第12話「魔災の力」
第十二話「魔災の力」
「魔災レベル...嘘だろう」と俺は思った。
これは人生で最も驚くべき瞬間かもしれない。
「嘘ではない。
実際にお前の目の前にいる」と、アトラスと名乗る怨霊は笑いながら応えた。
「健斗!大丈夫?」春奈が俺のもとへ駆け寄ると、アトラスが言った。
「おい、自分の心配はどうした?これから死ぬかもしれないんだぞ」と微笑みながら、アトラスは手を振る。
すると、遠くにあった鉄棒が浮かび上がり、アトラスの手元に引き寄せられた。
「何だ?あの鉄棒は」と俺が驚いて言うと、春奈が答えた。
「たぶん霊力で操っているのよ...自在にね」すると俺は春奈に言った。
「そういえば、春奈。
お前、魔災レベルの怨霊に会っても全然動揺していないな」と。
「え?ああ、まあね」と春奈は答えた。
「そうか...」と俺は不思議に思うと、アトラスが口を開く。
「話し合いは済んだか?そろそろ勝負を始めるぞ」と。
「わかった」と俺が答えると、アトラスは言う。
「じゃあ、行くぞ!」と言うと同時に、アトラスの姿が一瞬で消えた。
「え!」と俺が驚くと、真上から...
「ここだ...」と、いつの間にか俺の頭上にアトラスがいた。
「な!」と俺は叫び、アトラスは私の頭上で鉄棒を振り下ろした。
「健斗!」と春奈が叫ぶと同時に、俺は反射的に避けた。
そして、俺が先ほどいた場所は、さっきの攻撃で大きく凹んでいた。
「やるな...今のを避けるとは。
だが、次はそうはいかない」とアトラスが再び消えた。
「今度はどこに...」と俺は周囲を見渡すと...
「ここだ」と、いつの間にか俺の真後ろにアトラスがいた。
「しまった」と俺は思い、アトラスは鉄棒を横に振る構えを取った。
俺は心の中で考えた。
(ヤバイ!このままだと、骨や臓器が大変なことになる。
でも、避ける時間がない。
だったら、これしかない...)と、アトラスは鉄棒を横に力強く振った。
「おら!」と俺は叫び、空中でうずくまる体勢を取った。
そして、勢いのある鉄棒は俺の腕と足に当たり、俺は勢いよく吹き飛ばされ壁に激突した。
「やるな...腕と足で防いで、急所を守ったか。
だが、その戦法が続くかな」とアトラスは言った。
「痛てぇ!」と俺は両腕を見ると、当たった箇所が青く腫れていた。
そして、両腕を動かしてみると、すごく痛むがなんとか動かせた。
だが、次にあの攻撃を受ければ、俺の両腕がおかしな方向を向くことを心の中で実感した。
「それでは、再開しようか...」アトラスがそう言って戦いを挑もうとした瞬間、彼の近くで突然爆発が起こった。
「むう!」アトラスは超人的な反射神経を発揮し、一瞬で爆発を避けた。
目を向けると、春奈が傘の先端を彼に向けていた。
「これ以上、好き勝手にはさせないわ!」春奈は声を荒げて言った。
「何だ...今の攻撃は?」アトラスは問いかけると、春奈は再び傘の先端から何かを発射した。
アトラスがよく見ると、小さな青色の球体が大量に飛んでいた。
「なるほど...そういうことか...」アトラスは鉄棒を使い、青色の球体を一瞬で払いのけた。
「そんな...」春奈は驚いた表情を浮かべた。
そして、膝を地面につけてしまった。
その様子を見たアトラスが言った。
「もしかして...その球状のもの...それはお前のエネルギーで作ったものか?」春奈は反応しなかったが、内心は動揺していた。
春奈は「武の遠距離型」を使い、他とは異なり自身の体内エネルギーを使って戦う。
彼女はそのエネルギーを様々な形で放出することができる。
例えば、エネルギーを剣に変えたり、先ほどのようにエネルギー弾を作り、遠距離で爆発させたりする。
遠距離型とはいえ、近距離と遠距離の両方を使うことができる。
しかし、その代償として、通常の人よりも多くの体力を消費する。
春奈の体力は常人以上だが、長時間の戦いはできない。
「どうやら、図星のようだな」とアトラスは言った。
そして、アトラスは健斗の方をチラリと言う
「一対一で勝負しようと思っていたが...仕方がない。
二人同時に相手をするか...」そう言って、アトラスは超人的な速さで俺の前に現れ、閃光のような蹴りを俺の腹部に放った。
「ぐはっ!」俺は叫びながら後ろに吹き飛ばされた。
アトラスは次に、俺の真上から鉄棒を振り下ろそうとした。
「くっ!」俺は腰からナイフを抜き、振り下ろされる鉄棒をかろうじて防いだ。
「ほう、なかなかやるじゃないか」とアトラスはにやりと笑った。
「危ない!」春奈が叫びながら、傘の先端から青色のエネルギー弾をアトラスに向けて発射した。
「無駄だ!」アトラスは鉄棒を振り回し、春奈のエネルギー弾を打ち消した。
「今だ!」俺はナイフでアトラスにダメージを与えようとしたが...
