3
サンタさんは、窓を開けて外に出ました。
「外にソリを停めてあるんだ。乗っておくれ」
ヒロトが窓の外を見ると、そこには何頭ものトナカイが繋がれたソリがありました。
「ほんとにトナカイがソリを引くんだ!」
「そうじゃよ。さあ、出発じゃ!」
サンタさんが綱を引くと、ソリは少しずつ浮き上がりました。
「わぁー、ほんとに飛んでる!」
ソリはどんどん高く飛び、街の明かりがどんどん小さくなっていきます。
いつの間にか、下には見慣れない景色が広がっていました。日本を離れたのです。
「さあ、着いたよ。ここまで寒かっただろう。温かいココアを出してあげよう」
そう言って、サンタさんは家のドアを開けました。
「わぁ⋯⋯!」
家の中には、とても大きなクリスマスツリーがあり、とても綺麗に飾りつけられていました。部屋の奥には暖炉があり、パチパチと音を立てながら燃えていました。
「ちょっと待っていておくれ、今ココアを淹れるからね」
「うん」
「ずるいわ、私にもちょうだい!」
サンタさんでもヒロトでもない声がして、ヒロトは振り返りました。
そこには、長い金髪に青い目をした女の子がいました。
「だ、誰?」
ヒロトは恐る恐る尋ねます。
「私はミア。あなたは?」
「ヒ、ヒロト」
「ヒロトも、サンタさんのお手伝いで来たの?」
「うん、おれ、『世界一悪い男の子』に選ばれちゃったみたい」
「そうなの? 私も『世界一悪い女の子』に選ばれたの。ここには『プレゼントを二つあげる』っていうから、来たのよ」
「そうなんだ、おれと一緒だね。ミアは、何をしたの?」
「夜更かしして遊んでたり、学校に遅刻したりかな」
「そうなんだ⋯⋯。ねぇ、おれたち、ここでおもちゃを作るんだよね? どういう仕事なんだろう?」
「それは、私にも分からないわ」
「大丈夫じゃ、難しい仕事は何もない。君たちには、わしのサポートをしてもらうよ」
二人が振り返ると、サンタさんがマグカップの三つ載ったお盆を持って立っていました。マグカップからは、ココアの香りと湯気が立ち上っていました。
「あ、サンタさん。サポートって、何するの?」
「簡単に言うと、部屋の掃除やおもちゃの部品の補充じゃ。慣れてきたら、簡単なおもちゃ作りを任せようとも思っておる」
「でも、学校はどうするの? ずっと家にいないと、パパやママが心配するわ」
ミアが不安そうに尋ねました。
「大丈夫、二人が休みの日の夜に迎えに来るよ」
「それなら、大丈夫ね」
ミアは胸をなでおろしました。
「では、さっそく仕事にかかろう。今年も、世界中の子供たちから手紙が届いているからね」
サンタさんは、部屋の隅に置かれていた大きな箱を持ってきました。
箱を開けると、そこには手紙がぎっしり詰まっていました。封筒の宛名は、アルファベットだけでなく、様々な文字のものがありました。
「これを全て開けて、みんなの欲しいものを確認するよ」
「え~っ、こんなに!?」
ヒロトは思わず叫びました。
「ヒロト、プレゼント二つ欲しいんでしょ?」
「そうだけど、こんなにあるなんて⋯⋯」
「ホッホッホ、さあ、時間がもったいない。どんどん開けていこう」
三人は何時間もたって、ようやく全ての手紙を開け終えました。
「今日はひとまず、これで終わりじゃ。二人を家まで送るから、ソリに乗っておくれ」
ソリは走るように空を飛び、あっという間に二人は家に帰り着きました。
ヒロトはその日、なかなか寝付けませんでした。
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