挑戦への準備
俺はげっそりした顔で鈴仙を怒った。
蓮)マジで本当に何とかしてくれ、昨日は雪乃に捕まったあとは部屋に監禁されてずっと俺にひっついて監視される始末だよ!!
鈴仙)そんなこと言われても、蓮の魅力を車の中で語っただけよ。
蓮)それはもう洗脳だろ!!とりあえず助けてくれ、俺も色々としないといけないことがあるのに、あれにかまってたら仕事なんて一ミリもで進まないわ!
鈴仙)あぁもう分かったわよ!自重するように言っておくからあなたは銃の練習でもしてて。
蓮)はぁ、
ちょっとでもマシになるといいんだが、ヤンデレというか束縛というか、一途過ぎる女の人は苦手なんだよな...
俺は疲れ切った表情で屋上に行った。
蓮)人は...いないな。今日の夜は俺は戦わないけど風道とタイマンすることになってるから仮眠も取らないと...
俺は左手にデザートイーグル、右手にナイフを持った状態で屋上に現れた。デザートイーグルの反動には少し慣れ始めて来たが、それでも手が痛んでしまうのと、実弾を使うのは勿体無いため空砲を装填している。俺はシャドーボクシングならぬシャドーバトルをした。
シュッ!シュッ! パァン!!
今の動きはナイフで牽制しつつ相手が躱した場所にデザートイーグルで追い討ちかけるようなイメージの動きをした。他にも相手にカウンターを入れる動きや銃のリロードと装填の訓練をした。気づくと時間は正午を過ぎており
蓮)ふぅ...熱中しすぎたかな?そろそろ仮眠取らないと...
俺は屋上を出て部屋に戻った。俺は部屋に入ると昨日の雪乃のこともありソファで倒れ込むようにうつ伏せになった。
鈴仙)帰ってきたなら言ってくれれば良かったのに...
蓮)うぅん...寝みぃ...1時間だけ寝かせて~
鈴仙)はいはいって...雪乃!ダメよ。今は蓮を寝かせてあげて...
その声を最後に俺の意識は虚空へと落ちていった。起きるとそこはソファではなくベッドだった。俺はゆっくりと体を起こすと左半身に抵抗があり、視線を左半身に向けるとそこには体にしがみつくように手を置く雪乃がいた。
蓮)鈴仙が言ってくれたみたいで改善してくれて助かるよ。これが持続してくれると有難いけどな。
俺はそう言いつつも雪乃の頭を撫でる。すると、雪乃はまるで起きているかのごとく口角が上がった。
蓮)こう見ると可愛いんだけどな...
俺は服を着替えて部屋出た。外は真っ暗で時間は7時だった。
蓮)1時間のつもりがまさか、7時間も仮眠しちまうとはな。
すると、声を聞いた鈴仙がキッチンからやってきた。
鈴仙)あっ!起きたのね。声が聞こえてきたからもしかしたらと思って来てみたらもう準備万端じゃない。
蓮)あぁ、まぁな。あっそういえば改善してくれたようで雪乃はだいぶマシになったよ。
鈴仙)ふふっ。
俺がそういうと鈴仙は悪戯そうに笑い気になって深堀してみることにした。
蓮)なんで笑ってんだ、まさか俺が寝てる間に雪乃がなんかしたのか!?
鈴仙)違うわよ。雪乃はただ、ソファで寝てたあなたを起こさないように慎重に運んでくれたのよ。しかも台車に乗せてね、数メートルの距離を5分以上かけてゆっくり運んでくれてたのよw
蓮)そうだったのか、またお礼言っておこ。
鈴仙)夕ご飯できてるから食べちゃって。
蓮)あぁ。
俺は軽く返事をして席に着いた。不意に仮眠をとっていた時の夢を思い出した。それは鈴仙が殴り殺される夢だった。胸糞悪く、何よりも体を動かそうとしても動かず、更にはその場で自害してしまった。俺は何も出来ない自分を責めるような気持ちでいた。
鈴仙)どうしたの?変な夢でも見た?
いや、こんなこと本人の前で言えるわけない。それこそ、鈴仙が戦う前にそんな縁起の悪い...そうだ...俺が戦えばいいだけだ。
蓮)そうじゃなくて、鈴仙に戦ってもらおうと思ったけど俺が戦う事にした。
鈴仙)え?大丈夫なの?白羽組って調べたら結構有名みたいよ。そんなところNo.2、No.1と戦ったら死ぬかもしれないのよ!
蓮)大丈夫だよ。俺もちょっとは戦えるし、能力無しのタイマンだから勝てる確率はこっちの方が高いだろ?
鈴仙)でも能力あった方が夜染魔我月とか使えるじゃない!あなただって再生の能力が...
蓮)この前の政府の襲撃の時に能力が使えなくなるシステムってのを使われて、それから能力が思うように効かないんだ。しかも、風道ってやつはその能力が使えなくなるシステムを政府から提供してもらってるらしい。
鈴仙)それって...能力の使用が絶対にできなるってことでしょ!!だったら尚更...
蓮)鈴仙。俺を信じろ。
鈴仙)・・・いいわ。あなたは1度言ったら聞かないから認めるけど...約束して欲しい。絶対に死なないでね!!
蓮)あぁ、もちろんだ。やってみせるよ。
俺は鈴仙が作ってくれた料理を味わいながら食べた。料理の中にビシなんとかっていうスープを作ってくれた。名前が難しくて俺は覚えられなかったが...鈴仙曰く仕事で行った際に入ったレストランで知ったそうな。
蓮)このスープ美味しいね!このビシ何とかってやつ。
鈴仙)ビシソワーズよ。3回目よ?
蓮)んなこと言われても覚えられないものは覚えられないっての。
鈴仙)はいはい、わかったわよ。とりあえず食べちゃって!
蓮)あいよー。
俺はゆっくり味わいたかったが、鈴仙に銃のチェックをしろと言われてしまったため少し早めに食べた。
蓮)ご馳走様でした。いやぁ、美味しかった。
鈴仙)ゆっくりするならタスクが終わってからにして...デザートイーグルの排莢チェックに動作確認。さらに弾倉の数と弾の数を確認すること。いい?
鈴仙は俺の顔を見るが、俺はいきなりその数を事を言われ、頭がこんがらがっていた。確かにFPSやTPSなどのゲームはやっていたが、そんな動作確認などは現実でしたことがないため何をどうすれば良いのか分からず戸惑っていた。
鈴仙)...その様子だと無理そうね。まぁ、いいわ。今回は私がやるわ...蓮は洗い物でもしておいて。それが終わったら銃とかナイフの練習でもしていて。
俺は生返事をして装備を持ち屋上に行った。季節は夏頃とはいえ夜だと空気が冷たい。さらに、普段の東京なら電気がついていてどこもかしくも明るいが、ここも含めて避難区域が広がり、周辺地域の建物に明かりがほとんど灯っていない。
蓮)ちょっと散歩してみようかな。
俺は屋上から飛び降りた。
蓮)紐なしバンジー楽しいなぁぁ。一回やってみたかったんだよね!
俺は屋上から飛び降りると強い風を受けたながらほぼ垂直に落下して行った。数秒ほどで地面との距離はとても近くなる。
蓮)そろそろか。
俺は右手から黒百合を出した。いくら神の体といえど人間の魂程度では神の身体能力を発揮できない。しかし、今は夜だ。俺の中でデメリットが大きい能力は自由な能力に変わっている。
蓮)夜染魔我月(ヤソマガツキ)
月の光は黒い光へと変わり、俺は何もなかった黒い虚空から鎌を出した。
蓮)結構久々だな、空亡(クウボウ)。久々で悪いが能力借りるぞ。
俺は自身を闇の姿に変えて移動した。黒い影のような物の後を赤い血の軌跡が追いかける。速度は音速は超えていないが100キロは超えているだろう。俺は夜の暗い東京を満喫してそのまま家に帰った。
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