綺羅星(きらぼし)から君へ

女の子が来てから3日の月日が経ったが未だに一言も発しなかった。相当怖い思いをしたのだろうか、ずっと何かに怯えている。夜は俺と一緒に寝るのだが悪夢でうなされているのか、寝ている時は唸っていたり冷や汗をかいていることしかなかった。俺はそんな女の子を心配していた。

蓮)大丈夫!?


と俺はうなされている女の子を揺さぶって起こしてと言うのが日常の一部になりかけていた。俺もこれは見ていられないな。流石にこれは聞こう。


蓮)いきなりでごめん。話したくなければ話さなくて構わないんだけど、君の過去に何があったのか教えて貰えるかな?


女の子は下を向いていたが決心したようにこう言った。


女の子)...お兄ちゃんのお母さんとお父さんが怖かったから話せなかったんだけどお兄ちゃんに話すことならできる。


そう言うと女の子はゆっくり話し始めた。


女の子)私は本当の名前はイノセント・アザトースと言う名前なんです。私は元々ロシアに住んでいたんです。いつものように学校に通って家に帰ったある日、家の扉が開いていて違和感を覚えながらも家に入ったら私の両親が殺されていたの。声を上げる間も無く口を塞がれて連れ去られた。そこで私は暴力や罵声を浴びせられたりと、毎日を過ごすなら死んだほうがマシなくらいな日々だったの。でもそんな毎日を過ごして半年ぐらいした頃にいきなり行くぞと言われて車に乗せられて船に乗って日本に来たの。そして、ここの近くのガソリンスタンドで私を攫った奴らが車を降りたところを見計らって降りて逃げ出したんだけどあそこの路地まで来たところで今まで殴られたり食事もろくに取れてなかったのが仇になって私は力尽きたところをあなたに助けてもらったの。


蓮)そっか大変だったんだね...って、日本語喋れるの!?


彼女が普通に喋っていて気にならなかったが日本語で話していたことに驚いた。


イノセント)えぇ、両親は日本人とロシア人のハーフだから一応喋れるの。私のお父さんとお母さんは色々な財団に寄付していたくらい"立派な人"だったの!!


蓮)へぇ〜。おっと、そんなことより話してくれてありがとう。イノセントは俺が守るよ!!


イノセント)ありがとう。お兄ちゃん!!


蓮)あっ、そうだ一緒に星を見ないか?重い話しばかりだと嫌だし、星でも見て気持ちをスッキリさせようか。


イノセント)うん!!


俺たちは屋根裏部屋から外に出て屋根の上で星を眺めた。イノセントは綺麗と呟いていたが、俺は星を見て心を空っぽにしようとしても名前のことで引っかかっていた。契離 イノセントだと馬鹿にされるかもしれないし、名前が特殊だからまた連れ去れるかもしれない。そんな思いは絶対にさせたくない!俺が守るって決めたんだ!!


蓮)なぁ、イノセント。君の名前、変えないか?こんなことを言うのは悪いけどまた狙われる可能性が高いんだ。どうしてもと言うならそのままでもいいんだが...


イノセント)私の名前を変える!?2人が付けてくれた大切な名前だから形見みたいなものなんだけど...どうしよう。


蓮)そうだ!納得してくれるかは分からないけど、さっきイノセントが話してくれた時にイノセントのお父さんとお母さんが寄付してる話しをしていた立派な人って言ってたじゃん。それと星が目に入って思い出したんだけど立派な人が連れ並んでいるって言う意味で綺羅星(きらぼし)って言う言葉があるんだけど、そこから一文字取って綺って名前はどうかな?


イノセント)素敵!!ちょっと遠いけど、私の両親からの繋がりを見つけて名付けてくれただけでも嬉しい!!この名前を変えるのは嫌だったけどお兄ちゃんの付けてくれた名前も好きになっちゃった!!名付けてくれてありがとう!!これから私は綺!契離 綺ね!!


蓮)気に入ってくれて良かったよイノセント!改めて、これからよろしく契離 綺!!

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