明壁 信

「はい、幽霊の正体が分かりました。その目的も」


 自信に満ちた言葉が地下室を支配した。

 思えば初めて見た時、その眼差しに不安を覚えた。普通の大学生にしか見えないのに、全てを見透かすようなあの目に畏怖いふした。

 私の心の中でアラームが激しく鳴った。この男は危険だと。だけどバレるはずは無い。私の計画は完璧だ。実際誰もが気づかなかったんだ。ハッタリに決まっている。

 その思いとは裏腹に私の心臓は破裂しそうなほど高鳴る。

 ゆっくりこっちに近づいてくる。

 ダメ、来ないで。私はこの屋敷を守らないといけないの。お願い!


 そのお兄ちゃんは腰を屈めて、優しく言った。


「幽霊は君だね、香澄ちゃん」


 目の前が真っ暗になった。私は大声で泣き叫んだ。

「重貞ー、鼎ー、ごめーん守れなかった」

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