7
いよいよ今日はクリスマスイブ。
もう、間もなく出発です。
「さあ、二人とも、準備はできたかい?」
「ええ、ばっちりよ」
「おれも」
サンタさんの呼びかけに、二人はうなずきます。
「じゃあ、行きましょう」
ソリに乗りこもうとするミア。
「ミア」
ヒロトが声をかけます。
「⋯⋯なに?」
「えっと⋯⋯こないだは、勝手にクッキー食べてごめん。俺、クッキー食べることで頭がいっぱいだった」
ヒロトは謝ると、小さな袋を差し出します。
「これは?」
「お母さんと焼いたクッキー」
「開けていい?」
「うん」
ミアは袋を開けてクッキーを一枚出し、口に入れました。
「美味しい。⋯⋯ヒロト、私もごめんなさい。クッキー、いっしょに食べましょう」
「うん。俺も、ほんとにごめん」
「ホッホッホ、仲直りできたようじゃな。では、出発じゃ! 二人とも、ソリに乗っておくれ」
「うん!」
「ええ!」
二人がソリに乗り込みます。
最後にサンタさんが乗り、ソリの綱を引きました。
ソリはゆっくりと地面から浮き、空を飛びはじめました。いよいよ出発です。
その夜、ヒロトとミアは世界中を回りました。
雪が降っているところも、全く降っていなくて暑いところもありました。
最後のプレゼントを配り終わったのは、もう朝日が昇る頃でした。二人の仕事もこれでおしまい。お別れの時がきました。
「これで、お別れね」
「うん、すげー楽しかった。ミア、元気でね」
「ええ。ヒロトもね」
「では、今日まで頑張ってくれた二人に、プレゼントじゃ」
サンタさんは、二人に包みを手渡しました。
開けてみると、ヒロトのはゲームソフト、ミアのは人形が入っていました。どちらも二人が欲しかったものです。
「欲しかったやつだ! ありがとう、サンタさん!」
「まさか、これをもらえるなんて! サンタさん、ありがとう!」
二人は興奮してお礼を言います。
「あれ? サンタさん、もう一つのプレゼントは?」
ヒロトが首をかしげて、尋ねます。
「ホッホッホ、それはのう。良い子の心じゃ」
「良い子の心?」
「そうじゃ。二人は今日まで、本当に頑張ってくれた。二人が本当に悪い子なら、わしの手伝いなどしないはずじゃ。二人とも、来年も世界一悪い子に選ばれないよう、気をつけるのじゃよ。⋯⋯おっと、もう夜が明けてしまう。さあ、家に帰ろう」
サンタさんはソリを出発させました。
夜明け前の空に、鈴の音が響いていました。
クリスマスの約束 卯月みお @mio2041
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
いのち短し 感ぜよ乙女/卯月みお
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます