第14話「天師会議」

第十四話「天師会議」


「散歩はやっぱり楽しいな。」

今、俺はスペーリを連れて公園で楽しく散歩している。


「ワン!」スペーリも久々の散歩で嬉しそうに尻尾を振っている。


「考えてみれば、最近は大変なことが多くて、スペーリとまともに遊べなかったな…。

特に先月の戦いは厳しかった…」突然現れた魔災レベルの怨霊との戦いは先月のこと。

その後、春奈と俺は重傷を負い、すぐに病院へ運ばれた。

幸い、俺たちの命に別状はなく、数週間の入院で俺は回復した。

しかし、春奈は体内エネルギーを使い果たしてしまい、もうしばらく入院が必要だ。


「まあ、春奈は『大丈夫、すぐに元気になるわ』と笑っていたから心配ないとは思うけど…少しなあ」と俺はスペーリを見つめる。


「ワン!」スペーリの言葉は分からないけれど、「春奈は大丈夫だよ」と言っているような気がする。


「そうだな、スペーリ」と俺が言うと、

「ワン!」とスペーリは元気に応える。


俺たちは公園を出て、家路につく。

マンションの近くに着くと…

「あれは…もしかして」と俺は思う。

マンションの駐車場には一台の車と、茶色のスーツを着た男性がタバコを吸っていた。

その男性は間違いなく月城さんだった。


「月城さん、こんにちは」と俺が声をかけたとき、彼は気づいてタバコを消した。


「やっと帰ってきたのか」と月城さんは俺を見て言いった。


「こんなところで何をしているんですか?」

「ちょっと待って」と月城さんが言うと、彼の携帯が鳴りだした。

彼はすぐに電話に出た。


「はい、はい、わかりました」と言って、電話を切った。


「そろそろ出かけるぞ」と月城さんが言う。


「え?どこへ行くんですか?」

「天師会議だ」と月城さんが答えた。


「え、マジですか?」と私は驚いたが、

「そんなことをしている暇はない」と言いながら、俺とスペーリを車に乗せて出発した。


「すみません、もう一度聞いてもいいですか?天師会議ですか?」と俺が尋ねると、月城さんは少し呆れたように冷静に答えた。


「ああ、すまないが何度も言わせないでくれ。

しつこいのは好きじゃないんだ」と。


「すみません、天師会議って、その名の通り天師ランクの人たちが集まる重要な会議ですよね?そんなところに私が行ってもいいんですか?」と俺が言うと、月城さんは答えた。


「本来なら、お前が来るべきではない。

だが、ある者がお前を参加させろと言ったから、急遽連れて行くことになった。

その時は誰もが驚いた」と。


「でも、天師の方々が許してくれるんですか?」と俺が尋ねると、

「それはもう解決した。

さっきの連絡で許可が出たからな」と月城さんが言った。


「そうですか」と俺は少し安心して言った。


「それより、お前の喰犬は他とは違うな」と月城さんが助手席に目を向けた。


「え?」と俺が不思議に思いながら助手席を見ると、スペーリが窓から顔を出して、外に落ちそうになっていた。


「な、危ないぞ!スペーリ、離れろ!」と俺は慌ててスペーリを引き離そうとした。


「危ないから、お前の喰犬だけ降ろしてやろうか?」と月城さんが少し意地悪く言う。


「や、やめてください!」と俺は慌ててスペーリを安全な場所に戻した。

その後、色々あって今回の会議の会場の和風の屋敷に到着した。


「ここが今回の会場だ」と月城さんが言った。


「え?ここですか?」と俺が驚いて尋ねると、彼は答えた。


「ああ、そうだ。

天師会議の会場は毎回異なるが、今回はこの屋敷で開催されることになった」と彼が答えると、スペーリが吠え始めた。

俺がスペーリが吠えた方向を見ると、そこに大東寺さんがいた。


「大東寺さん!」突然の重要人物の登場に俺は慌てた。

すると、大東寺さんは笑顔で言う。


「ようこそ、佐藤君。

天師会議の会場へ、そして私の屋敷へ」

「え?」俺は驚いた。


「ここは大東寺さんの屋敷なんですか?」と尋ねると、彼は頷いた。


「そうだ、ここが今回の会議の会場だ」と月城さんが言った。

私は驚きながらも少し納得した。

なぜなら、入り口でも警備が厳重だったし、至る所に監視カメラや防犯装置があり、黒服を着た男たちが周囲を注意深く見渡していたからだ。


「あの方々は?」と俺は、異様なオーラを放つ黒服の男たちを指して尋ねた。


「あの者たちは、みんなお主が知っている帳に所属している者たちだ」と大東寺さんは答えた。


「え!!」俺は驚いた。


「帳と言えば、情報収集を行って伝達する組織ですよね。

あそこにいる方々は、情報集めよりも武闘派に近いですけど・・・」

「まあ、お主がそう思うのも無理はない。

そう思う者は多いからな。

しかし、帳と言っても情報集めだけではない」と大東寺さんは説明した。


帳には二種類の役職があるとのことです。

『情報人』と『護衛人』です。


『情報人』は、情報を集めて世界中を飛び回る仕事です。

一方で『護衛人』は、主に怨霊の除霊や残党の処分、そして大東寺さんのようなトップクラスの人物の護衛を担当します。


「なるほど、そうなんですね」と私は納得した。


「そろそろ時間だ。

佐藤君、急いで会場に向かいなさい」と大東寺さんが言った。


「はい!」そして、俺とスペーリは急いで会場に向かった。


「ここか・・・」大東寺さんの屋敷は広く、しばらく迷子になったが、ようやくメインの会場に到着した。


「大丈夫かな・・・かなり遅くなったけど・・・」と俺が入り口でためらっていると、

「やっと来たか」と言う声がしました。

振り返ると、天峰さんがいつの間にか俺の背後にいた。


「うわ!!」俺は気配を感じず、驚きました。


「こんなところで何をしているんですか?天峰さん」と俺は尋ねた。


「いや、佐藤君が来るって聞いたからね。

面白くなりそうだから来てみたんだよ。」

と彼は言いった。


「聞いたって、天峰さんが私をここに参加させるように頼んだんじゃないんですか?」と俺は言う。


「え?そんなこと頼んだ覚えはないけど」と天峰さんは驚いた様子で言う。


「え?」俺は驚いた。

そして、少し考えて言った。


「じゃあ、一体誰が・・・」とその時、天峰さんの後ろから声がした。


「ああ、それは俺だよ」と言うと、スーツ姿でシルクハットを被った若い男が立っていた。

俺はその男を知っていた。


「い・・・伊神さん・・・」俺は驚いた。


「よう、久しぶりだな、健斗。」

彼の名前は『伊神・巴月』(いがみはづき)。

階級は天師レベルで、俺が尊敬する人物だ。


「伊神さん、本当にお久しぶりです。」

俺は頭を下げた。


「ああ」彼は笑顔で応じた。

それを見て、天峰さんが不思議そうに尋ねた。


「何だ、伊神と知り合いなのか?」

「ええ、私が上師だった頃に・・・その時は、健斗がまだ下師だったから、色々と面倒を見たんだ」と伊神さんが説明した。


「そうか・・・」天峰さんは嬉しそうに聞いた。

それから、伊神さんがこちらを向いた。


「それより、健斗。

こんなところで何をしているんだ?さっさと入らないと始まらないぞ・・・」その時、俺は「ハッ!!」と思い出した。


「あ!!そうだった!!天師会議があったんだった!!」

「頑張れよ!!」天峰さんは笑顔で入り口で見送った。

そして、俺と伊神さんは会場に入った。


「遅れてすみません!!」俺は大きな声で言った。

中には5人の男女がいた。


「紹介しよう。

こちらが佐藤健斗君だ。」

伊神さんは俺を紹介する。


「皆さんの人柄が分からないと思うから、一人ずつ紹介しよう」と伊神さんは提案した。


「まずは、あの子から始めよう…」と言い、最初に左側の椅子に座るツインテールの女性を指差した。

彼女は黒と赤の髪色で、黒いTシャツと黒いズボンを身に着けていた。


「彼女の名前は『綾野明里』(あやのあかり)。」


綾野明里・・・階級は天師レベル、霊具はナイフと銃、武の近距離と遠距離型。

活発な性格で、運動神経も優れている。

常に笑顔を絶やさず、愛らしい顔立ちをしているが、肌のタトゥーが彼女の唯一の残念な点である。


「続いては、そこの女性です。」

そう言って綾野さんの隣にいるポニーテールの女性を指した。

その女性は、落ち着いた美貌でスーツを完璧に着こなしていた。


「彼女の名前は『宇佐美葵』(うさみあおい)。」


宇佐美葵・・・階級は天師レベル、霊具は薙刀、武の近距離型、細い目を持ち穏やかで美しい、だが必要な時には恐ろしい一面を見せることもある。


「次は、そこの男性。」

次は右側に立つ筋肉質の男性を指した。

その男性は柔道着を着て下駄を履き、剃り上げた髪型で堂々と立っていた。


「彼の名前は『大崎健吾』(おおざきけんご)です。」


大崎健吾・・・階級は天師レベル、空手の達人、力の近距離型、力強く勇敢な性格で、信頼できる人物だ。


「次に、あそこのしかめっ面をした男性。」

そう言って右側の椅子に座っている和服の男性を指した、その男性は先程から冷静な表情で刀の手入れに没頭していた。


「彼の名前は『神堂和正』(しんどうかずまさ)って言うんだよ。」


神堂和正・・・階級は天師レベル、霊具は日本刀、武の近距離型、いつも冷静な性格、何を考えているのかは謎に包まれている。


「最後に、この方です。」

そう言って最後に指されたのは浴衣を着た老人で、白髪が穏やかな印象を与えていたが、他の人とは異なる強い気迫を持っていた。


「彼は天師の代表で『國月仙竜』(こくつきせんりゅう)さんです。」


國月仙竜・・・階級は天師レベル、力の近距離と遠距離型、天師の中で最年長、豊富な経験と冷静な判断力を兼ね備えた一番の実力者。


「これで全員の紹介は済んだかな」と言うと、後ろの入り口のドアが開き、そこから大東寺さんが現れた。

天師方々は透かさず一斉に礼をした。


「自己紹介は終わったみたいだね?」大東寺さんが言うと伊神さんが顔を上げる

「はい」大きな声で、大東寺さんに返答する。


「そうか...それでは、始めよう。

天師会議を。」


こうして、新たな戦いの幕が開けた。


今回は、大東寺さんの付き人の一人『月城さん』です。

https://kakuyomu.jp/users/zyoka/news/16818093075497007313

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る