第10話「怨霊を育てる者」

第十話「怨霊を育てる者」


「ここは・・・一体・・」見ると周りにはアヒルの人形や哺乳瓶など赤ん坊が使うとみられるものが散乱していた。だが、普通と変わっているところがある。どれもこれもサイズが大きいのだ


「なあ、天馬・・・なんなんだここは?」


「多分、さっきのベビーカーの怨霊が作り出した部屋なんだと思う」


「なるほどな・・・てことはそいつを倒せばこの事件は解決するということか」健斗は言うと天馬は


「いや・・・そうでもないかも」天馬はチラリっと金猷山さんを見る


「え?」見ると、金猷山さんが真剣に周りの物に目を向けていた。そして口を開く


「分かるか天馬・・・ベビーカーの怨霊のほかにもう一体いる」


「え?それって・・・どういう・・」すると、金猷山さんは言う


「あの人形には確かに怨霊の怨念がたっぷりと染み込んでいた。だが、あのベビーカーの怨霊に感じた怨念の量を見る限りあれは、人災レベルの怨霊・・・あそこまでの怨念は持っているとは思えん」そして、金猷山さんが言いたいことが分かり健斗は言う


「だから、いると思われるんですか・・・鬼災レベルの怨霊がいるって」


「ああ、そうだ」すると、天馬は言う


「でも、なんで鬼災レベルの怨霊がベビーカーの怨霊に力を貸しているんですか?」すると金猷山さんは答える


「それは分からん・・・ただ、この空間は怨念であふれている。もしかしたら・・・」とその時だった奥から赤ん坊の泣き声が聞こえてきたそして奥から赤ん坊をあやす声が聞こえてくる


「よしよし・・・泣かないでね~」見ると、周りが開けた広い場所に先ほどのベビーカーの怨霊がいた


「何をしているんでしょうか?」健斗は言う


「分かんねーけど、様子を見ておこう」そして、3人は隅っこに隠れた


「ほらほら、ご飯の時間ですよ~。早くおいで~」すると、いきなり地鳴りがしたと思ったら暗闇の奥から怨霊の赤ん坊が出てきた。しかし、その赤ん坊の大きさは規格外だった。


(で・・でかすぎるだろ!!)健斗もとっさにそう思ってしまった。だがそう思うのも無理もないほど大きかった。その赤ん坊白目で髪の毛はなく、四つん這いだったがそれでも50メートルは超えていた


「さあ、今日もたくさん大きくなりましょうね~」すると、横にあったベビーカーから赤ん坊の人形を一つ無造作に掴み人形の顔と赤ん坊の怨霊の顔を向かい合わせる。すると、人形の口から白い煙が出た。そして、その白い煙を赤ん坊の怨霊は吸い込んだ


