成長
蓮)ただいま。
俺は真っ暗な渋谷を能力で散歩して帰ってきた。ちなみに俺達の拠点の場所は渋谷区の27階建てのタワマンだ。前も言ったが景色は東京全体を見渡せてとてもいい。
鈴仙)おかえり。全部終わってるわよ。でも一部ジャムりやすい(故障しやすい)物もあるから気をつけてね。まぁ、銃は使わないと思うけど一応持っておいて。
鈴仙は俺にグロック17を渡した。少し嫌な顔をしたが鈴仙がこの銃にしたのには理由があるだろう。それはデザートイーグルでは大きすぎる点だ。隠し持つ武器には向いていない。かと言ってデリンジャー(小口径の上下二連の連装銃)では威力が低く弾数が少ない。そう考えると性能的にグロックが無難だろう。
蓮)ありがとう。まぁ、ナイフと格闘しか使う気はないけど相手が不正とかしてきた時の場合は撃つから安心して。
鈴仙)前の蓮は銃すらまともに撃てなかったのに、ここ2、3日教えただけでここまで動けるとはね。才能ってすごいわね。
蓮)昔から戦闘センスはあったからね。覚えるのは早いんじゃないかな?
鈴仙)そうかもね。ん...そろそろ時間だから準備しましょう。
俺と鈴仙は服を戦闘用のレザースーツに着替えた。ちなみにこのレザースーツは鈴仙の物だ。着心地はイマイチだが、動きやすい。俺はレザースーツの上からジャケットを羽織ると俺は雪乃を呼んだ。
雪乃)何?こんな時間に?
蓮)こんな深夜ですまないが、今からを取引の物として雪乃を争いに連れていかなきゃいけないんだ。ごめんな。
俺は雪乃に不安な思いにさせてしまうことに対して申し訳なく思った。だが雪乃は笑顔でそんな事ないと否定した。
雪乃)人質のはずなのにこんな丁寧にしてくれて、脅さず私の自由を尊重してくれたし。短い時間だったけど蓮のことを聞いて好きになっちゃった。
蓮)そう言ってくれると助かるよ...鈴仙もいつもありがとう。今回も鈴仙の力を借りることになっちゃって...
鈴仙)そんな事ないわよ。私はほとんど何もしないから。それじゃあ準備も出来たし、行きましょうか。
俺と鈴仙と雪乃はエレベーターに乗った。数秒するエレベーターが止まり1人の少年が乗ってきた。俺はその少年に優しい口調で話しかけた。
蓮)やぁ、少年?こんな遅い時間に1人で大丈夫かい?近くに用事があるなら一緒について行けるけど?
少年)・・・別にいい。食料を取りに行くだけだから...
蓮)そうか?気をつけててもモンスターに会ったら戦おうなんて考えるなよ、すぐに物陰に隠れること。いいな?
少年)...
エレベーターが一階に着くと少年は一目散に走って行ってしまった。
蓮)あの子、モンスターに見つからないといいんだがな...
鈴仙)時間があればまた後で様子を見てみましょう。私達は行かないと。
蓮)あぁ、そうだな。
鈴仙はそこら辺に止めてある車を拝借した。瓦礫などがあるためオフロードに近い車を選んだらしい。俺は雪乃と一緒に後ろに乗った。俺はバイクくらいなら感覚で運転できるが流石に車の運転は触った事もないので鈴仙に任せた。数10分するとスカイツリーに着いた。そこには黒塗りの車が5台ほど止まっており荒廃したビルやスカイツリーの周りはただならぬ雰囲気を醸し出していた。ちなみにスカイツリーの電波塔は曲がり、窓ガラスは全て割れている状態だった。
蓮)ふぅ、とうとう着いたか...ちょっと緊張するな。
鈴仙)最初タイマンって聞いた時は無理だと思ったけど今の蓮の立ち回りなら十分戦える。やってみせさない!
雪乃)うん!蓮ならできるよ!!
蓮)ありがとな2人とも。にしても、人質に応援される俺って終わってるな...
鈴仙)なーに言ってんのよ。
俺たちは他愛のない会話を交わしながら人だかりのある場所に向かった。瓦礫やガラスが散乱していて歩く度に音が聞こえる。そして、パラボナアンテナのような機械の前に25人ほどの男がいた。その男は黒髪で黒い上着を羽織り、まだまだ若々しい未熟者と言う雰囲気を漂わせているが熱血というオーラを出している。おそらくこいつが白羽風道だろう。
風道)おう、来たか。御託は無しの殺し合いだ。覚悟しろよ、俺の選んだ2人はアメリカの軍隊のエリートにも所属していたやつだからな、ここに来た時点でコンテニューはできねぇぞ。
俺は唾を飲み込み、緊張の糸がピンと張る。そして風道が呼ぶと筋骨隆々の男2人が歩いてきた。その他の男達は風道の周りを囲み護衛をしている。
)組のトップ2はやはり見た目も全然違うな...
蓮)あんたらが俺と戦う組のトップ2か。
安藤)死ぬ覚悟で来いよ、お嬢に手を出したからには手加減はしない。
早乙女)そんなことは俺はどうでもいい、戦わせろよ!強いんだろお前?能力無しでどの程度か見せてみろよ。
)怖ぇ、今すぐにでも帰りたい。絶対やばい。コイツらは素手だけでも俺を軽く捻れば殺せるだろう。
俺の額からは冷や汗が出る。すると風道が合図をすると言い、手を高く上げる。
風道)始めるぞ。安藤、契離、距離をとれ。
俺たちは5メートルほど離れて構える。俺はナイフを持つが、安藤と言う男は素手で相手しようとしている。
蓮)あえ?おい、ナイフは?
安藤)拳で殺す。ナイフなんざぁ使ってられねぇ。
)こいつ、俺のこと舐めてるだろ。ぜってぇ、勝ってやる!
風道は腕を勢いよく下げ、始めの合図を出した。
風道)開始!!
俺は脇を締めてナイフを振るうが安藤はナイフを的確に受け止めて1発、1発カウンターで返す。俺は少し力を入れて腹を刺しにいくと安藤の拳は俺の顔面を捉えた。俺は瞬時に気づき、バックステップで後ろに下がる。
蓮)!!っぶね...
俺がバックステップで地面に着く前に安藤はタックルをくらわした。
安藤)ウラァァァァ!!
蓮)どわぁ!!
俺は体制を崩し尻から地面に着きそのまま仰向けに倒れ込むとすかさず安藤が顔面を殴る。俺は顔をガードするが一撃が重い。
)やべぇ。この体制は一方的だ。足技を出したいけど、地面のガラスが背中に刺さって...いてぇ。腕も痣になるだろうな。イテェ、イテェ。イテェイテェイテェ...
蓮)イテェんだよ!
俺は顔をガードした体制で体を起こすと反射的にナイフを刺した。すると安藤は悶絶した。
安藤)ヌワァァァ!!!ァァァ!ウガァァァァァ!!
)は?ナイフで刺されたらそりゃあ痛いけど、そこまで声あげるほ...ん!?
俺はナイフを刺した部位を見るとそれは安藤の股間だった。見てても痛々しいほど血が出ていて、股間を抑えている。周りの男たちも流石に狼狽えていた。
安藤)テメェ、声で威嚇して気を散らせて股間に刺すとは...いい度胸じゃねぇか...ァァァ。
蓮)悪いがこれも殺し合いだ。どんな形であろうとトドメをささせてもう。
安藤)クソが...ここまで登り詰めた俺がこんな終わり方するなんてよ!!チクショォォォ!!
俺は安藤の首を搔き切ると安藤は涙を流しながら、大量に血を吹かして死んでいった。
風道)一回戦目、契離の勝ちだ。戦い方はどうあれ、ルールに乗っ取って戦っている。弱点をついて戦うのもまた一興だ。
風道がそう言うと早乙女が嘲笑いながら近づいてくる。周りの男達は安藤の死体を運ぼうとするが、早乙女は蹴ら飛ばした。風道と俺は顔を顰める。心配そうに見ていた鈴仙と雪乃も少し驚いた顔をした。
早乙女)情けねぇな〜、股間刺されて悶絶して死ぬたぁ、こんな小っ恥ずかしい奴がいるか?
風道)おい、早乙女。流石にそれは俺も見逃せないぞ。どんな死に方であろうと俺らの代表として戦ってくれた勇敢な組員だ。そんな男の死体を蹴り飛ばすのは違うんじゃないか?
風道は芯の通った声で淡々と言うが少し声が震えている。戦績がトップとは言え、怒っているのだろう。だが、早乙女は持論を展開する。
早乙女)いいか〜、コネ使ってのし上がった使えねぇ組長さんよ〜。人はなぁ、死んだらゴミになんだよ。栄誉の死を遂げようと、安藤みてぇなクソみたい死に方でもゴミになんだよ。それを俺はアメリカの分隊で戦争に出て知ったよ。どんな凄え能力を持ってようが死ねば意味がない。不死身の能力を持つ人間がいねぇように神様が作ってくださったおかげでバランスを保ててるが、いつそれが崩れるかわからねぇ。チート並の能力を持ってるこの契離もいる。いつ死んでもおかしくねぇ。そんな世界で死体なんかあってもゴミなんだよ。
早乙女の主張は確かに筋は通っている。人は死んだらどうにもならない。綺だってそうだ。どうしようもなく目の前で能力を使い果たして灰になって消えた。もう何も失わない。失いたくない。俺は一呼吸を起き早乙女に向き直って告げた。
蓮)確かに死ねばゴミになるだろう。だがな、その人が死んだ後の話じゃない。その人が周りに与えた影響の話しを俺らはしている。死に方はどうあれ、誰かの役に立てたんだ。俺も同じだったから分かる。しかしな、人を敬う気持ちを忘れた人間は人間なんかじゃない。
早乙女)へ〜。若いのに言うねぇ〜。戦争を何にも知らねぇガキが随分と言ってくれたなぁ。殺してやるよ。その恐れることない真剣な顔面が無くなるまでぶっ潰す!!
風道)チィ、はぁ。両者位置につけ、距離は少しでもいいからあけろ。
俺はさっきよりも距離をとる。8メートルくらい下がり様子を見る。
)絶対に勝って、装加を取り戻す。そして、白羽組を俺らの傘下に加えて政府を叩き潰すんだ!!俺ならできる!!
風道)開始!!
俺はナイフを強く握り手汗が滲んだ手を振り翳した。
能力者の蔓延る世界で諸事情により、手を抜きたいチート能力者!? answer9 @WhiteGrint
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