5

 ミアとも仲良くなり、もうすぐクリスマスという頃のことでした。

 その日、ヒロトとミアとサンタさんは、三人でおやつを食べていました。おもちゃ作りの合間の、休憩です。

 三人がおやつを食べ終わると、クッキーが一枚余ってしまいました。

「へっへー、いただき!」

 ヒロトは迷わず手を伸ばし、クッキーを口へ放り込みました。

「あっ⋯⋯」

 ミアも手を伸ばしていましたが、間に合いませんでした。

「あー、うまかった!」

「⋯⋯ひどい」

 ヒロトは満足そうですが、ミアは今にも泣き出しそうです。

「ミア、そんなにクッキー欲しかったの?」

 ヒロトはクッキーを食べながら尋ねます。

「違う! もういい、ヒロトなんて嫌い!」

「は!? なんだよ、その言い方! おれだって、ミアなんか嫌いだ!」

 ミアが叫ぶと、その目からは涙が溢れ出しました。

「二人とも」

 サンタさんの厳しい声がしました。

「⋯⋯何」

 ヒロトはぶすくれた調子で、答えます。

「二人とも、クリスマスイブまでに、仲直りするのじゃ。できなければ、家には帰さないよ」

「あっそ」

 ヒロトは吐き捨てます。そもそもこの時の彼には、他人の言葉を聞く余裕などありませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る