「おいしいですか?今夜もたくさんの夢を吸い込みましょうね~」


(たくさんの夢?)俺は不思議に思う。なぜなら、怨霊は夢なんて見るはずがないからだ。すると、天馬が動き出した


「そこまでだ」


すると、赤ん坊の怨霊は天馬の方に顔を向ける


「あら?あなた・・・見ない顔ね」ベビーカーの怨霊は言う


「ああ、そうだな。俺はあんたに用があって来たんだよ」すると、ベビーカーの怨霊は答える


「私に?」そして、天馬は言う


「そうだ。お前だよ」そして、金猷山さんが言う


「その人形から手を離せ!!」しかし、ベビーカーの怨霊はそれを聞かずに言う


「嫌よ~これはこの子が夢を吸い込むために必要な物だもの~」すると天馬は長どすを抜きベビーカーに乗っている人形をまとめて斬った


「な!何するのよ!!」ベビーカーの怨霊は叫ぶ


「それは、こっちのセリフだ!お前は自分がやっていることが分かっているのか!?」するとベビーカーの怨霊は言う


「分かってるわよ!!夢を吸い込むことがこの子のためなのよ!!」


「なんで、そこまでして・・・」すると、健斗の声が聞こえる


「天馬!逃げろ!」


「え!」すると、次の瞬間早くそして強い平手打ちが来て天馬は右方向に思いっきり飛ぶ。やったのはベビーカーの怨霊ではなく赤ん坊の方だった。


「天馬!!」俺は叫ぶ。すると、天馬はボロボロになりながらも起き上がった


「大丈夫だ・・・それより、あいつをどうにかしないと」天馬は赤ん坊の怨霊を見る


「ちくしょう・・・」すると、ベビーカーの怨霊は赤ん坊に言う


「こうなったら・・・坊や私を吸い込みなさい」すると、赤ん坊はベビーカーの怨霊を飲み込む


「な!!」俺や天馬は驚く。そして次の瞬間だった。赤ん坊の体がさらに成長した


「ま・・・まじかよ」俺は驚く。すると、金猷山さんがが言う


「健斗!天馬!この近くにあの病院がある。急いで病院の方に走ってくれや!そしてこのことを院長に伝えて避難させてもらってくれ」


「金猷山さんは・・・」俺は言う


「私はここでこやつを食い止める。その間に行きなはれ!」すると、健斗は言う


「そ・・そんな、無理ですよ!相手はそんなにばかデカイんですよ!いくら、金猷山さんでも・・・」すると金猷山さんは言う


「いいから行けや!!早く!!」健斗は言い返すことができなかった。すると、金猷山さんの方に赤ん坊の怨霊が平手打ちをしてくる


「金猷山さん!危な・・・」すると、次の瞬間金猷山さんも力士特有の突きを出すと体格差では金猷山さんが負けているのに赤ん坊の怨霊の方が後ろに後退した


「え?」俺は驚く。すると、金猷山さんは言う


「さあ、早く行けや・・・ここは俺に任せてな」


「金猷山さん・・・」俺たちは後ろを向いて病院の方へと走って行く。その後、病院へ着いた俺と天馬は急いで院長を探し出し事情を説明した。


「そうなんですか・・・」院長は少し驚いた表情をする


「はい、なので急いで避難を・・・」


「分かりました」すると、次の瞬間地響きが聞こえ外を見ると向こうで煙が上がっていた。そして、院長が外を見て言う


「あれは・・・」


「え?」俺と天馬は外を見るとそこには赤ん坊の怨霊と戦っている金猷山さんがいた。その姿を見て健斗は言う


「天馬・・・俺らも行くぞ!!」すると、天馬は健斗に言う


「ああ」そして、2人は病院を飛び出して行った。


「はあ・・・はあ・・・」金猷山さんは息切れをしていた。それもそのはず赤ん坊の怨霊は先ほどよりさらに大きくなり今では50メートルを超えているのだから無理もないだろうしかし、そんな状況でも金猷山さんの目は死んでいなかった。


「そろそろ、本気を出すか」すると、金猷山さんは浴衣を上半身だけ脱いだ。そして、相撲の構えを取る


。すると、赤ん坊の怨霊は金猷山さんに向けて平手打ちをしてくるがそれを金猷山さんは両手で受け止める


「ふん!」そして、そのまま赤ん坊の怨霊を持ち上げる


「うおりゃ!!」と持ち上げると思いっきり地面に叩きつけた。その衝撃で地面が揺れる。そして、赤ん坊の怨霊は起き上がると金猷山さんに平手打ちをしてくる。すると、金猷山さんはそれを受け止めてまた投げ飛ばす


「うおりゃ!!」


しかし、今度は赤ん坊の怨霊も負けじと起き上がりそのまま突進してきた。その衝撃で地面が揺れ近くにいた健斗たちは思わずよろけてしまう


「うわ!」俺は言う。


「大丈夫かよ、健斗」


天馬は俺に聞く。そして、俺は答える


「ああ・・・なんとかな」すると、赤ん坊の怨霊が突進してくる金猷山さんはそれを受け止めて投げ飛ばす。しかし、今度は赤ん坊の怨霊が体当たりをしてきて金猷山さんは吹き飛ばされる


