーモンは足の上に着地する。
手刀を放つが、それも避けられる。
「ほれ、ほれ?」とヤーモンは再び挑発する。
「く……」と大崎さんは悔しそうに呟く。
「はあ……はあ……」と息を切らす大崎さんに対し、ヤーモンは余裕の表情で近づく。
「さて、そろそろ一分じゃな。」とヤーモンが言うと同時に、大崎さんの腹に速い蹴りを放つ。
「ぐは!」と大崎さんが吹き飛ぶ。
「どうした?先程の勢いはどこに行ったんじゃ?」とヤーモンが挑発する。
大崎さんは立ち上がり、再び攻撃を始めるが、全て避けられ、反撃される。
「ほらほら、どうした?」とヤーモンが連続攻撃を仕掛ける。
「はあ……はあ……」と息を切らせている大崎さんに対し、ヤーモンは余裕の表情で近づいた。
「それでは、そろそろ終わりにしようかの。」と言いながら、ヤーモンは手刀の形を作って近づいてきた。
「くそ!!」と大崎さんは動こうとしたが、体が消耗しきって動けなかった。
「じゃあのう。」とヤーモンが手を振りかざした。
次の瞬間、
『ヒュン!』という音と共に何かがヤーモンの体に突き刺さった。
それはナイフだった。
「なんじゃ…?」と背後を振り返ると、健斗が立っていた。
「もう好き勝手にはさせない。
俺がどうにかしてお前を倒す」と私は声を張り上げた。
「小童が…。
お主が儂に勝つなど百万年早い。」と老人の姿をしたヤーモンは笑った。
そして、突き刺さったナイフを抜いて傷を再生させた。
「ふん、それはどうかな?」と俺はナイフを構えた。
「くらえ!」とヤーモンは手刀の斬撃を放った。
「な…」と俺はその攻撃に驚きつつも斬撃を避けた。
「ほう、やるじゃないか」とヤーモンは少し驚いた表情を見せた。
「まあな」と私は奴に余裕の表情を見せたが、内心は焦っていた。
(どうしたものか。
相手の実力は明らかに上だ。
このまま戦い続けて、どれだけ持ち堪えられるかが鍵だ。
どうにかして時間を稼ぎ、大崎さんが少しでも回復できるようにしなければ、勝利の望みはない。)
「どうした?来ないのか?」老人の姿をしたヤーモンが挑発する。
「そちらから動かないなら、こちらから行くしかあるまいな。」ヤーモンは異常な跳躍力を見せつける。
「なんだと…」驚愕する俺。
ヤーモンは俺に向かって蹴りを放つ。
「くっ…」反射的にナイフで防ぐが、その衝撃で後ろに吹き飛ばされる。
「うわっ!」地面に叩きつけられ、口から血を吐く。
「もう終わりか?」老人の姿をしたヤーモンが言う。
そして、再び襲い掛かる。
「くそっ!」私はナイフを数本取り出し、突進してくるヤーモンに向けて投げつける。
「そんな攻撃が儂に効くと思うなよ。」老人の姿をしたヤーモンはナイフを弾き飛ばす。
そして、俺に向かって再び蹴りを放つ。
『バキッ!』その蹴りを受け、俺は後ろに大きく吹き飛ばされる。
「くっ…」なんとか受け身を取り、立ち上がろうとするが、ダメージが大きく立ち上がれない。
「どうした?」老人の姿をしたヤーモンが言う。
しかし…
(まだだ…まだ終わらせるわけにはいかない!)心の中で叫ぶ。
「ふん!」老人の姿をしたヤーモンは手刀の斬撃を放つ。
俺はそれをかわすが、かすり傷を負う。
「うっ…」声を漏らすが、すぐに立ち上がり、再びナイフを構える。
「まだやるのか…面白いのう。」老人の姿をしたヤーモンは再び襲い掛かる。
「くらえ!」私はナイフを数本、彼に向けて投げるが、全て避けられる。
だが、それは計算のうちだ。
俺は彼がナイフを避けた隙に、彼の懐に飛び込む。
「何だと!?」ヤーモンは驚いた表情を見せる。
「くらえ!」俺はナイフを彼の腹に突き刺す。
しかし…
「全く、厄介だな…」老人とは思えない力でナイフを掴み、引き抜こうとする。
そして、俺はナイフを放す。
「く…」と俺が苦痛の表情を見せると、ヤーモンは笑いをこぼす。
「よく頑張ったのう。だが、まだまだだ!」と言いながら、老人の姿をしたヤーモンは再び攻撃を仕掛けてくる。
「くそっ!」俺は手刀の攻撃を受け止め、今回は後ろに吹き飛ばされずに耐える。
そして、改めてナイフを手に取る。
「まだ戦うのか…しつこいぞ!」とヤーモンが言うが、俺はナイフを構えることに集中する。
「仕方がないな」とヤーモンは再び突進してきた。
「おらっ!」と俺は複数のナイフを彼に向けて投げた。
しかし、彼はそれを再びかわした。
