恐怖の災い編
第11話「戦艦」
第十一話「戦艦」
「やばい、筋肉痛だ...」俺は先週の怨霊退治で体を酷使しすぎて、筋肉痛になってしまった。
「結局、先週は帳の人がスペーリを連れてきてくれて、なんとか除霊できたけど、まさか筋肉痛になるとは...いてて!」俺はスペーリの方向を見ると、相変わらず寝ていた。
「はあ...スペーリの奴、呑気だな」と俺は呆れた声で言った。
その時、またインターフォンが鳴った。
「誰だ?また天馬か?」と言いながらドアを開けると、そこには黒色の袴と羽織を着た、白髪の老人が立っていた。
「あなたが佐藤かい?」老人は俺に尋ねた。
「はい...」と答えると、老人は意外にも若々しい雰囲気で笑い出した。
「カハハ!やっと会えたの!久しぶりじゃ...」その時、俺の頭には「?」マークが浮かんだ。
「え?どこかでお会いしましたか?」と俺が尋ねると、老人は答えた。
「ああ、そうだな...まあ、とりあえずここではない所で話そう。
一緒に来てくれるか?」老人は後ろを向き歩き出した。
俺は慌てて老人を止めた。
「待ってください。
どこに行くんですか?行き先を教えない限り、僕は行きませんよ」と言いながら、俺は老人の背中を軽く叩いた。
すると次の瞬間、右から誰かが腕を強く掴んだ。
壁際に立っていた全身黒コートの若い男だった。
その男の気配が全く感じられなかったことや腰に差した刀から、ただ者ではないことがすぐにわかった。
「一体...あなたは?」と俺が尋ねると、老人が気付いたように言った。
「こらロエル、やめろ」と老人は男に命じた。
ロエルと呼ばれた男は無言で俺の腕から手を離した。
「すみません。
うちのロエルが」と老人は謝り、「あなたは一体誰ですか?それにロエルって人は...」と俺が再び尋ねると、老人が答える準備をした。
「ああ…そういえば、自己紹介がまだだったな。
儂は『大東寺・龍梧』(だいとうじ・りゅうご)という者だ」と老人が言った瞬間、俺の頭には「!」マークが浮かんだ。
「え? だ、大東寺さんですか?」と俺が驚いてもう一度聞くと、老人はあっさりと答えた。
「そうだよ、まあとりあえず一緒に来てもらおうか」俺は呆然としてそのまま老人の後ろをついて行った。
すると外に黒い車があり、それに乗って向かった。
「あ、あの、本当に大東寺さんでよろしいんですか?」と俺はもう一度聞いた。
「だからそうだよ、なぜそんなに驚いているんだ?」と老人は言った。
俺は確信を得て興奮気味に言った。
「だ、大東寺さんって、我々霊媒師のサポーターであり、「帳」という組織を作った方ですよね。
その帳の中ではトップの座に君臨している方ですよね?」と言うと、老人は答えた。
「そうだな、まあ一応…」
「そうじゃないですよ、どうしてそんなあなたがこんな僕のところに…」と言うと、大東寺さんは言った。
「いや、何…お前さんのおじいさんとは古くからの友達でね、よく慕ってもらっていたよ…あ、もちろんお前さんのお父さんとも古い仲だよ」
「父さんと…」俺は父さんのことを聞くと非常に寂しくなった。
「おっと悪かったな、ついあの頃のことを話してしまって」
「いえ…」そして俺は車に乗り、大東寺さんと一緒に来たカフェだった。
「ここですか…」
「ああ」と答えると、入り口に一人の男性が立っていた。
男性は茶色のスーツを着こなし、整えられた髪型とたれ目が冷静な印象を与えており、タバコをくゆらせていた。
しかし、その男性から漂う異様なオーラに、俺は思わず足が竦んでしまった。
「月城…彼女との話はどうだった?」その男性は月城という名前だった。
「親父…ご安心ください。
大体の話はつけました」と月城さんは冷静な口調で淡々と答えた。
そして、俺の方を鋭い眼差しで見た。
「親父…この人が…」
「ああ、佐藤健斗くんだ」と言いながら、こちらに歩み寄り手を差し伸べてきた。
「月城です。
どうぞよろしく」と言って握手を求めてきた。
「はい…よろしくお願いします」と俺は月城さんと握手を交わした。
その後、大東寺さんが言った。
「さて、とりあえず中に入ろうか」俺たちはカフェに入った。
中には一人の女性が座っており、俺に気付くと頭に手をやった。
俺も思わずため息をついてしまった。
「またあなたと組むのね…健斗」
「また会ったな、春奈」とその女性の正体は春奈だった。
「さて、自己紹介は済んだかな?」と大東寺さんが言いました。
「はい…」と、俺はやる気のない声で答えた。
すると、大東寺さんは席に着き、話を始めます。
「実はね、二人にお願いしたい案件があるんじゃよ」と大東寺さんは淡々と話し始めました。
「M市の海で度々アレが目撃されているんじゃよ」
「目撃?」と俺は首を傾げた。
すると、大東寺さんは言う。
「実はそこの海で漁師をしている人たちが見たというのじゃよ。