「ぐわ!!」と飛ばされる金猷山さんだがすぐに立ち上がり再び構えを取る。すると、赤ん坊の怨霊はまた突進してきた。その突進を受け止めると今度はそのまま持ち上げた


「うおりゃあ!」と持ち上げると赤ん坊の怨霊は空中で手足をバタバタさせる。そして、金猷山さんは思い切り地面に叩きつけた


「はあ・・・はあ・・・」息を切らしながら赤ん坊の怨霊を見る金猷山さんすると、赤ん坊の怨霊は立ち上がりまた突進してきた。それを受け止めるが今度は吹き飛ばされるのではなくそのまま踏ん張っていた


「ぐぬぬぬ!」俺はその光景を見て驚く


(す・・・すげえ)すると、天馬が言う


「さすが、あれが金猷山さんだ」すると、赤ん坊の怨霊は金猷山さんを持ち上げる。そして、そのまま地面に叩きつけた


「ぐわ!!」と叩きつけられた衝撃で何度も地面が揺れる。そして、赤ん坊の怨霊はまた突進してきた。それを受け止めるが今度は吹き飛ばされずしっかりと受け止めていた。


「うおりゃあ!」と持ち上げると思いっきり地面に叩きつける


「ぐわ!!」しかし、それでも赤ん坊の怨霊は起き上がり突進してくる。その攻撃を何度も繰り返していくうちに金猷山さんの体もボロボロになっていく「はあ・・・はあ・・・」金猷山さんは息を切らしている。すると、赤ん坊の怨霊は突進してくるそしてついに金猷山さんを吹き飛ばした


「ぐわ!!」と吹き飛ばされる金猷山さん。すると、赤ん坊の怨霊は向きを変え歩き出したその方向はなんと・・・病院がある方向だった「や・・・やばい!!」俺は慌てて赤ん坊の怨霊を止めようと走り出す。しかし、天馬が俺を止める


「離せよ!天馬!」すると、天馬は俺に言う


「健斗、気持ちは分かるけどここは金猷山さんに任せるしかない」そんな俺たちが話している間に赤ん坊の怨霊の方へ颯爽と走っていく者がいた。金猷山さんだ。そして、そのまま赤ん坊の怨霊の右腕に体当たりして叫ぶ


「病院にはたくさんの子供らがおるんや、行かせてたまるか!!!」


すると、赤ん坊の怨霊は金猷山さんに向かって平手打ちをしてくる。しかし、それを受け止めると赤ん坊の怨霊を持ち上げる


「うおりゃあ!!」そして、思い切り地面に叩きつける


「ぐわ!!」そして、何度も繰り返し叩きつけていく。しかし、それでも赤ん坊の怨霊は立ち上がり突進してきた。それを受け止めるが今度は吹き飛ばされずしっかりと受け止めていた。


「ぐぬぬぬ!」そして、赤ん坊の怨霊は金猷山さんを持ち上げる。そして、そのまま地面に叩きつけた。そして、金猷山さんは俺たちに向かって言う


「佐藤、天馬!お前たちも一緒にやるんや!全員で協力せんば倒せんばい!」「は・・・はい!」俺は返事をする。すると、天馬が言う


「分かりました」


そして、俺たちは金猷山さんが赤ん坊の怨霊を投げ飛ばしたときに出る隙を叩くことにした


「さあ、来い」金猷山さんは赤ん坊の怨霊に向かって力士の戦闘の構えを取る。赤ん坊の怨霊は突進してくる。そして、金猷山さんの体にぶつかる。しかし、金猷山さんはそれを受け止めて持ち上げる


「ぐわ!」と持ち上げられると今度は地面に叩きつけた


「ぐぬぬ」すると、赤ん坊の怨霊は立ち上がり再び突進してきた。それを受け止めるが今回は吹き飛ばされずしっかりと受け止めた。そして、そのまま投げ飛ばすとまた空中で手足をバタバタさせる


