第16話「武道大会」

第十六話「武道大会」


「さあ、始めようか。」

ヤーモンが構えを取る。

俺は霊力を込めてナイフを取り出した。

大崎さんも構えを取った。


「まずは…」ヤーモンは不敵に笑い、俺と大崎さんを交互に見る。


「まずは君からだ。」

次の瞬間、ヤーモンは一瞬で消えた。

そして…

「ごはっ!」俺は口から血を吐き出した。

なぜなら、いつの間にかヤーモンが俺の腹の急所に正確に拳を打ち込んでいたからだ。

俺は膝を地面につけて崩れ落ちた。


「健斗!」大崎さんが叫ぶ。


「君は…あのアトラスを倒した者の仲間らしいね。

だが、全然大したことはない。」

彼は手を手刀の形にする。


「弱い者から先に排除しなければならない。」

彼は俺の首目がけて手刀を振り下ろそうとする。


「ワン!」ところが、横からスペーリが飛び出してきた。


「スペーリ!」俺は叫ぶが、スペーリはヤーモンに体当たりする。

しかし、彼は動じず、逆にスペーリを勢いよく弾き飛ばす。


「キャン!」スペーリは地面に倒れ、動かなくなる。

ヤーモンは再び手刀の構えを取りながら言う。


「なんだ、あのバカ犬は…?まあいい、邪魔者は消えた。

やっと君を消せる。」

彼は手刀を私の首目がけて振り下ろそうとする。


「やめろ!」と、大崎さんが彼の腕を掴む。


「何をするんだ?君は最後に相手してあげる。

邪魔しないでくれ。」


「もう、お前には私の仲間たちを傷つけさせない。

永遠にだ…」大崎さんは断固とした口調で言う。


「健斗、離れていろ。

今は体力をできるだけ回復させるんだ。」

大崎さんは俺に言う。


「はい…」俺は少し離れた位置に移動する。

ヤーモンは大崎さんに言う。


「全く、命を無駄にするような行動はしない方が賢い。

教わらなかったのか?」

「まるで、お前が強いかのような言い方だな。」

大崎さんは掴んだ手に力を込める。


「違うのか?」ヤーモンは不敵な笑みを浮かべる。


「ぐ…」ヤーモンは大崎さんの腕を振り払い、数歩後ろに下がって距離を取った。


「好きなものは最後に取っておくタイプなのだが……いいだろう。」


ヤーモンは素早いダッシュで大崎さんの前に現れた。


「ほら!」ヤーモンは手刀を横に振ったが、大崎さんはそれをかわした。


ニヤリと笑いながら、ヤツは手招いて、大崎さんを挑発する。

「覚悟はいいか?レッツカンフー!――――だ。」

「ふん!」大崎さんは回し蹴りを試みたが、ヤーモンはジャンプでそれを避けた。


「へえ、なかなかやるじゃないか…だが…」ヤーモンは跳び蹴りを放った。


「く…」大崎さんはヤーモンの攻撃を辛うじて避け、彼の足を掴んだ。

「ふん!」大崎さんはヤーモンを振り回して投げ飛ばした。


「へえ〜、いいね。」

しかし、ヤーモンは体を回転させて華麗に着地した。

そして、大崎さんに構えを取った。


「今度は僕の番だ。」

ヤーモンは素早く大崎さんに近づき、連打のパンチを繰り出したが、大崎さんはそれを避けた。


「おら!」大崎さんは正拳突きを放った。


「おっと。」

しかし、ヤーモンはそれを避け、隙ができた右腕を掴んで一瞬で骨を外した。


「ぐ…」大崎さんは右腕を抑えながらヤーモンから距離を取った。

ヤーモンは大崎さんに向かって言った。


「君…もしかして弱いの?」

「くっ!」大崎さんは右腕の骨をはめ直し、再び構えを取り、攻撃を仕掛けた。


「は!」大崎さんはヤーモンの顔面を狙って突きを放ったが、ヤーモンはそれを避け、大崎さんの腹の急所に蹴りを入れた。


「ぐ…」ヤーモンは追撃を試みたが…

「ふん!」大崎さんはその拳を受け止め、押し返した。


「やるじゃないか」とヤーモンは言った。

しかし、大崎さんは息を切らしながら言った。


「はぁ…はぁ…」大崎さんは先ほどの急所への攻撃でダメージを受けていた。

すると、周囲の観客たちが盛り上がり、大崎さんを励ました。


『なんだ、もう終わりか?あっけないな。』


『あいつ、天師っていう高い階級のくせに弱すぎるだろ。』

俺はその声を聞いて思った。


(違う、大崎さんが弱いわけじゃない。

ヤーモンのスピードが異常に速いんだ。

攻撃する際、彼は一瞬で目の前から消えてしまう。

攻撃力では大崎さんの方が上だが、当たらなければ意味がない。

)俺は焦ったが、これは私が介入しても解決できる問題ではない。

むしろ、大崎さんの邪魔をするかもしれない。


「さて、これで終わりだ。」

ヤーモンは構えを取り、大崎さんに突進する。


「おら!」大崎さんはヤーモンに向けて回し蹴りを放つ。


「無駄だよ。」

ヤーモンは再び飛び上がり、蹴りを避ける。


「くっ!」しかし、大崎さんは諦めず、回し蹴りをした後、体をひねって今度は上段回し蹴りを繰り出す。

しかし…

「やるじゃん。」

ヤーモンは体を低くして攻撃をかわし、着地と同時に大崎さんの腹部中央に強烈な蹴りを入れる。


「ぐ…」大崎さんは後退し、膝をつく。

そして…

「さようなら。」

ヤーモンは大崎さんの頭頂部に拳を打ち込む。

大崎さんは倒れる。


「ふふふ。

あっけないものだね。

天師も結局はこの程度。」

ヤーモンは次に俺を見る。


「くそ!」俺は悔しさを声に出す。

しかし、俺には彼に敵うことは明らかに無理だった。


「じゃあ、次は君の番だね。」

ヤーモンは笑いながら言う。

すると…

『ガシッ!』という音と共に、ヤーモンの肩を誰かが掴む。

それは大崎さんだった。


「う…嘘!」ヤーモンは驚愕の表情を浮かべる。

次の瞬間、ヤーモンの顔面に正拳突きが直撃し、ヤーモンは吹き飛ぶ。


「く…どうして…」ヤーモンはよろめく。

大崎さんは言う。


「お前の柔らかい攻撃で死ぬわけがない…私は意外とタフだからね。

それに…」大崎さんはヤーモンに向かって言う。


「お前のスピード…異常に速いと思ったんだ。

もしかして、一瞬だけ超人的なスピードを見せることができるのか?」ヤーモンは不敵に笑う。


「ふふ…気づいたの。

だけど、それが分かったとして、どうなる?」

「わからないのか?もうお前の攻撃は効かないんだよ。」


「ほう、それは見ものだね。」

ヤーモンが再び構えを取り、大崎さんも構えを取る。

そして…

「はっ!」ヤーモンが一瞬で大崎さんの前に現れるが…

「無駄だ!」大崎さんは攻撃を躱し、逆に前足を振り上げてヤーモンの顔面を打つ。


「くっ…」ヤーモンは空中に跳び、連続蹴りを放つ。


「ふん!」しかし、大崎さんはそれを軽やかに避け、ヤーモンの顔面に蹴りを入れる。


「ぐっ…」さらに、大崎さんはヤーモンの頭目掛けてかかと落としを放ち、ヤーモンは地面に叩きつけられる。


「がはっ…くそっ!!」ヤーモンは再び空中へ跳び、大崎さんに飛び蹴りを放つが、大崎さんは腕でガードする。

ヤーモンは腹に連続突きを放つ。


「おらっ!」だが、大崎さんはそれを躱し、ヤーモンの腹に突きを入れる。


「ごはっ!」ヤーモンは後方に吹き飛び、壁に激突する。

その様子を見た観客は驚きの声を上げる。


「どうして?さっきは勝っていたのに…」大崎さんが言う。


「何度も言っただろう、お前の攻撃は柔らかすぎる。

急所を狙えば力は関係ないが、急所を狙う攻撃を避けられれば、それほどのことはない。

さっきはスピードが速すぎて攻撃パターンを読むのに集中していた。

だが、もうお前の攻撃パターンは読んだ。」

それは大崎さんの冷静な判断から生まれた戦術だ。


「そうか…そうか。

ハハハハハ!!」ヤーモンは笑う。


「余裕のようだな。」

大崎さんは冷静に言う。

ヤーモンは言葉に出す。


「当然だろう…力を強くすればいいだけの話だからな。」

それを聞いた俺は(何を言っているんだ、彼は…)と思う。

しかし、大崎さんは表情を変えずに言う。


「やはり、何かを隠しているな…そう思っていた。

この程度の力で鬼災ならともかく、魔災ランクとは…おかしい話だ。」

ヤーモンが答える。


「さすがだね。

実は僕にはもう一つの力があるんだ。

霊力を使って体を変える『変異』という技さ。

今から見せてあげるよ。」

そう言うと同時に、観客たちは急いで退避し始めた。


「いくよ……はあああああ!!!」その叫び声と共に、会場が揺れ始めた。

ヤーモンの体はどんどん大きくなっていった。


「な、なんだこれは……」俺は思わず言葉を漏らした。

大崎さんも驚きの表情を浮かべた。


「ぐああああ!!!」ヤーモンが叫びながら、体の筋肉がはち切れんばかりに膨張し、髪が伸び、顔が化け物じみたものへと変貌した。

最終的には、身長が会場の全員に見えるほどに巨大化し、子供の姿から筋骨隆々の立派な大人へと変わった。


「はあ……はあ……はあ……」ヤーモンは膝をついて息を荒げたが、落ち着くとこちらを見て、相変わらず不敵な笑みを浮かべた。


「これが、俺様のさらなる進化だ。

先ほどはスピード重視のモードだったが、今は違う。

ただひたすらに暴力に頼り、力を振るうモードだ。

速さは少しばかり遅くなるが、先ほどのような柔らかな攻撃とはわけが違う。」


「なるほどな……確かに、気迫もスピードも速かった時とは違い、攻撃パターンも変わっているな。」

大崎さんは冷静に言った。

それに対し、ヤーモンは笑い出した。


「アハハハ!ご名答だ!……それでは、第二ラウンドを始めようか!」大崎さんは構えを取り、ヤーモンも拳を構えて応じた。


「はああ!」と、ヤーモンの強烈な右ストレートが繰り出された。

しかし、大崎さんはそれを軽々とかわした。


「ふん!」そして、今度は左フックを繰り出すがそれも簡単に回避する。

そして・・・

「おら!」と大崎さんが叫びながらヤーモンの腹に正拳突きを放つ。

しかし、ヤーモンは苦しげな表情を一切見せずに「何かやったか?」と問い返す。


「く…」と大崎さんは距離を取るが、ヤーモンは挑発するように「おら!どうした!もう終わりか!」と叫びながら連続拳を繰り出す。

大崎さんはそれを巧みに避けるが、数発の攻撃を受けてしまう。


「ぐ!」と声を上げながらも、大崎さんは蹴りを腕でガードする。

しかしヤーモンは「そんなガードでこの俺が止められるか!」と叫び、大崎さんの両腕を掴んで空高く持ち上げる。


苦しそうに「く…」と呻く大崎さん。

ヤーモンはさらに高く飛び上がり、「ふん!」と大崎さんに向かって飛び回し蹴りを放つ。

だがヤーモンはそれを片手で受け止め、大崎さんを地面に叩きつける。


「ぐ…」と地面に打ち付けられた大崎さん。

ヤーモンは追い討ちをかけるように飛び蹴りを放つが、大崎さんは体を横に回転させてそれを避け、立ち上がって後退する。


息を切らしながら「はあ…はあ…」と喘ぐ大崎さんに、ヤーモンは余裕の表情で「今のを避けるとはなかなかやるな。

だが、それがいつまで続くかな?」と言い、再び大崎さんに向かって突撃を開始する。


「ふん!」と大崎さんがヤーモンの攻撃をかわす。


「はあ...はあ...」しかし、彼の息遣いは荒くなっていた。

再びヤーモンの攻撃が直撃する。


「ぐ...」もう一撃を受け、今度は空中へと蹴り上げられる。

しかし、大崎さんもただでは倒れず、空中に舞い上がった瞬間にヤーモンの頭上でかかと落としを決める。


「ぐ...」ヤーモンは地面に叩きつけられる。

大崎さんも着地するが...

「はあ...はあ...」彼はかなり疲弊していた。

そこでヤーモンがゆっくりと立ち上がる。


「ほう〜まだそんな力が残っていたか?」

「当たり前だ!この程度で死ぬわけにはいかない!!」と大崎さんは言いながら、息を荒げる。


「く...くそ!」すると、ヤーモンがニヤリと笑いながら大崎さんに言う。


「ならば、最後に見せてやろうか...」と大崎さんが言う。


「何をだ?」とヤーモンが笑いながら言う。


「何って、このまま殺してもいいが...それではお前に恐怖を味わせずに死なせてしまう。

それじゃあ、本来の目的が達成できない。

だから、圧倒的な力の差を見せつけてから殺す。

そうすれば、お前の絶望を観客が見ることができるからな。」


「それで、どういうことだ?」と大崎さんが問う。


「見せてやると言っているんだよ...俺様の最後の『変異』をな...」とヤーモンが言う。


「なんだって!!」と、俺と大崎さんは驚いた表情をする。


「さあ、最終ラウンドの幕開けだ。」

とヤーモンがいつものように不敵な笑みを浮かべる。


ヤーモンが口にした最後の『変異』とは一体何なのか?そして、戦いは予測不可能な方向へと進んでいく。


・・・つづく・・・


今回のイラストは、戦闘の怨霊にして二人目の魔災レベル『ヤーモン』の大人バージョンです。是非見てみてください。

https://kakuyomu.jp/users/zyoka/news/16818093076357683215

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