3. フレド神父からの手紙
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ペテロ修道士
お手紙をありがとうございました。
トマゾ修道士の最期については、私も胸を痛めるばかりです。彼は崇高な使命感と責任感を持った素晴らしい修道士でした。彼の魂が主の元へ導かれんことを。
さて、お問い合わせいただいた件ですが。生憎ですが、私では貴方のお力になることはできかねるようです。なぜならば、かの精神病棟に巣食うものは、聖水や十字架で追い払えるものではないからです(少なくとも、私の見立てでは)。
あの精神病棟には何かがいる。
それは間違いありません。
ただし、それは私が普段相手にしている悪魔とは、様相が違います。
なんと申せば良いのでしょうか……不肖者の私では、「気配」という言葉以上の言葉では言い表せられません。私たちエクソシストは、対象が悪魔であれば、それが悪魔かどうか見ただけでわかります。しかし、聖バシリオで感じた存在には、的確に言い表す言葉が見つからないのです。
なぜ私がトマゾ修道士に十字架を握らせたのかお尋ねでしたね。それはまさしく、彼を取り巻く姿なき存在の正体を見定めるためでした。私は彼に何か――邪悪なもの。そして同時に、悪とは本質の異なるもの――を感じました。あんなものは、私は未だかつて出会ったことがありません。
主の導きの理から外れ、人々を惑わし貶める者。我々はそれを悪魔と呼びます。その力は強大で、私たち訓練されたエクソシストであっても、偉大なる天使や聖人たちの名を借りなければ、地獄に送り返すことすらできません。完全な死を与えることなど、まず不可能です。
それが姿なき存在であるのなら、なおさら退治は難しくなります。
ペテロ修道士、申し訳ありませんが、この件で私に手伝えることは多くないようです。
また何か私でお力になれることがあれば、どうぞお声掛けください。貴方からの手紙を心待ちにしております。
親愛を込めて 神父フレド
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フレド神父からの手紙を読み、ペテロは心底がっかりした。フレド神父は聖バシリオ精神病棟に巣食うものについて、存在の有無以上の情報を得ていなかった。
とはいえ、悪魔ではないとわかっただけでも前進だ。厳密に言えば彼らの教義から外れてしまうけれど、この世界には悪霊や怪物、正体不明の悪しきものたちが数えきれないほど存在していることも確かである。タダイとトマゾを死に至らしめたものは、そうした無名の悪意のひとつなのだろう。
フレド神父の手紙が空振りに終わったことで、ペテロはひとつ決意を固めた。トマゾ修道士の死について、もうひとり意見を求められる人物がいる。できれば彼女に話を聞くのは避けたかったが……背に腹は代えられない。
デルフィーナ・インセーニョ。
予知能力のある善意の魔女に、会いに行く。
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