だが、俺は退くわけにはいかない。
俺もヤーモンに向かって突進した。
そして…
「くらえ!」と叫びながら、ナイフを両手でしっかりと握り、次は確実に倒すために全力を込めてヤーモンに向けて放った。
しかし…
「ふん、無駄だ!」と老人の姿をしたヤーモンは、憤りの眼差しでナイフを手に握りしめた。
しかし、俺はナイフに仕込まれたスイッチを押した。
すると、鋭い刃が一気に飛び出す。
「な...」ヤーモンは驚愕の声を上げる。
その刃は一直線に奴の胸に突き刺さった。
「ぐはぁ!!」奴は胸を押さえながら悲鳴を上げた。
その隙を逃さず、俺はナイフを懐から取り出し、全身の力を込めて奴の胸に突き立てようとした。
しかし、ヤーモンの顔から苦しみの色が一瞬にして消え去った。
「なんちって。」
「な!!」ヤーモンは一気にナイフを振り下ろし、俺の腹の要所を正確に射抜いた。
「ぐは...」俺は口から温かい血を吐き出しながら、重力に引きずられるように崩れ落ちる。
「なかなか面白かったぞ...だが、お主では儂には勝てんよ...」ヤーモンは俺の耳元で囁くと、俺の懐からナイフを引き抜き後ろに下がった。
「く...そ...」必死に立ち上がろうとするが、体中の力が一瞬にして抜け落ちていく。
「さて...そろそろ終わりにしようかの~」ヤーモンは俺から奪ったナイフを構えると、冷たい視線で俺を見下ろした。
「さらばじゃ」そして、ナイフを投げつけてきた。
鋭利な刃先が俺の頭蓋骨めがけて正確に飛んでくる。
「くそ...ここで。
終わりか…。」
もはや抵抗する力さえ失い、俺は諦めの淵に飲み込まれていく。
その時だった...
『ドス!』目の前を何かが横切り、飛んでくるナイフを弾き払った。
それは、巨大化したスペーリだった。
絶望の淵から、突如として現れた希望の光。
俺は信じられない思いで、愛犬の姿を見つめた。
「す...スペーリ!!」俺は呼びかけるが、声は震えて出てこない。
スペーリは何か伝えるように、俺を見つめ返してくれた。
「なんじゃ、その犬はまだ生きておったのか?なんたる不思議じゃの~」ヤーモンは驚きの表情を浮かべる。
「ガルルルル!ワン!」するとそこで、スペーリが毛を逆立てて、ヤーモンに向かって突進してきた。
「全く。
なぜこうも愚かな行動をする者が多いんじゃ」ヤーモンは冷めた視線でスペーリの突進を、片手で軽々と受け止めた。
「なぁ...!」俺は驚愕する。
そして、ヤーモンはスペーリを容赦なく地面に叩きつけた。
「ワン!!」スペーリが苦しそうな声を上げる。
しかし、ヤーモンはそれを気にせず、今度はスペーリを持ち上げた。
「しつけがなっとらんの~。
まあ、もう終わるのだがな」そして、ヤーモンは手刀の形に手を構えた。
「やめろ!!」俺は必死に叫ぶが、ヤーモンは手刀を振りかぶった。
『ザシュ!』という音とともに、スペーリの腹を貫いた。
「ワン!!」スペーリが悲痛な叫び声を上げる。
ヤーモンが手刀を抜くと、そこから大量の血が噴き出した。
そして、ヤーモンが手を離すと、スペーリは地面に倒れ伏した。
俺は、愛犬の絶望的な姿に言葉を失った。
スペーリは、ヤーモンの前では無力だった。
「ス...ペ...」俺は再び声を失う。
スペーリの体が光を放ちながら、元の大きさに戻っていく。
そして、動きを止めてしまった。
「く...」俺は歯を食いしばり、憤りの感情に駆られる。
「バカ犬が...この儂にたてつくからこうなるのじゃ」ヤーモンは大きく笑いながら、スペーリの姿を嘲笑う。
「ヤーモン...」俺は怒りでどうにかなりそうだった。
しかし、その時、微かな声が聞こえてきた。
「くう~ん」スペーリが、まだ生きていたのだ。
「なんだ...まだ生きておったのか?しつこい犬じゃ」ヤーモンは呆れたように言い、スペーリに蹴りを加えようとする。
「まずは一匹」ヤーモンは言うと、スペーリに向かって蹴りを放とうとした。
しかし、次の瞬間、
『ズバ!!』という音とともに、ヤーモンの足が切り落とされた。
「な...なんじゃと!?」ヤーモンは驚愕の声を上げる。
そして、スペーリの姿は消え、その場所に健斗が立っていた。
「スペーリ...俺が力不足のあまり...助けられずにいてすまん」俺は小さな声で謝りながら、スペーリを優しくなでた。