「うおりゃあ!!」再び地面に叩きつける。すると、赤ん坊の怨霊は横になる


「佐藤、天馬!今や攻撃や!!」と金猷山さんが言う。俺たちは赤ん坊の怨霊に向かって走り出す


「うおりゃあ!!」俺と天馬は同時に赤ん坊の怨霊に武器でダメージを与える。すると、赤ん坊の怨霊は起き上がり突進してくる


「ぐわ!」俺たちは吹き飛ばされるがなんとか立ち上がる


「もう一度だ!!」俺と天馬は再び武器で攻撃するしかし、今度は金猷山さんが俺たちを庇って攻撃を受けてしまった。そして、そのまま地面に叩きつけられる


「ぐわ!!」そして、再び立ち上がり赤ん坊の怨霊に向かっていくしかし・・・赤ん坊の怨霊の攻撃を受けてまた吹き飛ばされてしまう


「く・・・くそ」俺は言う。すると、金猷山さんは立ち上がって言う


「諦めんなや!!佐藤!私らならいける!一緒に頑張るんや!!!」


「はい!」俺と天馬は再び武器で攻撃する。しかし、赤ん坊の怨霊は俺たちを吹き飛ばしてしまう


「ぐわ!!」そして、金猷山さんが吹き飛ばされた隙に赤ん坊の怨霊が突進してきた。俺はその攻撃を受ける


「ぐわ!!」俺たちは再び吹き飛ばされる。すると、金猷山さんは立ち上がる


「諦めるなや!子供たちを守るためにも・・一緒にがんばるんや!!!」そして、俺と天馬に向かって言う


「佐藤、天馬!そろそろ終わらすで、この一発にすべてをこめるんや!!!」


「はい!」俺と天馬は返事をする。そして、俺たちは赤ん坊の怨霊に向かって走る。そして、金猷山さんは言う


「うおりゃあ!!」と突進する赤ん坊の怨霊を受け止めると持ち上げる


「ぐぬぬ」そして、そのまま地面に叩きつける


「ぐわ!!」


「今や!!!決めろ!!!」


金猷山さんは叫ぶ。そして、俺と天馬は武器で赤ん坊の怨霊に攻撃する


「うおりゃあ!!」と俺と天馬は武器で赤ん坊の怨霊を斬った


「ぐわああああ!!!」すると、赤ん坊の怨霊は今までの衝撃に遂に耐えられなくなったのか口から霊魂を出す


「今や!佐藤!斬るんや!!!」


と金猷山さんが言う。俺はその赤ん坊の霊魂を斬った


「ぐわあああ!!」すると、赤ん坊の怨霊は悲鳴を上げながらぐったりと倒れた


「はあ・・・はあ・・・」金猷山さんは息切れをしていた。すると、天馬が赤ん坊の怨霊に言う


「もう、子供たちを襲うなよ」と赤ん坊の怨霊は倒れたまま動かなくなった。一方その頃、俺たちから逃げようとしていた者がいた。


「く・・・くそう。あと少しだったのにこうなったら逃げるしかないわね」それは、赤ん坊の怨霊に取り込まれたベビーカーの怨霊だった。そこへ金猷山さんはそいつの前に出た


「な!!」


「あとは、お前だけやな」


「く・・・くそ」ベビーカーの怨霊は逃げようとするが金猷山さんはそいつを掴み投げ飛ばす「ぐわ!!」そして、金猷山さんはそいつを何度も地面に叩きつける。すると、ベビーカーの怨霊はボロボロになる


「これでよし、頑張ったな天馬、佐藤」「はい」と俺と天馬は返事をした。すると、金猷山さんは言う


「よし!病院に戻るで!」そして、俺たちは病院へと戻った。


その後、知ったことだがこの赤ん坊の怨霊の正体は戦時中でまともに食べるものもない貧困の子供たちが苦しさで生み出した怨霊らしい。何とも恐ろしいものだ


貧困の怨霊『ビックベイビー』鬼災レベル:除霊完了____。

母親の怨霊『ドールマム』人災レベル:除霊完了____。


・・・・・・・・・・・・・つづく


母親の怨霊『ドールマム』のAIイラストです。

https://kakuyomu.jp/users/zyoka/news/16818093073700679366


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