海に浮かぶ戦艦を…」
「戦艦ですか!」と、その「戦艦」という言葉に俺と春奈は驚きを隠しきれなかった。
「二人も写真かなにかで見たことがあるじゃろ?戦争時代に使用されていた海に浮かぶ戦艦を…。」
あれと同じような船が、今の時代になっても海の上をさまよっているんじゃ。
これは、怨霊の仕業としか考えられん。
「そうですか…。
では、俺たちの任務はその事件の解決ですか?」
「ああ、頼めるかな?」
「それは構いませんが…」と俺は言葉を濁しましたが、春奈が代わりに答えてくれた。
「なぜそんな案件を大東寺さんご自身で直接伝えに来たのですか?普通、そういうのは帳の人の仕事ではありませんか?」
「儂が直接伝えに来たら何か問題でも?」と大東寺さんが言うと、彼の後ろに立っていた「月城」さんと「ロエル」さんが俺たちを睨んだ。
俺は少し怖じ気づいたが、春奈は冷静に答えた。
「いえ、何も問題はありません」
「そうか…」と大東寺さんは笑顔で答えた。
「では、行きましょうか、健斗。」
「ああ...」と答え、俺と春奈はカフェを出た。
月城さんが俺たちがカフェを出るのを見て、大東寺さんに言った。
「親父...いいんですか?あの重要なことを言わなくて...」
大東寺さんは答えた。
「そんなことを言ったら、断るかもしれないからな...」
「ですが...重要なことですよ。
そのために親父がわざわざ出向いたんですよね?」
「まあな...だが、春奈君には言っておくれているのだろう?それなら心配はいらんわ。」
「ですけど、不安です...たとえ優秀だろうと階級は中師。
成功するかどうか...」
「大丈夫だ。
あの二人は優秀な人材だ...それに、あの男も参加してくれる。
何の心配もいらん。」
「できますかね...その謎の戦艦の調査ともう一つの任務。」
月城は口を開いた。
「『魔災レベル除霊』なんて...」
「大丈夫だ...彼らとあの男を信用しよう...」
「はい...」その頃、春奈と俺は帳の人の車で待ち合わせしている男に会うためにその場所に向かっていた。
「春奈、お前...やけに大東寺さんの頼みを素直に受け入れたな。」
「まあね...だって帳のトップだから。
それは霊皇ランクの人を相手にしているのと同じことよ...それは、言うことを聞かなきゃ。」
春奈は答えた。
俺が言った。
「お前でも...人の言うことを聞くことがあるんだな。」
春奈は焦って答えた。
「うるさいわね。
当然の敬意ってやつよ...」
春奈は慌てて話題を変えた。
「それより健斗、あなたは金猷山さんに会ったそうね」
「ああ」そういえば、金融山さんは春奈と血の繋がりはないが、代わりの父親として育てたことを思い出した。
「金猷山さんは元気だった?」
「ああ、相変わらずだったよ。」
「そう...」春奈は少しホッとしたように微笑んだ。
その後、俺たちはある男性との待ち合わせで漁港の近くに来ていた。
「本当にここでいいの?春奈...」俺は少し心配して春奈に尋ねた。
「ええ」すると、背後から声がした。
「すまん、待たせて悪かった」振り返ると、緑のコートを肩に羽織り、茶色の整った髪を持つ男性が葉巻をくわえながら近づいてきた。
その男性は笑顔で言った。
「タクシーがなかなか捕まらなくてね。」
(この人が俺たちの助っ人か?)と少し頼りなさそうな雰囲気を感じながら俺は思った。
すると春奈が紹介した。
「私は春奈です。
こちらは佐藤さんです。
お会いできて光栄です」
「春奈ちゃんか、可愛らしいね。
佐藤くんもなかなかだね。
これは頼もしい」と男性は明るく話した。
私は少し呆れた声を出してしまった。
「どうも、天峰桐生です」とその男性も自己紹介した。
その瞬間、俺は驚きを隠せなかった。
春奈も誰が来るか知らされておらず、名前を聞いて少し驚いた様子だった。
「天峰さんって、あの...」
「あのって?」本人は首を傾げながら聞いた。
すると春奈が言い出した。
「天峰先輩は上師の最上位ランクに君臨し、さらに天師ランク確実と噂されていますよね。」
「ああ、そういえばそんな噂もあったな」と天峰さんは笑って答えた。
「でも私は階級で人を選別するのは好きではなくてな。
大切なのは人を大切に思いやる心。
だから敬語も不要。
私も軽い感じで声をかけるから何か出来ないことがあれば遠慮なく頼ってくれ」と天峰さんは笑顔で答えた。
俺にはこんな明るい人が天師ランク候補であることが信じられなかった。
「それでは、早速行きましょうか」と春奈が言いました。
「ああ、そうだな...」その後、三人は帳の人が運転するボートに乗り、勾玉の力を借りてその噂の戦艦のところまで向かった。
その道中で、天峰さんが声をかけてきた。
「そういえば佐藤、お前の霊力はどのくらいなんだ?」天峰さんが尋ねました。
「霊力ですか…」霊力とは、その名の通り霊の力のこと。