「見え見えだよ...」アトラスは俺の位置を正確に察知し、再び閃光のような蹴りを放った。
「がはっ!」俺は再び吹き飛ばされた。
アトラスは瞬時に春奈の元へと近づき、鉄棒を振り下ろしたが、春奈は間一髪で避けた。
「ほう...よく避けたな」とアトラスが言うと同時に、彼の正面からエネルギー弾が発射された。
「またか...」アトラスは片手でエネルギー弾を払いのけたが、突然、春奈が彼の目の前から消えた。
「何だ?」アトラスが驚いたその時、後ろから声がした。
「ここよ!」上空を見ると、春奈がいた。
彼女の傘の先端からは青色の長い刃が伸びていた。
それは春奈がエネルギーで作り出した剣だった。
「受けてみなさい!」春奈はその剣を正確に振り下ろした。
(これでダメージを与えられるはず...)と思ったが...
「くだらない...」アトラスは動じることなく春奈の剣を肩に受けた。
しかし、剣は肩に刺さったものの、それ以上深く切り込むことはできなかった。
「か...硬い!」春奈は驚いた。
アトラスは春奈の傘を掴み、上に持ち上げた。
「わかったか...これが実力の差だ」と言いながら、春奈の傘を空高く投げた。
そして、降りてきた春奈に容赦なく回し蹴りを放った。
「うぐっ!」春奈は壁に激突し、苦痛の表情を浮かべた。
「春奈!」俺が叫ぶと、アトラスは言った。
「よそ見をしている場合か?」彼はいつの間にか私の目の前にいた。
俺はナイフで防ごうとしたが……
「遅い」アトラスは俺の腹に鉄棒を突き刺した。
「かは・・・!!」口から血を吹き出し、背後には壁があり逃げ場はなかった。
「どうした・・・早く逃げないと、このまま腹を射抜かれるぞ・・」アトラスは力を込め、鉄棒が俺の腹に食い込んでいった。
「ぐは・・・」俺は血を吐き出し、意識が朦朧となった。
「もうすぐか・・・」アトラスが言うと、俺は最後の力を振り絞って叫んだ。
「まだだ!」俺は靴のかかとで地面をたたき、靴の先端から小型のナイフを突き出し、アトラスの片足に突き刺した。
「が!!」アトラスは苦痛の表情を浮かべ、俺はその隙に後ろへ下がった。
「はあ……はあ……」息を整えていると、アトラスが口を開いた。
「なるほど・・・なかなかやるじゃないか・・そんな仕掛けもあったのか。」
彼は足に刺さったナイフを引き抜き、投げ捨てた。
傷口をさすると、傷がみるみる消えていった。
「霊力を使った傷の再生……」俺は呟いた。
「まあな・・・」アトラスは立ち上がり、自分の武器を探し、俺の足元にあることに気付いた。
(これで、流石に焦るか・・)俺は思った。
だが・・・
「武器を取られてしまった・・・まあ、いいか。
」アトラスは焦る様子もなく、次の瞬間、俺はまたしても血を吐き出した。
それは、彼の閃光のようなパンチだった。
「素でも強いんだからな」そのパンチは俺の急所を射抜いた。
俺は地面に両足をついた。
「はあ・・・はあ・・・」苦しんでいると、アトラスが言った。
「もう終わりか・・・面白くないな、しょうがない。
もう一人の方を先に殺るか・・」彼は鉄棒を掴み、春奈の方に向かった。
「や……やめろ・・・」俺は叫んだが、体が動かない。
春奈もエネルギーを使い果たし、動けなかった。
「やめた方がいいぞ、お前の急所もすでに破壊しておいたからな・・・」アトラスは春奈の前に立ち、鉄棒を振り上げた。
「やめろ!!」俺は叫んだ。
しかし、アトラスは容赦なく鉄棒を振った。
「ぐはっ!」春奈は勢いよく吹き飛ばされ、動かなくなった。
「春奈!!」俺は叫んだが、彼女は動かなかった。
「お前も、さらばだ・・・」アトラスは俺に向けて鉄棒を投げた。
避けようとしたが、体が動かなかった。
「くそ・・・くそ・・・」心の中で叫んだが、もう無理だと悟った。
「ここまでか・・・」諦めかけたその時、
「カキン!!」鉄棒が跳ね飛ばされた。
目の前を見ると、天峰さんがいた。
「あ・・・天峰さん」俺は小さな声でつぶやいた。
「誰だ・・・」アトラスは突然現れた男に視線を飛ばした。
「邪魔をするな!」彼は超スピードで鉄棒を掴み、天峰さんに襲い掛かった。
しかし、攻撃は空を切った。
天峰さんはいなかったからだ。
「何!?」アトラスが驚いたその時、彼の体が吹き飛んだ。
天峰さんがアトラスの腹に拳を食い込ませたのだ。
「佐藤君・・・大丈夫か?」天峰さんが笑顔で尋ね、俺の顔を覗き込んだ。
「酷い傷だな、大丈夫か?」俺は私の傷を見ながら、葉巻をふかしていた。
「天峰さん、すみません。」
俺は言った。
「いいんだ、『遠慮なく頼れ』って言っただろう?」天峰さんは立ち上がり、アトラスを睨んだ。
「ちょっとそこの君。
私の仲間に手を出して、代償を払ってもらうぞ」アトラスは立ち上がった。
「ああ・・・お前の体で・・な・・」
こうして、上師ランクの天峰さんと魔災レベルの怨霊アトラスの戦いが始まった。
・・・・つづく・・・
今回のイラストは魔災レベルにして暗殺の怨霊『アトラス』です。
https://kakuyomu.jp/users/zyoka/news/16818093074567682301
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます