2話 元気で優しい性格
「ご飯でもどうですか」
夏木さんを誘ってみたはいいけど。
「行けません。他をあたってください」
断られてしまった。
最近出来たご飯屋さんがあって、とても美味しいと聞いていたから行ってみたいと思ってたのに残念だ。
「じゃあ代わりに着いてきてくれ」
「なんで僕が!?」
「いいじゃん。俺こう見えて小心者でさ、お店に一人で入るの苦手なんだって」
ちょうど近くに居たクラスメイトにそう声を掛けてみた。半ば強引な誘いだったけど、彼は快く了承してくれた。
「って、二人で行くの?」
「友達連れてきたかったらいいよ。こっちからは誰も呼ばないから、好きにしてもらって」
実はその人とは二人で出掛けるのが初めてのことで、教室でも特別話をする相手ではなかった。ただ、いつか話をしてみたいと思ってたし、時期的にちょうどよかったのだ。
「和食のお店だったんだ」
「そうそう。確か洋食より和食が好きとか言ってただろ。だから誘うのにちょうどいいと思ってな」
お店自体はそれほど和を感じなくて、言ってしまえば洋食レストランのように内装がとても綺麗だった。女性客が多い理由も頷ける。
「というか、誰も呼ばなかったんだな」
「うん。本当は友達連れてこようと思ったんだけど、春斗くんがせっかく誘ってくれたから悪いと思っちゃって」
よくもまあ受け入れてくれたもんだ。自分で言うのもなんだけど、かなりうるさいタイプだし、彼みたいな控え目そうな男はそういうタイプに苦手意識があると思ってた。
「気分転換したかったんだよね」
「ああ、部活の大会で負けたからか」
「うん。僕のミスで負けちゃってさ。まだ一年だし気にするなって言われたけどやっぱり落ち込んじゃって」
気持ちはよくわかる。俺もバレーの試合で自分が何度も拾えなかったせいで負けた試合があった。初心者だからとか一年生だからとか関係ない。落ち込むし、悔しいものは悔しい。
「美味いもんでも食べて元気出そうぜ。そんで一緒にまた頑張ろう!」
「春斗くんとは部活違くない?」
「いいんだよ。俺もスタメン目指して頑張ってる。同士に乾杯!」
彼はよく笑っていた。
「なんだそれ」
ちょうど頼んでいたものが運ばれてきたので、俺たちは一旦話すのをやめて料理に集中することにした。
彼は焼き鮭の定食を、俺は天丼と蕎麦をいただいた。
「美味そうに食べるなあ」
「あーごめんね。ついおいしくて笑っちゃって」
「俺のことなんか忘れて存分に楽しんでくれ」
幸せそうにご飯を食べている。楽しんでくれたようでなによりだった。
「そういえば、春斗くんって夏木さんのこと好きなの?」
「は? 悪いか?」
たまに、そんな話を振ってくれるようになった気がする。
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