一般的には霊力は怨霊だけが使えると思われがちですが、私たち人間もこの世に生まれた瞬間から霊力を持っている人も少なくない。
霊力を使えば、様々な方法で戦うことができる。
例えば私と天馬は武器に霊力を込めて戦う「武の近距離型」と呼ばれる技を使う。
春奈は遠距離武器に霊力を込めて戦う「武の遠距離型」。
金猷山さんなどは武器を使わず、直接素手に霊力を込めて戦う「力の近距離型」という技を持っている。
このように霊力を使って俺たち霊媒師は昔から怨霊を除霊してきました。
「なるほどな、健斗は武の方か。」
「はい、天峰さんもですか?」
「私もだ。
お前と同じ武の近距離型だ」そう言って俺は続けた。
「実は長年と言っては何ですが…結構多くの怨霊を除霊してきました。
でも、その度に『自分は力不足だ』と感じてしまいます。
そのせいで多くの優秀な人たちに迷惑をかけてしまい、それが苦しいんです」俺は言った。
「そうか…」天峰さんは考え込むように言いった。
「だがな、それは良いことかもしれないぞ」
「え?」意外な答えに俺は驚いた。
「人間というものは苦しみがあってこそ、それを乗り越えた時初めて強くなる生き物だ。
苦しみがある分だけ自分を強くすることができると考えれば良い。
確かに最初は辛いかもしれないが、生きている時間に比例して苦しみもある。
だがその分、喜びも比例して存在する。
その喜びは苦しみを乗り越えた後のものだからな。
根っから優秀な奴なんて宝くじに当たるよりも低い確率だ。
みんなそれぞれ苦しみを乗り越えてきたんだよ。
力は与えられるものではなく、自分で作り出すものだからな。
お前は力不足ではなく、まだまだ頑張れる方だ」
「天峰さん…」
「おっと泣くなよ。
かっこつけて言ったみたいで恥ずかしくなるからな。
それに、お前と春奈ちゃんはこれからもっと苦しむことになる。
これくらいで泣いていたら、これから先やっていけないぞ」と天峰さんは葉巻を吸いながら笑って言った。
「はい…」
その後、しばらくすると勾玉に反応があった。
「この近くのようね」と春奈が言った。
「ああ」と俺は答える。
「よし、じゃあ行くか」と天峰さんが言った。
そして私たちは反応のある方向へ向かった。
するとそこには黒と赤の色が施された巨大な戦艦が海面に浮かんでいた。
その大きさは圧巻で、まるで海に浮かぶ要塞のようだった。
「これは…」私は思わず息をのんだ。
すると天峰さんは言った。
「これが例の戦艦か…噂には聞いていたが、これほどとはな…」
その後、私たちは戦艦の中に入り調査を開始した。
「私は右を行く。
佐藤達は左を頼む」と天峰さんは指示し、俺たちは二手に分かれた。
その後、俺と春奈は左側をくまなく探した。
「しかし、ここは広いな」と俺はつぶやいた。
「そうね、こんなに広いところだから、怨霊が一体や二体出てきてもおかしくないわね」と春奈が言った。
私たちはしばらく探索を続けたが、結局何も見つからなかった。
「本当に怨霊なんているのかな?」
「さあ、どうでしょうね」と春奈が答えた。
そして、俺が近くのドアに寄りかかったとき、ドアが開いて俺はそのままドアの先にある階段から転げ落ちた。
「痛っ」と俺が頭を押さえながら立ち上がった。
すると、階段の上から春奈の声が聞こえた。
「健斗、大丈夫?」
「まあ、一応ね」と俺が答えて周りを見渡した。
すると・・・
「何だこれは?」俺の背後に大型の機械がそびえ立っていた。
その中央には青白く光る球体があった。
「これって、もしかして・・・」俺が言いかけると
「それは霊魂じゃない?大きいわね」と春奈が言った。
見ると、いつの間にか春奈も降りてきていた。
「そうだよな。
でも、何でここに?」と俺が言いながら霊魂に近づいたその瞬間・・・
「健斗!避けて!」春奈の声がした。
振り向こうとした時、目の前を何か黒いものが横切った。
「うわ!」俺は驚いて尻もちをついてしまった。
そして、その黒いものは左にある船の鉄板に激突した。
見てみると、その黒い物体は黒い鉄棒だった。
その鉄棒は驚くほど頑丈な戦艦の鉄板を凹ませてしまった。
「これは一体?」と俺が言うと、鉄棒が飛んできた方向から声が聞こえてきた。
「避けられたか。
上手く投げたつもりだったんだけどな」と黒ズボンに黒帽子を深々と被った男が言った。
そして、その男から放つオーラは半端ではなかった。
「一体、君は?」と俺が尋ねると、その男は答えた。
「自分の名前はアトラス。
魔災レベルだ」と。
突如現れた魔災レベルの男。
そして、想像を絶する戦いが始まろうとしている。
つづくっっ!!・・・・・・・・・・・・・
今回のイラストは帳のトップの『大東寺さん』です。
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