【第5講】〜願いと愛と1〜
璃美はどこに向かっていきたいんだろうと悩んでいる。
緋樹の部屋に着くと、なんとなく気まずくて。
いつも通りの反応ができないことに悩んでいた。
トントンとドアをノックすると緋樹がガチャリと音を立ててドアを開けた。
「なんとなく察しはつくけど何があった」
開けた時、璃美は緋樹に言った。
「記憶を作り替えるってできるの?」
「……一旦、中入ろう」
保健室にいたであろう璃美は着のみ着のままだ。単刀直入にいう璃美はあまりにも困惑した様子だった。
部屋の中に促すと、少しためらった様子で入ってくる。
「で、実際のところどうなの」
「単刀直入だなあ。
できるよ。
でも、王族というより赤城家の特徴だけどな」
「どういうこと?」
「記憶の改竄、相手の心情読み取る。
それに特化しているのが、赤城家の特徴だ
あいつがどこまで言っているか知らないが」
ソファに腰掛ける緋樹はため息をつく。
「あいつは5代前の王の妾の子、忌み子だ
今もあの見た目をしているのは、王族が人間と結婚しないといけないのは知っているだろうけど、王と吸血鬼の間にできた子供だからだ」
「そんなのどうして逃げているの」
「これは、俺が悪い」
そう言うと深刻そうに緋樹が顔を上げた。璃美は困惑した様子で覚悟を決めた様子の緋樹に問いかけた。
「どういうこと?」
「俺が逃したんだ」
「逃した?」
「そう、逃した。
あいつはずっと、一人特別室に閉じ込められていた。
ガキの頃の俺は可哀想に思った。
だから大ごとになるのも分かった上で逃した。
大体50年前の話だ」
「記憶の改竄をされていたと言う認識でいい?」
「そうだろう。
俺の知るあいつは不用意に人を襲うタイプじゃなかったから」
考えこむ緋樹に璃美は声を掛ける。
「そうだとしたら私は、嘘の記憶で恨んでいたことになるのだけど
本人に聞いたほうが早いのかな」
「そうなる」
「わかった」
璃美が立ち上がる。
自分が行った行為でこうなった現実に緋樹は諦めがあるが、どうにも許せない気持ちがあった。
「ああ、これが--」
緋樹は思う。
璃美の後ろ姿と共に吐かれるのは、ただの独り言だ。
「恋か」
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