「なんだ...今のは...」ヤーモンは切り落とされた自分の足を見つめる。
「く...お主は一体...」ヤーモンが健斗の方を向くと、健斗の姿はそこにはなかった。
そして、次の瞬間、
『かは!』という音とともに、健斗がヤーモンの腹に拳を叩き込んでいた。
「な!!」その状況を見ていた大崎さんも驚きの表情を浮かべる。
ヤーモンは健斗から距離を取り、切り落とされたはずの足が再生していくのを見つめる。
「この...小童が!!」ヤーモンは憤りの声を上げ、高く飛び上がり俺に蹴りを放った。
しかし、健斗は平然とした表情で、かすれた声で言う。
「なんだ...」そして、ヤーモンの足を掴み、回し上げる。
「ぐが!!」ヤーモンは苦しそうな声を上げる。
俺は奴の足を掴んだまま、地面に叩きつける。
「ぐわ!」ヤーモンは苦しみに悶えるが、すぐに立ち上がり健斗に反撃を仕掛ける。
しかし、
『ドカン!』という音とともに、俺は蹴りを軽々と受け止めた。
「な...」ヤーモンはさらに驚愕する。
俺は力強い一撃でヤーモンを壁に叩きつける。
すると、その壁は大きくへこんだ。
「がは...なんじゃ...先程とは違う。
感じられる霊力やパワーがはかり知れん」ヤーモンは呟く。
そして、健斗がこちらに近づいてくる。
そして、口を開いた。
「今までお前が殺めてきた命の数々。
とくと思い知れ」 そして、俺は右腕に霊力を集中させる。
すると、腕が光り輝き始めた。
「ま...まずい!!儂にわ分かる。
もしあれをくらったら...」ヤーモンは、健斗の迫り来る拳に恐怖を感じ取る。
『確実にマズイ!』という危機感が、ヤーモンの全身を駆け巡る。
そして、ヤーモンはここから逃げ出そうとするが、大崎さんが立ちはだかる。
「逃がさないぞ」と、大崎さんはヤーモンの体を押さえつける。
「な...お主!!」ヤーモンは必死に抵抗するが、大崎さんは動じることなく、ヤーモンを離さない。
「くそ!!離せ!離さんか!!」ヤーモンは絶望的に叫ぶ。
そして、健斗の右腕に光が集まっていく。
ヤーモンの目の前まで近づいてくる。
「じゃあな」と健斗は言い放ち、渾身の一撃をヤーモンの腹に叩き込んだ。
「ぐがあああああ!!」ヤーモンは悲痛な叫び声を上げる。
健斗の拳が、ヤーモンの霊魂すら砕いていく。
そして、ヤーモンは最期の思いを告げる。
(こんなところで死んだら...あの...あのお人に...会えることがなくなってしまう)
「はあ...はあ...」俺は、息を荒げその場に倒れ込む。
そして、大崎さんが俺を抱き寄せる。
「健斗!!大丈夫か?」大崎さんは心配そうな目で俺を見つめる。
そこで、『ドサッ!』という音がして、見ると老人の姿をしたヤーモンが倒れていた。
腹からは大量の血が流れ出し、目は白目をむいている。
「終わったのか...」そう呟いた瞬間、闘技場の入り口が一斉に開き、警察が駆け込んできた。
「警察だ。
ここで違法な賭博が行われているという通報があった。
全員逮捕する!」と叫ぶと、参加者たちが慌てて逃げ惑うが、すぐに取り押さえられた。
そこへ、大崎さんの友人ムーチェンさんが駆け寄ってきた。
「ダイジョウブカ!!」
「ムーチェン。
この騒ぎ、お前がやってくれたのか?悪いな...」大崎さんはムーチェンに礼を言う。
「イインダヨ。
デモ、オマエタチノジョウキョウハキケンダッタ。
」とムーチェンさんが言う。
「それよりも、病院に連れて行ってくれ。
お願いだ...」
「ワカッテイル。
」そうして、私たちと大崎さんとスペーリは病院へと運ばれた。
一方、闘技場の外では、ある男が立っていた。
「ヤーモンちゃんが死んじゃったか~。
楽しい奴だったのにな~、残念」と呟く。
「まあ、いいか。
玩具ならいくらでも探せるし、それに...気になる奴を見つけちゃったし帰るとしよっかな」 そして、その男は夜の月を背に消えていった。
その男の髪と瞳が、月明かりに照らされて赤く輝いていた。
戦闘の怨霊『ヤーモン』魔災レベル:除霊完了____。
・・・つづく・・・
今回は、戦闘の怨霊『ヤーモン』です。
https://kakuyomu.jp/users/zyoka/news/16818093076663255658
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